季節ss
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……寝起きでこれはちょっと辛い。思い返せば去年も朝一番だったけども。でもさすがにこんなに早くはなかったよ。
てゆーかさ、キミたちどこからどうやってその衣装手に入れたの?
「……おはよう」
ちょっとはっきりしない頭でぼんやり考えながら、とりあえず朝の挨拶はしてみる。そうすると、おはようございますだのおはようだのおうだのはよだのおはよう雛菊だのと返ってきた。
ポリポリと頬を掻くと、にゅっとトリコの手が伸びてきた。
「トリックオアトリート」
ああ、やっぱりな。うん、覚えてたよ。そしてオアとか言いながら手を出してるってことは、私がお菓子を持っていることを知った上でのことなんだね。でもまさか全員同時に言うとは思わなかったわ。
「はい、ハッピーハロウィーン。店長に頼んで焼かせてもらったクッキーです」
「やりぃ!」
カボチャとサツマイモ風味で作ってみました。
それにしても……。なんでこんな衣装があるの?私知らないんだけど。
黒地に骨がプリントされた服を着て骸骨のお面を頭に乗せたスケルトンコマツ。包帯を巻いた上に服を着ている少々露出高めのマミートリコ。マントにタキシード、牙までバッチリ決まってるヴァンパイアココ。角と長い尻尾が妙に似合ってるデビルサニー。ちょっとぼさついた毛並と縫い目傷跡がワイルドな狼男ゼブラ。
どこで仕入れて来たのよ、どこで売ってるのよ。そのハイクオリティーな衣装。しかも、みんなが着れるようなサイズ(コマツは除く)。似合ってるから強く追及できないじゃないか。
「美味しいです雛菊さん!」
「それは、よかった」
でもそろそろ朝ご飯食べてもいいかなぁ。
朝も早よから不意打ちを食らい、ようやく朝食にありついて落ち着いた頃、インターホンが鳴った。……誰?
玄関の土間に降りると、よく知った声が聞こえた。
「雛ちゃーん。あーけーてー?」
木立先生? 何故にこんな早くから……。別に今日は元気なんだけど。首を傾げながら玄関を開ける。
「Trick or Treat」
「ぅあっ⁈」
素晴らしい発音をしたのは黒いローブのフードを被って大きな鎌を持った死神。……の、格好をした木立先生。ビックリした……。変な声でたし。
「……てか先生。仮にもお医者さんなんですから、死神の格好ってのはどうかと思います」
縁起でもない。
「あぁ、やっぱりそう思う? でもこれが一番楽そうだったから」
「ガチすぎて怖いんですけど……」
……もしかして先生、その格好でここまで来たの? だとしたらより恐ろしい。よく無事で。
「で?」
「はい?」
「お菓子は?」
……おぅふ。しまった、クッキー全部みんなにあげちゃったよ。家のどっかに何かあったかな……。
「――ないんだね?」
「いや、ちょっと待ってください。探してきますから」
「ダメ。今手元にないって時点でアウト。リンちゃん、行くよ!」
「オッケーだしっ」
先生の合図に合わせて、どこに隠れていたのか魔女の格好をしたリンちゃんが姿を現した。あっという間に二人に家の中へ押し込まれて先生に担ぎ上げられた。先生力強すぎ!
「わぁぁあ⁉」
「お菓子がないなら悪戯だよ、雛ちゃん?」
ニーッと、唯一見える片目だけで笑いながら、先生は酷く楽しそうだった。
私を担いだまま、先生は階段を上がって寝室に入った。そこでようやく地に足を付けさせてもらえた。けど、自由にはなったけど、ドアの前には先生が陣取っていてとても逃げられそうにない。
「……悪戯って、何をなさるおつもりで」
さっきまでいたリンちゃんは、この部屋には入ってこなかった。一瞬見た限りではどうやらリビングのほうへ行ったらしい。みんなを見張るのか、説明に行ったのか……。少なくとも、彼女は味方ではなさそうだ。
「なに、大したことじゃないよ。これを着て欲しいだけ」
そう言って先生はローブの下から何か取り出し私に投げた。紙袋に入っていた中身を見て、私は絶句した。
「こ、これ……。これを私に着ろと⁉」
「衣装集めるの苦労したんだよ? 特に、彼らは規格外が多くてねー。さぁさぁ、早く着替えて見せてちょーだい」
どうやらみんなの衣装の出どころは先生らしい。いつの間に……。
私は手元にあるハロウィン衣装をじっと見ていた。これを着るのは、とても抵抗がある。顔を引きつらせて固まっていたら、先生が『着替えるの手伝ってあげようか?』とさらりと言ってきた。このままじっとしていたら強引に着替えさせられそうな気がした。それはさすがに勘弁してほしいので、私は仕方なく、着替えることにした。
無言の圧力で着替えをさせられた私は先生に引っ張られてリビングの前まで来ていた。正確には、来てしまった。本当は来るつもりはなかった。必死に抵抗はしたものの無駄に終わり、私はリビングの中へ放り込まれた。
「ぅわっ」
「やぁ諸君、Happy Halloween‼」
声高らかに言う先生とは対照的に、私はこの場から逃げたい衝動にかられた。だって恥ずかしいにもほどがある。
先生が私に着るように言ったのは、言わずもがなハロウィン用の衣装だった。問題なのも無論その衣装であって。なんというかその……。露出が多い。
カボチャをイメージしたであろうオレンジ色のバルーンスカート(太腿丈)にニーハイ。付け襟とタイのセットに、カフス。ロリータ系の靴。頭には小さなシルクハットと……。そして、猫耳。ついでに尻尾。短いスカートと肩口が開いている時点で既にかなり恥ずかしいのに、何で猫耳!
先生に聞いたところによると、この衣装はケットシーなのだそうだ。悪戯というより罰ゲームの気分。
リビングに押し込まれてから、中にいた誰もなにも反応してくれないし。いっそ笑い飛ばしてくれればまだマシだったのに。ちょっと泣きたい。むしろ逃げたい。
「先生、もう着替えていいですか。この羞恥耐え難いです」
「まぁまぁ、もうちょっと待ってよ。ほらキミたちも、固まってないで何か言いなよ」
いいですよ別にぃ。早く着替えさせてくださいマジで。
「雛菊ちょーかわいいしーっ!」
バフッと勢いよく抱き付いてきたリンちゃん。
「あ、ありがと……。リンちゃんもよく似合ってるよ?」
リンちゃんは、丈が短くても似合ってるけど。私は……、なんかスースーする。
「に、似合ってます、とっても……!」
顔を赤くしているコマツ。
「おう、似合ってる」
いつもと変わらない笑顔のトリコ。
「良。すごく良」
何故か打ち震えているサニー。
「スカートは、もう少し長いほうがいいと思うけど……。でも似合ってるよ」
照れ気味のココ。
「……フン」
ガリガリと頭を掻きながらそっぽを向くゼブラ。
「ほら、みんなも似合うってさー」
「そうはいってもですね……」
ピロリーン
「あっ ちょっと先生! 写真なんて撮らないでくださいよ‼」
「あっはは。まぁいいじゃないの、今日くらい。あとで印刷して持ってくるね」
「あ、ありがとうございます」
「貰う方向性なの⁉ 止めてくださいそんなもの生産しないで!」
「大丈夫大丈夫。外部には絶対洩らさないから。どれくらいに引き伸ばそうか?」
「そうだな……」
うわーん! 味方がいない!せめて写真の印刷だけは阻止しなくては。
そして、私と先生の写メをめぐる攻防戦が始まった。バタバタとリビングの中を走り回り、お互いの息が上がってきた頃、先生が一つ提案した。『今日一日、その格好で過ごす』それで写真の印刷を止めてくれるという。幸いにも外に出掛けなければならない用事はない。家の中だけなら、まあ、いいか。いい加減疲れていた私は、妥協案としてそれを呑んだ。
そして、全員仮装の姿のままその日一日を過ごした。
……たまーにだったら、アリかもしれない。終始羞恥が付いて回るけど。
Happy Halloween‼
てゆーかさ、キミたちどこからどうやってその衣装手に入れたの?
「……おはよう」
ちょっとはっきりしない頭でぼんやり考えながら、とりあえず朝の挨拶はしてみる。そうすると、おはようございますだのおはようだのおうだのはよだのおはよう雛菊だのと返ってきた。
ポリポリと頬を掻くと、にゅっとトリコの手が伸びてきた。
「トリックオアトリート」
ああ、やっぱりな。うん、覚えてたよ。そしてオアとか言いながら手を出してるってことは、私がお菓子を持っていることを知った上でのことなんだね。でもまさか全員同時に言うとは思わなかったわ。
「はい、ハッピーハロウィーン。店長に頼んで焼かせてもらったクッキーです」
「やりぃ!」
カボチャとサツマイモ風味で作ってみました。
それにしても……。なんでこんな衣装があるの?私知らないんだけど。
黒地に骨がプリントされた服を着て骸骨のお面を頭に乗せたスケルトンコマツ。包帯を巻いた上に服を着ている少々露出高めのマミートリコ。マントにタキシード、牙までバッチリ決まってるヴァンパイアココ。角と長い尻尾が妙に似合ってるデビルサニー。ちょっとぼさついた毛並と縫い目傷跡がワイルドな狼男ゼブラ。
どこで仕入れて来たのよ、どこで売ってるのよ。そのハイクオリティーな衣装。しかも、みんなが着れるようなサイズ(コマツは除く)。似合ってるから強く追及できないじゃないか。
「美味しいです雛菊さん!」
「それは、よかった」
でもそろそろ朝ご飯食べてもいいかなぁ。
朝も早よから不意打ちを食らい、ようやく朝食にありついて落ち着いた頃、インターホンが鳴った。……誰?
玄関の土間に降りると、よく知った声が聞こえた。
「雛ちゃーん。あーけーてー?」
木立先生? 何故にこんな早くから……。別に今日は元気なんだけど。首を傾げながら玄関を開ける。
「Trick or Treat」
「ぅあっ⁈」
素晴らしい発音をしたのは黒いローブのフードを被って大きな鎌を持った死神。……の、格好をした木立先生。ビックリした……。変な声でたし。
「……てか先生。仮にもお医者さんなんですから、死神の格好ってのはどうかと思います」
縁起でもない。
「あぁ、やっぱりそう思う? でもこれが一番楽そうだったから」
「ガチすぎて怖いんですけど……」
……もしかして先生、その格好でここまで来たの? だとしたらより恐ろしい。よく無事で。
「で?」
「はい?」
「お菓子は?」
……おぅふ。しまった、クッキー全部みんなにあげちゃったよ。家のどっかに何かあったかな……。
「――ないんだね?」
「いや、ちょっと待ってください。探してきますから」
「ダメ。今手元にないって時点でアウト。リンちゃん、行くよ!」
「オッケーだしっ」
先生の合図に合わせて、どこに隠れていたのか魔女の格好をしたリンちゃんが姿を現した。あっという間に二人に家の中へ押し込まれて先生に担ぎ上げられた。先生力強すぎ!
「わぁぁあ⁉」
「お菓子がないなら悪戯だよ、雛ちゃん?」
ニーッと、唯一見える片目だけで笑いながら、先生は酷く楽しそうだった。
私を担いだまま、先生は階段を上がって寝室に入った。そこでようやく地に足を付けさせてもらえた。けど、自由にはなったけど、ドアの前には先生が陣取っていてとても逃げられそうにない。
「……悪戯って、何をなさるおつもりで」
さっきまでいたリンちゃんは、この部屋には入ってこなかった。一瞬見た限りではどうやらリビングのほうへ行ったらしい。みんなを見張るのか、説明に行ったのか……。少なくとも、彼女は味方ではなさそうだ。
「なに、大したことじゃないよ。これを着て欲しいだけ」
そう言って先生はローブの下から何か取り出し私に投げた。紙袋に入っていた中身を見て、私は絶句した。
「こ、これ……。これを私に着ろと⁉」
「衣装集めるの苦労したんだよ? 特に、彼らは規格外が多くてねー。さぁさぁ、早く着替えて見せてちょーだい」
どうやらみんなの衣装の出どころは先生らしい。いつの間に……。
私は手元にあるハロウィン衣装をじっと見ていた。これを着るのは、とても抵抗がある。顔を引きつらせて固まっていたら、先生が『着替えるの手伝ってあげようか?』とさらりと言ってきた。このままじっとしていたら強引に着替えさせられそうな気がした。それはさすがに勘弁してほしいので、私は仕方なく、着替えることにした。
無言の圧力で着替えをさせられた私は先生に引っ張られてリビングの前まで来ていた。正確には、来てしまった。本当は来るつもりはなかった。必死に抵抗はしたものの無駄に終わり、私はリビングの中へ放り込まれた。
「ぅわっ」
「やぁ諸君、Happy Halloween‼」
声高らかに言う先生とは対照的に、私はこの場から逃げたい衝動にかられた。だって恥ずかしいにもほどがある。
先生が私に着るように言ったのは、言わずもがなハロウィン用の衣装だった。問題なのも無論その衣装であって。なんというかその……。露出が多い。
カボチャをイメージしたであろうオレンジ色のバルーンスカート(太腿丈)にニーハイ。付け襟とタイのセットに、カフス。ロリータ系の靴。頭には小さなシルクハットと……。そして、猫耳。ついでに尻尾。短いスカートと肩口が開いている時点で既にかなり恥ずかしいのに、何で猫耳!
先生に聞いたところによると、この衣装はケットシーなのだそうだ。悪戯というより罰ゲームの気分。
リビングに押し込まれてから、中にいた誰もなにも反応してくれないし。いっそ笑い飛ばしてくれればまだマシだったのに。ちょっと泣きたい。むしろ逃げたい。
「先生、もう着替えていいですか。この羞恥耐え難いです」
「まぁまぁ、もうちょっと待ってよ。ほらキミたちも、固まってないで何か言いなよ」
いいですよ別にぃ。早く着替えさせてくださいマジで。
「雛菊ちょーかわいいしーっ!」
バフッと勢いよく抱き付いてきたリンちゃん。
「あ、ありがと……。リンちゃんもよく似合ってるよ?」
リンちゃんは、丈が短くても似合ってるけど。私は……、なんかスースーする。
「に、似合ってます、とっても……!」
顔を赤くしているコマツ。
「おう、似合ってる」
いつもと変わらない笑顔のトリコ。
「良。すごく良」
何故か打ち震えているサニー。
「スカートは、もう少し長いほうがいいと思うけど……。でも似合ってるよ」
照れ気味のココ。
「……フン」
ガリガリと頭を掻きながらそっぽを向くゼブラ。
「ほら、みんなも似合うってさー」
「そうはいってもですね……」
ピロリーン
「あっ ちょっと先生! 写真なんて撮らないでくださいよ‼」
「あっはは。まぁいいじゃないの、今日くらい。あとで印刷して持ってくるね」
「あ、ありがとうございます」
「貰う方向性なの⁉ 止めてくださいそんなもの生産しないで!」
「大丈夫大丈夫。外部には絶対洩らさないから。どれくらいに引き伸ばそうか?」
「そうだな……」
うわーん! 味方がいない!せめて写真の印刷だけは阻止しなくては。
そして、私と先生の写メをめぐる攻防戦が始まった。バタバタとリビングの中を走り回り、お互いの息が上がってきた頃、先生が一つ提案した。『今日一日、その格好で過ごす』それで写真の印刷を止めてくれるという。幸いにも外に出掛けなければならない用事はない。家の中だけなら、まあ、いいか。いい加減疲れていた私は、妥協案としてそれを呑んだ。
そして、全員仮装の姿のままその日一日を過ごした。
……たまーにだったら、アリかもしれない。終始羞恥が付いて回るけど。
Happy Halloween‼