オペラにしてはきな臭い
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「入間君は警察官になりたいんだね」
しんと静まり返った夜の道を二人で歩く。卒業前のクラス会、帰る方角が一緒だからと誰となく言い訳し、周りもなんとなく察してそれ以上は追及せず、ぶらぶらと、五十鈴と並んで帰路についた。
語った覚えのない将来の夢に、気分が高揚した自分はそんなに口が緩かったかと首を傾げたが、銃兎が口を開く前に、私がほかの人に聞いたの、と恥じ入るように告白された。園山はなにになりたいんだ、と、普段ならば聞きもしないようなことを尋ねてしまった。なんだろね。他人事のように笑う五十鈴は開いた手のひらを指で折って数えていく。
「小料理屋とか、イルカの飼育員とか、遊園地のキャストとか、パティシエとか、看護師とか、なりたいものがいっぱいあるんだよね」
「脈絡がないな」
「私にとって、思い出深い大人たちの姿なのかもね。警察官も。昔、大切にしてたマフラーを渡してくれた婦警さん、すっごく優しかったのをいまでもよくよく覚えているの」
それで、内緒の話なんだけどね。なんでもないような声音を装いつつ、その実赤くなった頬は寒さのせいだけではないのだろう。
「こないだ、養成所のオーディションに受かったの。女優さんになりたいと思って」
「へぇ……」
「女優さんになったら、小料理屋もイルカの飼育員も、遊園地のキャストもパティシエも看護師もできるかもしれないでしょ」
「大変そうだがな」
「入間君のこと、応援してるから、応援してよ」
「はいはい」
じゃあここで。訪れた十字路で、五十鈴は恥ずかし気に銃兎を見上げ、笑った。ばいばい、と言うように振った手を掴んで、あ、と、彼女の目が揺れるさまを間近でみつめて、気づけば唇が重なっていた。ふつりと離れたときには、何が起こったか分からないというように五十鈴は数回まばたきをして、そっと唇を撫でた。
「……いまキスした?」
「……したな」
「……なんで」
「……なんでって」
こっぱずかしい言葉を衝動のままに紡ぐ。赤らめた頬に目を潤ませ、五十鈴はふふ、と小さく笑って、銃兎の手を握り返した。
しんと静まり返った夜の道を二人で歩く。卒業前のクラス会、帰る方角が一緒だからと誰となく言い訳し、周りもなんとなく察してそれ以上は追及せず、ぶらぶらと、五十鈴と並んで帰路についた。
語った覚えのない将来の夢に、気分が高揚した自分はそんなに口が緩かったかと首を傾げたが、銃兎が口を開く前に、私がほかの人に聞いたの、と恥じ入るように告白された。園山はなにになりたいんだ、と、普段ならば聞きもしないようなことを尋ねてしまった。なんだろね。他人事のように笑う五十鈴は開いた手のひらを指で折って数えていく。
「小料理屋とか、イルカの飼育員とか、遊園地のキャストとか、パティシエとか、看護師とか、なりたいものがいっぱいあるんだよね」
「脈絡がないな」
「私にとって、思い出深い大人たちの姿なのかもね。警察官も。昔、大切にしてたマフラーを渡してくれた婦警さん、すっごく優しかったのをいまでもよくよく覚えているの」
それで、内緒の話なんだけどね。なんでもないような声音を装いつつ、その実赤くなった頬は寒さのせいだけではないのだろう。
「こないだ、養成所のオーディションに受かったの。女優さんになりたいと思って」
「へぇ……」
「女優さんになったら、小料理屋もイルカの飼育員も、遊園地のキャストもパティシエも看護師もできるかもしれないでしょ」
「大変そうだがな」
「入間君のこと、応援してるから、応援してよ」
「はいはい」
じゃあここで。訪れた十字路で、五十鈴は恥ずかし気に銃兎を見上げ、笑った。ばいばい、と言うように振った手を掴んで、あ、と、彼女の目が揺れるさまを間近でみつめて、気づけば唇が重なっていた。ふつりと離れたときには、何が起こったか分からないというように五十鈴は数回まばたきをして、そっと唇を撫でた。
「……いまキスした?」
「……したな」
「……なんで」
「……なんでって」
こっぱずかしい言葉を衝動のままに紡ぐ。赤らめた頬に目を潤ませ、五十鈴はふふ、と小さく笑って、銃兎の手を握り返した。