弐刻
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忍術学園一年は組の本日の授業は裏山への遠征だった。一行は川で喉を潤し、木陰でしばしの休息を取っていた。
一人の少年が、手拭いを濡らそうと川に近づいた。
「あれ?」
ふと上流の方へ眼を向けると、何か黒いものが流れてくるのが見えた。
「どうしたの?」
彼の様子に級友達も同じ方向を見る。
「ほら、あれ。何か流れてくる」
わらわらと、皆で上流を眺める。その物体がはっきり見えるようになった時、誰ともなく声を上げた。
「人だ!」
良い子達はすぐさま、引率の教師達の元へ走る。
「先生大変です!」
「川で人が流されてます!」
「なんだって⁉」
山田伝蔵、土井半助の両名は生徒たちに続いて川を見た。人影は川の中ほどを流れていたが、この川はそれなりに深さがあり、中央付近の流れはとても速かった。直接川へ入るのは危険と判断し、鍵縄を使って引き寄せることにした。
その人は何かを抱えているようで、幸いと言うべきか顔は水面から出ていた。どこから流れてきたのかは不明だが、もしかすれば、まだ。
着衣がすっかり水を吸った成人体型の人間を岸に引き上げるのは中々に骨が折れた。その人は意識こそ無かったが、引き上げて直に咳込み水を吐き出した。小さく呻き呼吸もしている。
「先生、その人は……」
子供達が覗き込む。
「気を失っているが、呼吸はしっかりしているし、脈もあるからひとまず大丈夫だろう。だがこのままという訳にもいかんだろうなぁ」
濡れ鼠のまま放置すれば体を冷やすばかりで、意識も無い以上危険だ。そこで一先ずは火を熾し介抱することとなった。
「この人、不思議な格好してますね」
「南蛮の衣装? とも違うし」
「確かに、見たことが無いな」
その人物は全体的に黒を主とした格好をしていたが、羽織っているものも袴らしきものも履物も、何もかもがこれまでに見たことのない造りをしていた。人形のように眠る顔からは男か女かの判断も難しかったが、濡れて張り付いている髪の短さもそれに拍車をかけた。腕に絡みついていた荷物と思しき物も謎の構造をしており、どの点においても未知の塊だった。――羽織っているものはメンズ向けの黒いフード付きロングコートで、ハイネックのカットソーを着、履いているのはスキニーパンツにワークブーツ、持っていたのはショルダーバックであるのだが、彼らがそれを知る故もなく。
土井が介抱のために移動させようと身体を動かしたところ、呻き声が漏れ苦しげに眉間に皺が寄った。
「どこか痛めているのか?」
出血している様子は無いが、負傷している可能性は十分にある。怪我の個所を確認しようとしたとき、その人物がぱっと目を開けた。
「ああ、気が付かれ――」
全てを言い終わるより先に、その人は目の前から消えていた。
一人の少年が、手拭いを濡らそうと川に近づいた。
「あれ?」
ふと上流の方へ眼を向けると、何か黒いものが流れてくるのが見えた。
「どうしたの?」
彼の様子に級友達も同じ方向を見る。
「ほら、あれ。何か流れてくる」
わらわらと、皆で上流を眺める。その物体がはっきり見えるようになった時、誰ともなく声を上げた。
「人だ!」
良い子達はすぐさま、引率の教師達の元へ走る。
「先生大変です!」
「川で人が流されてます!」
「なんだって⁉」
山田伝蔵、土井半助の両名は生徒たちに続いて川を見た。人影は川の中ほどを流れていたが、この川はそれなりに深さがあり、中央付近の流れはとても速かった。直接川へ入るのは危険と判断し、鍵縄を使って引き寄せることにした。
その人は何かを抱えているようで、幸いと言うべきか顔は水面から出ていた。どこから流れてきたのかは不明だが、もしかすれば、まだ。
着衣がすっかり水を吸った成人体型の人間を岸に引き上げるのは中々に骨が折れた。その人は意識こそ無かったが、引き上げて直に咳込み水を吐き出した。小さく呻き呼吸もしている。
「先生、その人は……」
子供達が覗き込む。
「気を失っているが、呼吸はしっかりしているし、脈もあるからひとまず大丈夫だろう。だがこのままという訳にもいかんだろうなぁ」
濡れ鼠のまま放置すれば体を冷やすばかりで、意識も無い以上危険だ。そこで一先ずは火を熾し介抱することとなった。
「この人、不思議な格好してますね」
「南蛮の衣装? とも違うし」
「確かに、見たことが無いな」
その人物は全体的に黒を主とした格好をしていたが、羽織っているものも袴らしきものも履物も、何もかもがこれまでに見たことのない造りをしていた。人形のように眠る顔からは男か女かの判断も難しかったが、濡れて張り付いている髪の短さもそれに拍車をかけた。腕に絡みついていた荷物と思しき物も謎の構造をしており、どの点においても未知の塊だった。――羽織っているものはメンズ向けの黒いフード付きロングコートで、ハイネックのカットソーを着、履いているのはスキニーパンツにワークブーツ、持っていたのはショルダーバックであるのだが、彼らがそれを知る故もなく。
土井が介抱のために移動させようと身体を動かしたところ、呻き声が漏れ苦しげに眉間に皺が寄った。
「どこか痛めているのか?」
出血している様子は無いが、負傷している可能性は十分にある。怪我の個所を確認しようとしたとき、その人物がぱっと目を開けた。
「ああ、気が付かれ――」
全てを言い終わるより先に、その人は目の前から消えていた。
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