ONE PIECE
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第一にタイミングが悪かった。第二に人物が悪かった。
「長官、海軍本部から何か書類が来てますよ」
「ん? おう」
デスクに向いたままのスパンダムに、背後から話しかけるルイ。書類とやらを受け取ろうと、スパンダムは後ろを見ないまま腕をルイの方へと向けた。
普通の人間であれば、特に何の問題も無かったはずだ。しかし不幸なことに、そこにいたのは天性のおっちょこちょいであるスパンダム。
無造作に後ろに伸ばされた手は、いっそお約束とも言える展開で、背後にいたルイの胸をモロに掴んだ。
(なんか柔らけぇ……?)
「あ、の」
戸惑ったようなルイの声。マシュマロのように柔らかい感触に、スパンダムの背中に冷や汗が流れる。見なくとも分かる。これは、きっと。
「うわっ、わ、悪い!!」
「あ、いえ、大丈夫で、」
セクハラです、とカリファに常日頃言われているスパンダムもこれは洒落にならない。完全にセクハラである。弁明の余地は一切ない。完全なるセクハラである。
ここで、スパンダムが冷静な人物であれば良かった。ルイの胸から手を離し、再度謝罪をすれば事態は最速で収束しただろう。ルイも、彼が故意にやっていないことは分かっている。しかし繰り返すが、そこにいたのはコーヒーさえもまともに飲めないほどそそっかしいスパンダムである。
慌てに慌てた彼は何を血迷ったか、立ち上がり、謝罪をしようとルイに体を向け、そして足を滑らせた。
不幸なことにルイを巻き込んで。
「きゃ、っ」
「!? っうわ……!ッ」
そこに完成したのは、部下を押し倒す長官という図。
悪いことは重なるもので、ルイを押し潰さないように咄嗟に床に付こうとしたスパンダムの片手は、ルイの胸を掴んでいる。
ここまでの状況を正確に吟味して言い表すとすれば、涙目の可愛い部下を無理矢理組み敷いて胸を揉んでいる上司。もっと簡潔に言うならばセクハラ以外の何者でもない。
思考回路が停止して、柔らけえしいい匂いする、という変態のような考えがスパンダムの脳内を過った。
「わ、わわわ悪い!!! 今すぐ退、」
「だ、大丈夫ですから、長官、落ち着い」
これでまた慌てられたら何が起きるか溜まったものじゃない。狼狽する上司を落ち着けようと、ルイが声をかけたその瞬間、残酷とも言える無機質な音と共に扉が開いた。
「あー、疲れたのう。ルイ、悪いがコーヒーを……は?」
「私にもコーヒー頂だ……ちょっと、長官?」
「……おい、何をやっている」
入ってきたのは、任務帰りのカクとカリファにルッチ。地を這うような低音に、スパンダムの顔が青くなる。
「ま、待てお前ら……! ッ誤解だ! これは所謂ラッキースケベというやつでな!」
「指銃」
「おいルッチやめろ! 指銃はやめろ」
「早くルイから退かんかい、この変態」
「ちょ……! 聞けって、これには理由があって」
「……セクハラです、長官」
「マジトーンやめろよ!」
畳み掛けるように責められて、半ば涙目になるスパンダム。
「あの……私は大丈夫なので、まず退いてほしいなあ、なんて」
余りに非難される上司を不憫に思ったのか、戸惑いがちにルイが口を挟む、と同時にカクがスパンダムの首根っこを掴んでひょいと放り投げた。
「カクてめぇ!」
「それぐらいで済んだことに感謝するべきじゃ」
「ご不満なら俺から指銃を」
「それはいらねぇ!」
「セクハラです」
「それは叫んだから!? それともルイの胸を揉ん」
「セクハラです!!」
「悪かった!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ彼らに、ぽかんとするルイ。
「み、皆さん……そんなに言わなくても、私はそんなに気にしてませんので」
長官も悪気はなかったですし。かなり注意力散漫なだけで。
ルイの言葉に、3人の殺気が少し逸れ、スパンダムの顔が安堵に輝いた。
「ルイ……っお前何て良いやつなんだ!」
「まあ……ルイがそう言うんなら仕方ないのう」
「ルイに免じて許すけど、セクハラはセクハラよ」
「……そうか」
未だ納得しきっていない様子ではあるが、渋々と言った様子で攻撃体制を解いた。
「全く……はあ、私は自室に戻ってるわ。ルイは何かあったらすぐに呼ぶのよ、駆けつけるから」
ため息をついたカリファが、ひらりと手を振って扉を開く。呼ぶったってどうすればいいんだ、とルイは内心ツッコミを入れる。
「あはは、ありがとうございます」
去っていったカリファを目で追いながら、さてどうしたものかとルイは立ち尽くす。見れば、ルッチとカクは二人で何事かをひそひそ話し合っているし、スパンダムはいつの間にやら部屋にいなくなっている始末。逃げたな、とルイは苦く笑う。
「助けてくれて、ありがとうございました」
実際、あのままでいても長官は何もしなかっただろうし、寧ろ長官が可哀想だと同情するレベルだったが、一応お礼を言うに越したことはないだろう。
その言葉に、ルッチとカクはにやりと笑った。
「礼の必要はない」
「そうじゃ、大して“気にしてなかった”んじゃろ?」
どこか含みのある二人の言葉に、ルイが眉を寄せる。何だか嫌な予感がする。殺気や攻撃などの類ではない。ただ純粋に、これから自分にとって不都合なことが起きる予感がするのだ。
「“大丈夫”だったんだよな?」
「……なんか近くないですかね」
じりじりと詰め寄る二人に壁際まで追い詰められて、ルイの笑顔が引き攣る。
「ちょ、っ待」
「長官の野郎に揉まれても大丈夫なんじゃ、わしらもいいじゃろ?」
「長官は良くて、俺たちが駄目。なんてこと」
ねぇよなァ?
脅しのような凄みのある声を向けられたルイは、あんたらどれだけ長官嫌いですか、とからかう余裕さえない。
ルイの華奢な肩を、ルッチとカクが片手で抑えつける。後ろは壁、左右には道力化け物レベルの男二人。詰んだなとルイは思う。将棋なら投了、チェスならチェックメイト。一介のCP9の補佐役であるルイには、どう足掻いても逃げ場はない。
「いや、あれは単なる事故であって……っ、ひ」
何とかこの場を乗り切ろうと弁解するルイに、伸ばされた二本の手が行き着く先は、当然の如くルイの胸元。先程のスパンダムの無遠慮なそれとは違い、撫であげるような触り方に、ぞくりとルイの背筋が甘く響く。
「可愛い声じゃな。もっと聞かせてくれ」
「……脱がすぞ」
「お、ええのう」
良いわけあるかこの変態。
涙目になったルイが発した言葉はただ一つ。
──か、カリファさーん!!
(! ルイの危機の予感がするわ)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
最初はリクエストのカクの予定で書いてたんですが、書いてるうちにルッチが出しゃばりました。これもう完全に愛されですよね。カクの小説はまた挑戦します。
「長官、海軍本部から何か書類が来てますよ」
「ん? おう」
デスクに向いたままのスパンダムに、背後から話しかけるルイ。書類とやらを受け取ろうと、スパンダムは後ろを見ないまま腕をルイの方へと向けた。
普通の人間であれば、特に何の問題も無かったはずだ。しかし不幸なことに、そこにいたのは天性のおっちょこちょいであるスパンダム。
無造作に後ろに伸ばされた手は、いっそお約束とも言える展開で、背後にいたルイの胸をモロに掴んだ。
(なんか柔らけぇ……?)
「あ、の」
戸惑ったようなルイの声。マシュマロのように柔らかい感触に、スパンダムの背中に冷や汗が流れる。見なくとも分かる。これは、きっと。
「うわっ、わ、悪い!!」
「あ、いえ、大丈夫で、」
セクハラです、とカリファに常日頃言われているスパンダムもこれは洒落にならない。完全にセクハラである。弁明の余地は一切ない。完全なるセクハラである。
ここで、スパンダムが冷静な人物であれば良かった。ルイの胸から手を離し、再度謝罪をすれば事態は最速で収束しただろう。ルイも、彼が故意にやっていないことは分かっている。しかし繰り返すが、そこにいたのはコーヒーさえもまともに飲めないほどそそっかしいスパンダムである。
慌てに慌てた彼は何を血迷ったか、立ち上がり、謝罪をしようとルイに体を向け、そして足を滑らせた。
不幸なことにルイを巻き込んで。
「きゃ、っ」
「!? っうわ……!ッ」
そこに完成したのは、部下を押し倒す長官という図。
悪いことは重なるもので、ルイを押し潰さないように咄嗟に床に付こうとしたスパンダムの片手は、ルイの胸を掴んでいる。
ここまでの状況を正確に吟味して言い表すとすれば、涙目の可愛い部下を無理矢理組み敷いて胸を揉んでいる上司。もっと簡潔に言うならばセクハラ以外の何者でもない。
思考回路が停止して、柔らけえしいい匂いする、という変態のような考えがスパンダムの脳内を過った。
「わ、わわわ悪い!!! 今すぐ退、」
「だ、大丈夫ですから、長官、落ち着い」
これでまた慌てられたら何が起きるか溜まったものじゃない。狼狽する上司を落ち着けようと、ルイが声をかけたその瞬間、残酷とも言える無機質な音と共に扉が開いた。
「あー、疲れたのう。ルイ、悪いがコーヒーを……は?」
「私にもコーヒー頂だ……ちょっと、長官?」
「……おい、何をやっている」
入ってきたのは、任務帰りのカクとカリファにルッチ。地を這うような低音に、スパンダムの顔が青くなる。
「ま、待てお前ら……! ッ誤解だ! これは所謂ラッキースケベというやつでな!」
「指銃」
「おいルッチやめろ! 指銃はやめろ」
「早くルイから退かんかい、この変態」
「ちょ……! 聞けって、これには理由があって」
「……セクハラです、長官」
「マジトーンやめろよ!」
畳み掛けるように責められて、半ば涙目になるスパンダム。
「あの……私は大丈夫なので、まず退いてほしいなあ、なんて」
余りに非難される上司を不憫に思ったのか、戸惑いがちにルイが口を挟む、と同時にカクがスパンダムの首根っこを掴んでひょいと放り投げた。
「カクてめぇ!」
「それぐらいで済んだことに感謝するべきじゃ」
「ご不満なら俺から指銃を」
「それはいらねぇ!」
「セクハラです」
「それは叫んだから!? それともルイの胸を揉ん」
「セクハラです!!」
「悪かった!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ彼らに、ぽかんとするルイ。
「み、皆さん……そんなに言わなくても、私はそんなに気にしてませんので」
長官も悪気はなかったですし。かなり注意力散漫なだけで。
ルイの言葉に、3人の殺気が少し逸れ、スパンダムの顔が安堵に輝いた。
「ルイ……っお前何て良いやつなんだ!」
「まあ……ルイがそう言うんなら仕方ないのう」
「ルイに免じて許すけど、セクハラはセクハラよ」
「……そうか」
未だ納得しきっていない様子ではあるが、渋々と言った様子で攻撃体制を解いた。
「全く……はあ、私は自室に戻ってるわ。ルイは何かあったらすぐに呼ぶのよ、駆けつけるから」
ため息をついたカリファが、ひらりと手を振って扉を開く。呼ぶったってどうすればいいんだ、とルイは内心ツッコミを入れる。
「あはは、ありがとうございます」
去っていったカリファを目で追いながら、さてどうしたものかとルイは立ち尽くす。見れば、ルッチとカクは二人で何事かをひそひそ話し合っているし、スパンダムはいつの間にやら部屋にいなくなっている始末。逃げたな、とルイは苦く笑う。
「助けてくれて、ありがとうございました」
実際、あのままでいても長官は何もしなかっただろうし、寧ろ長官が可哀想だと同情するレベルだったが、一応お礼を言うに越したことはないだろう。
その言葉に、ルッチとカクはにやりと笑った。
「礼の必要はない」
「そうじゃ、大して“気にしてなかった”んじゃろ?」
どこか含みのある二人の言葉に、ルイが眉を寄せる。何だか嫌な予感がする。殺気や攻撃などの類ではない。ただ純粋に、これから自分にとって不都合なことが起きる予感がするのだ。
「“大丈夫”だったんだよな?」
「……なんか近くないですかね」
じりじりと詰め寄る二人に壁際まで追い詰められて、ルイの笑顔が引き攣る。
「ちょ、っ待」
「長官の野郎に揉まれても大丈夫なんじゃ、わしらもいいじゃろ?」
「長官は良くて、俺たちが駄目。なんてこと」
ねぇよなァ?
脅しのような凄みのある声を向けられたルイは、あんたらどれだけ長官嫌いですか、とからかう余裕さえない。
ルイの華奢な肩を、ルッチとカクが片手で抑えつける。後ろは壁、左右には道力化け物レベルの男二人。詰んだなとルイは思う。将棋なら投了、チェスならチェックメイト。一介のCP9の補佐役であるルイには、どう足掻いても逃げ場はない。
「いや、あれは単なる事故であって……っ、ひ」
何とかこの場を乗り切ろうと弁解するルイに、伸ばされた二本の手が行き着く先は、当然の如くルイの胸元。先程のスパンダムの無遠慮なそれとは違い、撫であげるような触り方に、ぞくりとルイの背筋が甘く響く。
「可愛い声じゃな。もっと聞かせてくれ」
「……脱がすぞ」
「お、ええのう」
良いわけあるかこの変態。
涙目になったルイが発した言葉はただ一つ。
──か、カリファさーん!!
(! ルイの危機の予感がするわ)
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最初はリクエストのカクの予定で書いてたんですが、書いてるうちにルッチが出しゃばりました。これもう完全に愛されですよね。カクの小説はまた挑戦します。
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