弐刻
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沈んでいた意識が浮上してきた。今まで何をしていたのだったか。ああそうだ、突然訳の分からない場所に移動していて、妙な集団に追われて、足を滑らせて崖から滝壺に落ちたんだった。
どうやらそれで死ななかったらしい。
おかしいだろう。どうかしている。何故生きてるんだ。あり得ない。
喉も鼻も痛い。それに寒い。
身体を引きずられて、痛みが走った。
一気に意識が覚醒した。
「ああ、気が付かれ――」
飛び起きて距離を取ろうとしたが、右足首に激痛が走り、二、三メートル離れるのが精々で、その場に膝を突くしかなかった。
「いっ、つ……っ」
「急に起き上がらない方が……!」
何がどうなってる? 状況が分からない。
激しく痛む右足を気にしながら、周囲と自分に意識を向ける。体中の痛みと寒さは水に落ちたから。服が重い。右足は一度着地しようとした時に挫いたか何かしたんだろう。――荷物がない。髭のある男の足元か。
周囲の人の気配は十以上、殆どが子供で内二つが目の前の大人。この二人――。
「ゲホッ、ゴホ……ッ」
水を飲んだせいか喉の違和感に咳が止まらない。
「落ち着いてください。貴方は気を失って川を流れて来たんですよ。安静にしていた方が良い」
若い男が穏やかに言う。落ち着けるわけがない。早くここから逃げ去りたいくらいだ。子供も居るとか最悪だ。
「……」
改めて確認すると、子供は全部で十一人。大人二人も含めて全員着物と、袴の様なものを着ているが、知っている物とは形が違う。柄の種類と色が多い。
子供らは小学校中学年程に見える。状況だけなら“校外学習の引率”だが、この大人二人が分からない。明らかに一般人ではないが、そんな人物が引率する理由は?
「……あんたら、何者だよ」
不審なのはお互い様だろうが、圧倒的人数不利。これ位は許されていいはずだ。
「我々は……」
大人二人がアイコンタクトしている間に、サッと子供らが前に出てきた。
「ぼく達、良い子達とその保護者でーす!」
動きも声も揃えて、ジャーンとばかりの子供ら。自分らで良い子っつったな。揃いも揃ってにこやかだ。
嘘を言っているようには見えない。ただ意図的に何かを伏せているのも分かる。だが、あまりにも無邪気で毒気が抜かれた。
流石に痛くて右足を投げ出して地面に座った。片足で支え続けるのも限界がある。もうどうにでもなれ。
「足、痛いんですか?」
「なんでもねぇよ」
覗き込んでくる子供の目。落ち着かない。
「体調は如何ですか。問題が無ければ、話を聞きたいのですが」
「……勝手にしろ」
満足に動けない上に荷物があちらにある以上、他に選択肢はなかった。
「どちらからいらっしゃったんですか? 珍しい格好をしていらっしゃいますが」
「……は?」
冗談で言っているにしては真面目なトーンだった。こんな質問聞きたくなかった。
「……そこまで奇抜な格好をしてるつもりはない。あんたらの格好の方が馴染みねぇよ。何時の時代の格好だ、映画村かここは」
「え?」
「南蛮の方ですか?」
子供からも質問が飛んできた。
「南蛮ってどこだ」
「えっと、海の向こうの、遠い国?」
「俺は日本人だ」
ここまで来れば、いや、そもそも最初からおかしいのは分かっていた。周囲の景色が変わった時から、何かが起こっているのは間違いない。気を失って見ている夢なのか、それとも幻覚か。だが未だに痛み続ける右足。これが現実意外だとは思えない。バカバカしいと、排除したかった可能性について考えなければならないのか。
面倒くせぇ。
……いや、それよりも先に考えなければならないことがある。
「あんたらは、あいつらの関係者か?」
真偽は反応を見て確かめればいい。これだけ子供が居るなら。
「あいつらとは?」
「ここから上流の滝の上に居た五人組。そいつらから追われて逃げてたら足が滑って落ちたんだ」
三人は忍者らしい格好だった。そう伝えるとそれまでとは空気が変わった。
「何があったんですか」
「別に何も。たまたま森の中でそいつらが集まってるところに遭遇しただけだ。何をしてたのかは知らねぇよ。隠れてやり過ごそうとしたけど、見つかって追いかけられた」
「忍者も居たとおっしゃいましたけど、どんな姿でしたか。何か特徴は?」
「どんなって、黒っぽい格好だったってだけで、顔もほぼ見えなかったっての。薄暗かったし」
「貴方の姿は見られましたか」
「後ろ姿くらいは見られたんじゃねぇの。石かなんか投げてたし」
矢継ぎ早に質問が続く。質問の仕方からも、やはり大人二人は一般人ではなさそうだ。一応、返答の内容に嘘は吐いていないが、さて、どう来るか。
「あいつらと無関係だってんなら、あんたらこんな子連れでここに長く居ない方が良いんじゃねぇの。あいつらが来ないとも限らねぇしな」
「……我々のことは兎も角、貴方はどうするんですか?」
「あんたらには関係ねぇだろ。わざわざ川から拾ってくれてどーも。生憎礼になるようなもんは持ち合わせてねぇから、どうぞこのまま立ち去ってくれよ」
ほっといてくれ。
大人二人が顔を見合わせて何か相談し始めた。内容はよく聞こえないし、そもそも言語なのかも分からないレベルで内容が理解できない。どうでもいいが。
どうやらそれで死ななかったらしい。
おかしいだろう。どうかしている。何故生きてるんだ。あり得ない。
喉も鼻も痛い。それに寒い。
身体を引きずられて、痛みが走った。
一気に意識が覚醒した。
「ああ、気が付かれ――」
飛び起きて距離を取ろうとしたが、右足首に激痛が走り、二、三メートル離れるのが精々で、その場に膝を突くしかなかった。
「いっ、つ……っ」
「急に起き上がらない方が……!」
何がどうなってる? 状況が分からない。
激しく痛む右足を気にしながら、周囲と自分に意識を向ける。体中の痛みと寒さは水に落ちたから。服が重い。右足は一度着地しようとした時に挫いたか何かしたんだろう。――荷物がない。髭のある男の足元か。
周囲の人の気配は十以上、殆どが子供で内二つが目の前の大人。この二人――。
「ゲホッ、ゴホ……ッ」
水を飲んだせいか喉の違和感に咳が止まらない。
「落ち着いてください。貴方は気を失って川を流れて来たんですよ。安静にしていた方が良い」
若い男が穏やかに言う。落ち着けるわけがない。早くここから逃げ去りたいくらいだ。子供も居るとか最悪だ。
「……」
改めて確認すると、子供は全部で十一人。大人二人も含めて全員着物と、袴の様なものを着ているが、知っている物とは形が違う。柄の種類と色が多い。
子供らは小学校中学年程に見える。状況だけなら“校外学習の引率”だが、この大人二人が分からない。明らかに一般人ではないが、そんな人物が引率する理由は?
「……あんたら、何者だよ」
不審なのはお互い様だろうが、圧倒的人数不利。これ位は許されていいはずだ。
「我々は……」
大人二人がアイコンタクトしている間に、サッと子供らが前に出てきた。
「ぼく達、良い子達とその保護者でーす!」
動きも声も揃えて、ジャーンとばかりの子供ら。自分らで良い子っつったな。揃いも揃ってにこやかだ。
嘘を言っているようには見えない。ただ意図的に何かを伏せているのも分かる。だが、あまりにも無邪気で毒気が抜かれた。
流石に痛くて右足を投げ出して地面に座った。片足で支え続けるのも限界がある。もうどうにでもなれ。
「足、痛いんですか?」
「なんでもねぇよ」
覗き込んでくる子供の目。落ち着かない。
「体調は如何ですか。問題が無ければ、話を聞きたいのですが」
「……勝手にしろ」
満足に動けない上に荷物があちらにある以上、他に選択肢はなかった。
「どちらからいらっしゃったんですか? 珍しい格好をしていらっしゃいますが」
「……は?」
冗談で言っているにしては真面目なトーンだった。こんな質問聞きたくなかった。
「……そこまで奇抜な格好をしてるつもりはない。あんたらの格好の方が馴染みねぇよ。何時の時代の格好だ、映画村かここは」
「え?」
「南蛮の方ですか?」
子供からも質問が飛んできた。
「南蛮ってどこだ」
「えっと、海の向こうの、遠い国?」
「俺は日本人だ」
ここまで来れば、いや、そもそも最初からおかしいのは分かっていた。周囲の景色が変わった時から、何かが起こっているのは間違いない。気を失って見ている夢なのか、それとも幻覚か。だが未だに痛み続ける右足。これが現実意外だとは思えない。バカバカしいと、排除したかった可能性について考えなければならないのか。
面倒くせぇ。
……いや、それよりも先に考えなければならないことがある。
「あんたらは、あいつらの関係者か?」
真偽は反応を見て確かめればいい。これだけ子供が居るなら。
「あいつらとは?」
「ここから上流の滝の上に居た五人組。そいつらから追われて逃げてたら足が滑って落ちたんだ」
三人は忍者らしい格好だった。そう伝えるとそれまでとは空気が変わった。
「何があったんですか」
「別に何も。たまたま森の中でそいつらが集まってるところに遭遇しただけだ。何をしてたのかは知らねぇよ。隠れてやり過ごそうとしたけど、見つかって追いかけられた」
「忍者も居たとおっしゃいましたけど、どんな姿でしたか。何か特徴は?」
「どんなって、黒っぽい格好だったってだけで、顔もほぼ見えなかったっての。薄暗かったし」
「貴方の姿は見られましたか」
「後ろ姿くらいは見られたんじゃねぇの。石かなんか投げてたし」
矢継ぎ早に質問が続く。質問の仕方からも、やはり大人二人は一般人ではなさそうだ。一応、返答の内容に嘘は吐いていないが、さて、どう来るか。
「あいつらと無関係だってんなら、あんたらこんな子連れでここに長く居ない方が良いんじゃねぇの。あいつらが来ないとも限らねぇしな」
「……我々のことは兎も角、貴方はどうするんですか?」
「あんたらには関係ねぇだろ。わざわざ川から拾ってくれてどーも。生憎礼になるようなもんは持ち合わせてねぇから、どうぞこのまま立ち去ってくれよ」
ほっといてくれ。
大人二人が顔を見合わせて何か相談し始めた。内容はよく聞こえないし、そもそも言語なのかも分からないレベルで内容が理解できない。どうでもいいが。
