こばなしむかしばなし
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その姿をみとめたとき、一郎は妙な胸騒ぎをおぼえ、足を止めた。駅から出てすぐの表通り、すぅと一郎の前を横切った霧絵は、しかし一郎に気が付くことなく、ふらふら、ひょこひょこと妙な歩き方でどこかへ進んでいく。いつもの制服姿だが、あの大きなリュックも、黒鞄も持っておらず、ちいさな薄っぺらいトートバックを肩にかけている。なぜか、ローファーをきちんと履かず、踵をあげ、つま先立ちのような歩き方をしていた。いつも校則通り、と言った風にまとめた髪は降ろしている。いつか、彼女に聞いた話だと、心配性な親が迎えに来てくれるまで、パン屋で時間を潰していると言っていた。今は何時だ。腕に巻いた時計を見る。今日は木曜日。午後十一時五十分。心臓がどくりと、嫌に急ぐ。普段彼女を見かけていたのは午後七時ごろ。すでにパン屋にはいないときだってあった。親が迎えに来るとしたら、そのぐらいの時間だろう。一郎は息を殺し、その姿を追いかけた。
夜になってもぎらぎらと輝く街の光は眠らない。そのまぶしさから逃げるかのように、ふらふらと、霧絵は人通りの少ない方へと向かっていく。声をかけようかと踏み出した一歩は、しかし、彼女を呼び止めるものに阻まれた。
とても、彼女の友人とは思えないような風貌の男たち。どこかで見たことがある。あれは。あの日、彼女を襲った少年だった。
夜になってもぎらぎらと輝く街の光は眠らない。そのまぶしさから逃げるかのように、ふらふらと、霧絵は人通りの少ない方へと向かっていく。声をかけようかと踏み出した一歩は、しかし、彼女を呼び止めるものに阻まれた。
とても、彼女の友人とは思えないような風貌の男たち。どこかで見たことがある。あれは。あの日、彼女を襲った少年だった。