三章 親友との出会い
クローゼットには「いくつか」どころではない衣装が詰まっていた。こっちが似合いそう、これはどうかと、私はすっかり着せ替え人形にされてしまっていた。
次々と取り出される力作揃いの衣装に、目を奪われた。自力でこれだけの数を作り上げるなんて、どれほどの情熱だろうかと、圧倒された。
その後、髪型や化粧にも作業の手は伸びた。熱中しているミィさんは活き活きしていて、止められないまま、私は少し疲れてきていた。
化粧のときには、髪に隠していた顔の傷痕 も、目に入ったに違いなかった。
鏡越しに見えた、作業の手を止めた数瞬の戸惑い。
何か訊かれるかと思ったけれど、何も言わずに化粧でそっと覆ってくれた。その気遣いがありがたかった。綺麗に傷痕を隠せることに、驚いた。
すぐ横で見ながら、リカーナさんも感心していた。
「髪も化粧もこんなにバッチリやれるなんて、本当に憧れてたのね」
「……本当に、可愛くなりたかったの。どんなにからかわれて傷ついても、バカみたいに憧れを手放せなかった……」
私の目的を挟むなら今だろう。それまでされるがまま流されていた私は、しばらくぶりに言葉を発した。
「ミィさんは可愛いですよ」
「えっ?」
信じられないというような反応だった。よほど自信を失っていたのだろう。彼女が混乱を制して「そんなことない」なんて言い出す前に畳み掛けてしまおうと、そのまま勢いで話し続けた。
「そんなに可愛い髪型ができて、お化粧も上手で、素敵な服もたくさん作れるじゃないですか」
「でも……でも、私……こんな……」
俯いて、自分の身体のあちこちに視線を走らせる彼女の様子は、痛々しかった。一人の女性の尊厳をここまで傷つけた村の若者たちに、少なからぬ憤りを覚えた。それを決してそのまま表には出さないよう、努めて穏やかに私は続けた。
「髪も肌も、お手入れを欠かしていませんでしたよね? とても綺麗です」
兄さんのためというだけではなく、本心だった。体型のせいでからかわれ自信を無くしていた彼女だけれど、外に出ないのにきちんとオシャレに手間暇をかけている。毎日外に出るのに雑な身なりでいた私とは、大違いの美意識だ。
「きっと皆さん、会えなくなって後悔しています。ユウ兄さんからも、男子は皆あなたに謝りたがっていると聞きました」
「……そうかしら……本当に……。大人に謝れって言われたから、適当に謝って済まそうとしてたんじゃないの? 外に出たら、どうせまた意地悪に笑われるんじゃないの?」
そういうこともあるかもしれない。それでも私は、少なくともユウ兄さん自身の後悔は、本物だろうと感じている。
今度こそ、彼はミィさんを守ってくれるだろうか。
「もし次があれば、私がユウ兄さんに怒ります。他の方にも。……絶対に、あなたの味方でいます」
ユウ兄さんはともかく、他の人とは直接話したわけでもない。又聞きの謝意なんてあってないようなものかもしれない。約束できる内容は、ここまでだろう。
絶対に謝らせるとか、絶対に何も言わせないなんて確約できない。それはミィさんの心を動かすには、弱すぎる決意だったかもしれない。
それでも、リカーナさんの助けが乗ることで説得力は生まれたらしい。
「外で嫌な目に遭わないとは限らないけど、シェリルがここまで言ってくれたってのも事実よ、ミィさん」
「……そうね……」
ミィさんはまだ迷っているようだったけれど、何とか背中を押せたみたいだ。
「……シェリルが来た時だけ、店番に出るくらいなら……」
「え? 私は?」
「あっ、も、もちろん! リカーナも!」
「やったー!」
思わず安堵の溜息が漏れた。一日でここまで進展できるとは思っていなかった。ほぼリカーナさんの助けのおかげだけれど、私も頑張った。
ユウ兄さんには、帰ったら改めて男子たちへの根回しをお願いしておこう。達成感が心を包み、安心したら少し眠くなってきた。
次々と取り出される力作揃いの衣装に、目を奪われた。自力でこれだけの数を作り上げるなんて、どれほどの情熱だろうかと、圧倒された。
その後、髪型や化粧にも作業の手は伸びた。熱中しているミィさんは活き活きしていて、止められないまま、私は少し疲れてきていた。
化粧のときには、髪に隠していた顔の
鏡越しに見えた、作業の手を止めた数瞬の戸惑い。
何か訊かれるかと思ったけれど、何も言わずに化粧でそっと覆ってくれた。その気遣いがありがたかった。綺麗に傷痕を隠せることに、驚いた。
すぐ横で見ながら、リカーナさんも感心していた。
「髪も化粧もこんなにバッチリやれるなんて、本当に憧れてたのね」
「……本当に、可愛くなりたかったの。どんなにからかわれて傷ついても、バカみたいに憧れを手放せなかった……」
私の目的を挟むなら今だろう。それまでされるがまま流されていた私は、しばらくぶりに言葉を発した。
「ミィさんは可愛いですよ」
「えっ?」
信じられないというような反応だった。よほど自信を失っていたのだろう。彼女が混乱を制して「そんなことない」なんて言い出す前に畳み掛けてしまおうと、そのまま勢いで話し続けた。
「そんなに可愛い髪型ができて、お化粧も上手で、素敵な服もたくさん作れるじゃないですか」
「でも……でも、私……こんな……」
俯いて、自分の身体のあちこちに視線を走らせる彼女の様子は、痛々しかった。一人の女性の尊厳をここまで傷つけた村の若者たちに、少なからぬ憤りを覚えた。それを決してそのまま表には出さないよう、努めて穏やかに私は続けた。
「髪も肌も、お手入れを欠かしていませんでしたよね? とても綺麗です」
兄さんのためというだけではなく、本心だった。体型のせいでからかわれ自信を無くしていた彼女だけれど、外に出ないのにきちんとオシャレに手間暇をかけている。毎日外に出るのに雑な身なりでいた私とは、大違いの美意識だ。
「きっと皆さん、会えなくなって後悔しています。ユウ兄さんからも、男子は皆あなたに謝りたがっていると聞きました」
「……そうかしら……本当に……。大人に謝れって言われたから、適当に謝って済まそうとしてたんじゃないの? 外に出たら、どうせまた意地悪に笑われるんじゃないの?」
そういうこともあるかもしれない。それでも私は、少なくともユウ兄さん自身の後悔は、本物だろうと感じている。
今度こそ、彼はミィさんを守ってくれるだろうか。
「もし次があれば、私がユウ兄さんに怒ります。他の方にも。……絶対に、あなたの味方でいます」
ユウ兄さんはともかく、他の人とは直接話したわけでもない。又聞きの謝意なんてあってないようなものかもしれない。約束できる内容は、ここまでだろう。
絶対に謝らせるとか、絶対に何も言わせないなんて確約できない。それはミィさんの心を動かすには、弱すぎる決意だったかもしれない。
それでも、リカーナさんの助けが乗ることで説得力は生まれたらしい。
「外で嫌な目に遭わないとは限らないけど、シェリルがここまで言ってくれたってのも事実よ、ミィさん」
「……そうね……」
ミィさんはまだ迷っているようだったけれど、何とか背中を押せたみたいだ。
「……シェリルが来た時だけ、店番に出るくらいなら……」
「え? 私は?」
「あっ、も、もちろん! リカーナも!」
「やったー!」
思わず安堵の溜息が漏れた。一日でここまで進展できるとは思っていなかった。ほぼリカーナさんの助けのおかげだけれど、私も頑張った。
ユウ兄さんには、帰ったら改めて男子たちへの根回しをお願いしておこう。達成感が心を包み、安心したら少し眠くなってきた。
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