こばなしむかしばなし
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きょうも携帯が震える。確認するのが怖くて、確認しなかったらどうなるのかを考えてもっと怖くなって、ペンを置き、携帯を手にした。つい最近加えられた名前。届いていたのは、一枚の画像。通知のポップアップだけでわかる。震える手でタップする。続けて送られた文章。「ごめんね、誤操作しちゃった笑」。そんなわけない。そう思いこそすれ、なんと返せばいいかが分からない。また、携帯が震えた。「また誤操作しちゃうかも笑」「いまから暇?」「こないだの場所ね♡」。震えは収まらない。ちがう、これは、携帯じゃなくて、自分の身体だ。そっと、息を詰めて部屋を出る。朝が早い父はいつもこの時間には眠っている。母は、仕事を片付け、風呂に入っているところだった。確認を済ませ、グラスに一杯の水を注ぎ、部屋に戻る。月に二回通う新宿の病院にて処方された薬を引っ張り出して、飲んだ。そのまま制服に着替える。金目のものは持たない。ICカードと、携帯とだけを鞄に放り込んで、中学生の頃履いていたローファーを箱から取り出し、部屋の灯りを消した。
始まりは些細なことだった。
学校帰りに立ち寄った本屋で、妙な言動の男たちがいた。ずっと霧絵の周りをうろついて、足元に鞄を置いたり、すれ違うときに手を腰元にかすめたり。にやつく顔にわざとだと確信しても、声を上げることはできなかった。本屋を出ても、彼らは霧絵を追いかけてきて、駅のどこかの施設で撒くことも考えたが、それ以上に彼らが諦めてくれないだろうか、はやく安心できる場所に帰りたいという思いが優って、電車に飛び乗った。
足音は消えなかった。付き纏われ、改札口を出たところで振り返った。たまたま、思いっきり目が合ってしまって、にた、と笑いかけられる。こちらがなにか言う前に、向こうが大きな声を出した。
「おねえさん、さっきはごめんね?」
「ぶつかっちゃって……痛くなかった?」
周りの人間たちは、ちらりとこちらを見れど、特に何も言わない。本当に申し訳なさそうな顔を繕っているものだから、ナンパの類だとは思われていないようだった。結局霧絵が口にできたのは、「大丈夫です」と「すみません」だけだった。
足音は消えなかった。駅を出て、足早に帰ろうと、普段使わない道を使ったら、彼らが追いかけて、声をかけてきた。
「おねえさんさ、さっきのなに?」
「本屋にいたときから、こっち睨んできてさ」
「俺らがなんかしたみたいじゃん」
「駅でもさぁ、なによ?大丈夫ですって。そっちに非はないの?邪魔なとこに突っ立って本読んでたのはそっちじゃん」
「こっち来いよ」
腕を引かれ、引き摺り込まれたのは近くの公園のトイレだった。男子トイレに押し込まれ、突き飛ばされる。よろめいたところを掴まれて、一発、頭を殴られた。震え切った体は歯の根が合わず、ろくな声さえ出せない。続けざまにまた、殴られて、脳が揺れた。立てなくなり、座り込む。きったねー!という笑い声さえ、遠くに感じた。
殴られて、蹴られて、ろくな抵抗もできなくなったころ、制服のブラウスを力一杯引っ張られた。ボタンが飛び、胸元が開かれる。スカートを捲られ、薄汚いトイレにシャッター音が響いた。下卑た笑い声。掴まれる髪。至近距離で顔を見られる。
「おねーさんけっこうかわいいよね。ちょっと付き合ってよ」
そのまま、唇をべろりと舐められる。思い出したかのように体が悲鳴をあげて、ジタバタともがく。純粋〜!!という声に涙が出た。
まさぐられる体。下着を奪われる。助けて、と叫んだ声は怒鳴り声とともに塞がれた。体の中に指を捻じ込まれ、痛みに悲鳴をあげる。体からは脂汗が滲んで、吐き気がした。
すぐそばで、怒声が響いた。顔を上げると、目の前にいた男が吹っ飛んで、自分の体が急に重たくなる。そのままずるずるとへたりこむ。新しくやってきた男は、すかさずほかの男たちの横っ面を殴り飛ばし、数秒後には、立っているのは彼だけだった。ぎろり、とこちらを向いた目に息がつまる。ひ、と、喉が悲鳴をあげた。犯される。一瞬途絶えたその恐怖が、急速に回転し始める。彼が腕を伸ばしたのは、霧絵の体に指を突っ込んでいた男で、呻く男に、彼は怒鳴った。先ほど、男たちに向けられた下卑たそれとは違う。純粋に、何かに怒って発せられたその声が、びりびりと、霧絵の体を震わせた。
始まりは些細なことだった。
学校帰りに立ち寄った本屋で、妙な言動の男たちがいた。ずっと霧絵の周りをうろついて、足元に鞄を置いたり、すれ違うときに手を腰元にかすめたり。にやつく顔にわざとだと確信しても、声を上げることはできなかった。本屋を出ても、彼らは霧絵を追いかけてきて、駅のどこかの施設で撒くことも考えたが、それ以上に彼らが諦めてくれないだろうか、はやく安心できる場所に帰りたいという思いが優って、電車に飛び乗った。
足音は消えなかった。付き纏われ、改札口を出たところで振り返った。たまたま、思いっきり目が合ってしまって、にた、と笑いかけられる。こちらがなにか言う前に、向こうが大きな声を出した。
「おねえさん、さっきはごめんね?」
「ぶつかっちゃって……痛くなかった?」
周りの人間たちは、ちらりとこちらを見れど、特に何も言わない。本当に申し訳なさそうな顔を繕っているものだから、ナンパの類だとは思われていないようだった。結局霧絵が口にできたのは、「大丈夫です」と「すみません」だけだった。
足音は消えなかった。駅を出て、足早に帰ろうと、普段使わない道を使ったら、彼らが追いかけて、声をかけてきた。
「おねえさんさ、さっきのなに?」
「本屋にいたときから、こっち睨んできてさ」
「俺らがなんかしたみたいじゃん」
「駅でもさぁ、なによ?大丈夫ですって。そっちに非はないの?邪魔なとこに突っ立って本読んでたのはそっちじゃん」
「こっち来いよ」
腕を引かれ、引き摺り込まれたのは近くの公園のトイレだった。男子トイレに押し込まれ、突き飛ばされる。よろめいたところを掴まれて、一発、頭を殴られた。震え切った体は歯の根が合わず、ろくな声さえ出せない。続けざまにまた、殴られて、脳が揺れた。立てなくなり、座り込む。きったねー!という笑い声さえ、遠くに感じた。
殴られて、蹴られて、ろくな抵抗もできなくなったころ、制服のブラウスを力一杯引っ張られた。ボタンが飛び、胸元が開かれる。スカートを捲られ、薄汚いトイレにシャッター音が響いた。下卑た笑い声。掴まれる髪。至近距離で顔を見られる。
「おねーさんけっこうかわいいよね。ちょっと付き合ってよ」
そのまま、唇をべろりと舐められる。思い出したかのように体が悲鳴をあげて、ジタバタともがく。純粋〜!!という声に涙が出た。
まさぐられる体。下着を奪われる。助けて、と叫んだ声は怒鳴り声とともに塞がれた。体の中に指を捻じ込まれ、痛みに悲鳴をあげる。体からは脂汗が滲んで、吐き気がした。
すぐそばで、怒声が響いた。顔を上げると、目の前にいた男が吹っ飛んで、自分の体が急に重たくなる。そのままずるずるとへたりこむ。新しくやってきた男は、すかさずほかの男たちの横っ面を殴り飛ばし、数秒後には、立っているのは彼だけだった。ぎろり、とこちらを向いた目に息がつまる。ひ、と、喉が悲鳴をあげた。犯される。一瞬途絶えたその恐怖が、急速に回転し始める。彼が腕を伸ばしたのは、霧絵の体に指を突っ込んでいた男で、呻く男に、彼は怒鳴った。先ほど、男たちに向けられた下卑たそれとは違う。純粋に、何かに怒って発せられたその声が、びりびりと、霧絵の体を震わせた。