序章:トリップしたその先は
夢主
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「20区は大規模な警戒網が張られ、現在は立ち入り禁止区域となって……」
私がそのニュースを見たのは、駅の待合室だった
『うそ、これじゃあ帰れないじゃない。“あんていく”に』
私の仕事場であり、生活の場でもある喫茶店。“あんていく”は20区にあった
20区に何があったんだろう
みんな大丈夫かな
テレビから目が離せなかった
続くキャスターの言葉が、耳をすり抜ける
「_対象は20区にある喫茶店で“喰種”の巣窟である可能性が__」
思えば今日は、みんなの様子が少しおかしかった___
1日じゃ買いきれないほどの買い物リストを渡してきたカヤさん
買い物ついでにゆっくりしておいで、と温泉の宿泊券をくれた店長の芳村さん
買い物に時間がかかるから早く出た方がいいよ、と急かしてきた古間さん
なんだか、嫌な予感がする……
対象は、20区の喫茶店___
そうでないといい
きっと思い違いであってほしい
そう祈りながら、私は待合室を飛び出した
「君がサクラちゃんだね。喰種と共に過ごしていた人間、きっといい実験体になる」
そう言ってきたのは誰だったか
私の記憶はプッツリとそこで途絶えている
次に目が覚めた時、私は病院の一室にいた
自分がどうしてここにいるのか
20区に何があったのか
何もわからないのがこわくて
私はその場所から逃げ出した
フラフラとした足取りで辿り着いたのは、楽しい思い出のあるあの場所だった
やっと辿り着いたその場所
そこには、瓦礫の山が広がっていた
馴染みのある“あんていく”と書かれた看板が瓦礫の山の中に埋もれているのが見えた
え……なんで、ないの?
どうして___
『うわああああぁぁぁあん』
あたたかい記憶がよみがえってくる
「“あんていく”ってどういう意味なの?」
そう聞くトーカちゃんに、素敵な意味よ_と、こたえるカヤさん
あの、あたたかい場所が
今は、もうないのだ___
プツンと、私の中で何かが壊れる音がした
あたたかい記憶と共に流れ込んでくる、もう1つの記憶……
「間違っているのは僕じゃない...。この世界だ!!」
よく聞いた言葉だ
よく見た言葉でもある
どうして今なんだろう
どうして今、思い出したんだろう
なくなってからじゃ、遅いのに……
私は知っていた___
読んでいたし、見てもいた
私には、救えたはずなんだ___
だって私は……
漫画やアニメの知識を持ったまま
トリップしてきたのだから___
ものすごく、まずいイチゴを口にした
例えようもないくらい、まずくて
飲み込んだ瞬間に涙が溢れでた
そのイチゴはイチゴとは思えないくらい、不気味な色と模様をしていた
そのイチゴ……あれは、“悪魔の実”だったのだろうか
私は時空や次元を超えて、この世界……“東京喰種”の世界にやって来たのだ
ならば……
こう考えることもできるのではないだろうか___
“ONEPIECE”の世界から、“悪魔の実”が
時空や次元を超えて、私の世界にやって来たのだと___
そして
何の因果か……その実を食べた私がこの世界にやって来たのだと___
「行くところがないのなら、ウチに来るかい?」
記憶がなく行くあてもない私を芳村さんが拾ってくれた
漫画の中の登場人物なんかじゃない
芳村さんは……
“あんていく”は……
私の“家族”なんだ___
思い出したけど、もう遅い……
サクラは暗やみに向かって歩き出した
ただひたすら……
その先には闇が広がっていた
─END─
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