1章
駅からバスに乗り換え、山をのぼること数十分。校舎らしきものが見えてきた。学園前のバス停で降りる。そこから数分歩くと門が見える。
蓬莱高校。そう書かれていた。
振り返ると谷に広がる町が夕陽でオレンジに染まっている。もうすぐ陽が沈む。
向き直り一呼吸。今日からここで暮らす。この町の空気に身を浸し、踏み出した。
俺は周防 明日佳 。
訳あってここに転校することになった。
登校日は明日だが、寮へ入る手続きやら何かいろいろあるらしく前日入りすることになっていた。
門に辿り着く。自分の2倍くらいありそうな大きな門。西洋っぽい細かい装飾がある。
両側は桜の木。最近まで淡い色の花びらが舞っていただろうが今はもうない。そのかわり、瑞々しい青く柔らかな葉が風に揺られていた。
人気はない。下校時刻はとっくにすぎているのだから当たり前だ。
約束の時間はとっくに過ぎていて、陽も沈んでいるけど、前の仕事が長引いてしまったのだから仕方がない。
「理事長まだいるかな……」
鞄をもう一度提げる。歩きだそうとしたとき、目の前を何かが通った。黒い、何か。
「これが、例の?」
右手を腿のホルダーに伸ばす。そこに納められているのは杖。取り出して本来の姿に戻す。すると自分よりも大きな高さになる。それをくるくると器用に回し言葉を唱える。
正面から3、10時から2、1時から4。
一閃。
その黒い何かが消滅する。
杖を戻しいつもの場所に仕舞う。
ふと視界に人影が入る。一般人に見られた? 心臓が跳ねる。だがそれは、数百メートルの距離にいるそれは、夕陽に照らされたこの世の人とは思えぬ美しさで、銀色、地面に着きそうなくらい髪の長い美しい人がいた。
蓬莱高校。そう書かれていた。
振り返ると谷に広がる町が夕陽でオレンジに染まっている。もうすぐ陽が沈む。
向き直り一呼吸。今日からここで暮らす。この町の空気に身を浸し、踏み出した。
俺は
訳あってここに転校することになった。
登校日は明日だが、寮へ入る手続きやら何かいろいろあるらしく前日入りすることになっていた。
門に辿り着く。自分の2倍くらいありそうな大きな門。西洋っぽい細かい装飾がある。
両側は桜の木。最近まで淡い色の花びらが舞っていただろうが今はもうない。そのかわり、瑞々しい青く柔らかな葉が風に揺られていた。
人気はない。下校時刻はとっくにすぎているのだから当たり前だ。
約束の時間はとっくに過ぎていて、陽も沈んでいるけど、前の仕事が長引いてしまったのだから仕方がない。
「理事長まだいるかな……」
鞄をもう一度提げる。歩きだそうとしたとき、目の前を何かが通った。黒い、何か。
「これが、例の?」
右手を腿のホルダーに伸ばす。そこに納められているのは杖。取り出して本来の姿に戻す。すると自分よりも大きな高さになる。それをくるくると器用に回し言葉を唱える。
正面から3、10時から2、1時から4。
一閃。
その黒い何かが消滅する。
杖を戻しいつもの場所に仕舞う。
ふと視界に人影が入る。一般人に見られた? 心臓が跳ねる。だがそれは、数百メートルの距離にいるそれは、夕陽に照らされたこの世の人とは思えぬ美しさで、銀色、地面に着きそうなくらい髪の長い美しい人がいた。
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