一歩前進
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いつもどおり、寂雷の病院の軒下にて霧絵を待つ。そろそろか、と顔をあげたところ、視界に飛び込んできた姿に、一郎はぽかんと目を見開いた。
「部活を再開したんです」
ポテトは気に入らなかったが、シェイクと月見バーガーは気に入ったらしい。Sサイズシェイクのバニラを吸い、つぶやく。シェイクってこうもお上品に飲めるもんなんだな、と思うくらいには霧絵の顔は崩れないし、音も立てない。ポテトを摘まむ一郎は部活、と復唱する。その視線は、高い位置でまとめられたポニーテールに釘付けである。
「部活入ってたのか」
「ええ。いろいろあったときに休部したんですけど、両親と相談して再開することにしました」
「ちなみに、何部?」
「弓道」
「弓道」
「意外と筋肉あったり」
左腕を曲げ、ぐっと力を込めて見せる。一郎から見れば折れそうに細い腕にしか見えないが、力強く見つめてくる目に根負けしてその二の腕を触った。
「……意外と」
「でしょ」
「考えてみれば、牧野さんめっちゃ姿勢良いもんな。あれ体幹がしっかりしてるからなんか」
「あと腕相撲めっちゃ強いんです」
「……牧野さん腕相撲とかすんの?」
「うちの学校、制服と市立としてのブランドは可愛いですけど、中身は普通の中高生ですから」
ずこ、と音を立てたシェイクに、あら、と首を傾げる姿と、腕相撲する姿はいまいち結びつかない。そろそろですねぇ。立ち上がり、肩にかけようとしたリュックを、気になって持ち上げてみた。首を傾げた彼女に対して、一郎の腕はずん、と沈んだ。
「よくわかんないんですけど、うち学校に辞書置いて帰れない決まりで。英和辞典と国語辞典入ってるんですよね」
そら筋肉もつくわ。
「ギャップ萌えってあるだろ」
「強気な姉御肌がお化け怖いとか?」
「小柄な子だけどよく食べるかも」
「普段降ろしてる髪をポニーテール……文化部っぽい見た目で運動部……」
「にいちゃんのそれなに?新刊?」
「新刊だったらよかったのに……」
「発売中止になったんですか……?」
新刊がないなら俺が書くぜいや僕が、そんなやりとりは、一郎の耳を右から左に抜けていった。
「部活を再開したんです」
ポテトは気に入らなかったが、シェイクと月見バーガーは気に入ったらしい。Sサイズシェイクのバニラを吸い、つぶやく。シェイクってこうもお上品に飲めるもんなんだな、と思うくらいには霧絵の顔は崩れないし、音も立てない。ポテトを摘まむ一郎は部活、と復唱する。その視線は、高い位置でまとめられたポニーテールに釘付けである。
「部活入ってたのか」
「ええ。いろいろあったときに休部したんですけど、両親と相談して再開することにしました」
「ちなみに、何部?」
「弓道」
「弓道」
「意外と筋肉あったり」
左腕を曲げ、ぐっと力を込めて見せる。一郎から見れば折れそうに細い腕にしか見えないが、力強く見つめてくる目に根負けしてその二の腕を触った。
「……意外と」
「でしょ」
「考えてみれば、牧野さんめっちゃ姿勢良いもんな。あれ体幹がしっかりしてるからなんか」
「あと腕相撲めっちゃ強いんです」
「……牧野さん腕相撲とかすんの?」
「うちの学校、制服と市立としてのブランドは可愛いですけど、中身は普通の中高生ですから」
ずこ、と音を立てたシェイクに、あら、と首を傾げる姿と、腕相撲する姿はいまいち結びつかない。そろそろですねぇ。立ち上がり、肩にかけようとしたリュックを、気になって持ち上げてみた。首を傾げた彼女に対して、一郎の腕はずん、と沈んだ。
「よくわかんないんですけど、うち学校に辞書置いて帰れない決まりで。英和辞典と国語辞典入ってるんですよね」
そら筋肉もつくわ。
「ギャップ萌えってあるだろ」
「強気な姉御肌がお化け怖いとか?」
「小柄な子だけどよく食べるかも」
「普段降ろしてる髪をポニーテール……文化部っぽい見た目で運動部……」
「にいちゃんのそれなに?新刊?」
「新刊だったらよかったのに……」
「発売中止になったんですか……?」
新刊がないなら俺が書くぜいや僕が、そんなやりとりは、一郎の耳を右から左に抜けていった。