明かされました
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左腕を吊っての生活が一晩すぎた。みんなが色々と世話を焼いてくれるので、特に不自由は感じなかった。嬉しいやらありがたいやら恥ずかしいやら……。
必要以上に動けないから、ほとんど一日ソファに座ってみんなと他愛もない話をしたりしていた。そのせいで少ししゃべり疲れた感がある。私にとっては嬉しいことだけど。
コマツが片手でも食べられるように用意してくれたご飯を食べて、ソファに身を沈める。そしてまたみんなと話していると、不意にゼブラが玄関のほうを見た。いや、睨んだ、と言った方が正しいかもしれない。
「チッ。来やがった」
来た?誰が。あ、先生かな。
しばらくして、玄関のチャイムが鳴った。
「ボク、出ますね」
パタパタとコマツが足早に玄関へ向かう。玄関でのやり取りはよく聞き取れないけど、やっぱり木立先生らしかった。……にしては、なんかみんな嫌そう。顔が引きつってる?
「やっほー雛ちゃん。調子はどう?」
そしておはよう諸君、と言ってにゅっと顔を出した先生。不調ではないことを伝えると、持っていた鞄を開けてごそごそ何か準備し始めた。
「あぁそうだ。お客さん来てるよ」
「お客さん……?」
手を止めることなく先生が告げる。誰だろう? コマツが戻ってこないのはそのせいかな。
「雛菊! 大丈夫⁉」
すごい勢いでリビングに駆けこんできた『お客さん』。
「リンちゃん⁉」
なんとリンちゃんでした。すごく久しぶり、てかあの日以来? なんであれ、どうして家に?
「ワタシが来た時に彼女、家の前でウロウロしてたんだけど、 雛ちゃんのこと知ってるみたいだったからさ。案内したんだけど。」
「そうだったんですか……。でも、なんでここに?」
「雛菊がケガしたって聞いて急いで来たんだし! でも、住所があってるか分からなくなって困ってたらあの人が。」
そっか、迷子になりかけてたんだ。ん? 私が怪我したこと、誰から聞いたんだろ。
「こらリン! いきなり来て騒いでんじゃねーし!」
「うるせーし! お兄ちゃんこそ、もっとちゃんと教えてよね!」
……え?『お兄ちゃん』?
突然言い合いを始めたサニーとリンちゃん。そこに出てきた単語に、私は少し困惑した。
「あ……。リンちゃんが探してたお兄さんって、サニーのことだったの?」
「そう。お店で雛菊に付いてた毛で分かったの」
まじでか。うん、確かに雰囲気似てる。てことは、リンちゃんも猫だったりするんだろうか。
「――あれ? 鉄ちゃんは?」
先生が思い出したように声を出した。鉄ちゃん? 誰ですそれ。
「お―――い鉄ちゃん。早くおいでよー」
先生は玄関のほうに向かって呼びかけた。コマツもまだ戻ってこないし、何してるんだろう。
「いやぁ、すいません。出入口のチェックしてたら夢中になっちゃって」
「人様の家での自由すぎる行動は感心しないよ?」
先生の呼びかけから少しして、『鉄ちゃん』なる人物の正体が分かった。あのリーゼント、見紛うはずがない。動物病院の先生だ。そうか、『動物病院の先生』って認識してたから、私彼の名前を知らなかった。
彼に続いて、コマツもようやく戻ってきた。表情は苦笑気味。
えーと、なんだかあっという間にリビングがカオスな状況になってきたな。リンちゃんはトリコの腕に抱き付きながらまだサニーと何か揉めてるし、ゼブラは“鉄ちゃん”来てからより一層睨んでるし。ココとコマツはもうそっとしておこうと思ってるのかちょっと避難してるし。そんな中でも気にせず作業してる木立先生はさすがだと思う。
木立先生から簡単に体調をチェックされた後、寝室で身体を拭いてもらった。リンちゃんに手伝ってもらって着替えもした。さっぱりした。
それからリビングに戻って、何故鉄平先生が家に居るのかを聞いた。彼の名前は木立先生が教えてくれた。
「オレも関係者だからさぁ。説明しようと思ってこうして来たわけ。ホントはもっと早く話そうかとも思ったんだけど、色々タイミングは合わないしそもそもどこまで話していいか分かんないし。何だかんだグズグズしてる内にあんなことになっちゃって。早く話してれば回避できたかもしれないと思うと責任感じちゃうよね。でも超特殊な事情じゃん? 君に拒絶されちゃったら元も子もないし。まぁとにかく今はこうして上手くいってるわけだから結果オーライってことで」
そこまでいったところで、彼の背後に立った木立先生がスリッパで頭を引っ叩いた。スパーンッといい音がした。
「オーライじゃないよ全く。ワタシ個人としては雛ちゃんが危険な目に遭ったって時点でアウトだよ」
「だからホントに申し訳なかったって。自ら出向いて来てるし彼女の疑問には出来るだけ答えるつもりですからそのスリッパ降ろしてくださいよ」
鉄平先生の返事に納得したのか、木立先生はスリッパを履きなおした。そして、私から先生への質問タイムが始まった。
何でも聞いて?答えられないこともあるかもしれないけど。そう言われたけど、急に言われてそんなに質問出てくるかな……。
「えーと……。私は彼らと、これからも一緒に居てもいいんでしょうか」
「いいよ。むしろ、ここに置いてくれるんならこっちとしてもありがたい」
ああ良かった。お墨付きは多いほうがいい。
「『関係者』というのは、どういうことですか?」
「オレも一緒でただの人間じゃないってこと。まぁオレの場合、猫じゃないんだけどさ」
「インコかオウムの類ですか。」
「なんで分かったの」
え、マジで?冗談半分だったのに。
「――みんなは、この先は人の姿のままですか。それとも、猫になれたりしますか」
「それは本人たち次第だろうね。コツさえつかめば自由にどっちにもなれるだろうけど」
そっか、それもそうか。
え――――と……。あとは……。うー……ん。
「……また後日、聞いてもいいですか?」
「ああ。電話でも店のほうに来た時でも、いつでも良いぜ」
ああ、ちょっとまた頭がいっぱいいっぱいかも。案外容量ないな、私の脳。
よく分からないことは多いけど、私は別にそれでいい。そもそも、完全に理解していることがどれほどあろうか。大体の物事は“なんとなく”でどうにかなったりする。だからそれでいい。
リンちゃんは、今晩泊めて欲しいそうだ。だったら今日はたくさん話そうか。そんな風に考えた。
分からないことをいつまでも悩むより、今は分かることを分かっていればいいような気がする。
必要以上に動けないから、ほとんど一日ソファに座ってみんなと他愛もない話をしたりしていた。そのせいで少ししゃべり疲れた感がある。私にとっては嬉しいことだけど。
コマツが片手でも食べられるように用意してくれたご飯を食べて、ソファに身を沈める。そしてまたみんなと話していると、不意にゼブラが玄関のほうを見た。いや、睨んだ、と言った方が正しいかもしれない。
「チッ。来やがった」
来た?誰が。あ、先生かな。
しばらくして、玄関のチャイムが鳴った。
「ボク、出ますね」
パタパタとコマツが足早に玄関へ向かう。玄関でのやり取りはよく聞き取れないけど、やっぱり木立先生らしかった。……にしては、なんかみんな嫌そう。顔が引きつってる?
「やっほー雛ちゃん。調子はどう?」
そしておはよう諸君、と言ってにゅっと顔を出した先生。不調ではないことを伝えると、持っていた鞄を開けてごそごそ何か準備し始めた。
「あぁそうだ。お客さん来てるよ」
「お客さん……?」
手を止めることなく先生が告げる。誰だろう? コマツが戻ってこないのはそのせいかな。
「雛菊! 大丈夫⁉」
すごい勢いでリビングに駆けこんできた『お客さん』。
「リンちゃん⁉」
なんとリンちゃんでした。すごく久しぶり、てかあの日以来? なんであれ、どうして家に?
「ワタシが来た時に彼女、家の前でウロウロしてたんだけど、 雛ちゃんのこと知ってるみたいだったからさ。案内したんだけど。」
「そうだったんですか……。でも、なんでここに?」
「雛菊がケガしたって聞いて急いで来たんだし! でも、住所があってるか分からなくなって困ってたらあの人が。」
そっか、迷子になりかけてたんだ。ん? 私が怪我したこと、誰から聞いたんだろ。
「こらリン! いきなり来て騒いでんじゃねーし!」
「うるせーし! お兄ちゃんこそ、もっとちゃんと教えてよね!」
……え?『お兄ちゃん』?
突然言い合いを始めたサニーとリンちゃん。そこに出てきた単語に、私は少し困惑した。
「あ……。リンちゃんが探してたお兄さんって、サニーのことだったの?」
「そう。お店で雛菊に付いてた毛で分かったの」
まじでか。うん、確かに雰囲気似てる。てことは、リンちゃんも猫だったりするんだろうか。
「――あれ? 鉄ちゃんは?」
先生が思い出したように声を出した。鉄ちゃん? 誰ですそれ。
「お―――い鉄ちゃん。早くおいでよー」
先生は玄関のほうに向かって呼びかけた。コマツもまだ戻ってこないし、何してるんだろう。
「いやぁ、すいません。出入口のチェックしてたら夢中になっちゃって」
「人様の家での自由すぎる行動は感心しないよ?」
先生の呼びかけから少しして、『鉄ちゃん』なる人物の正体が分かった。あのリーゼント、見紛うはずがない。動物病院の先生だ。そうか、『動物病院の先生』って認識してたから、私彼の名前を知らなかった。
彼に続いて、コマツもようやく戻ってきた。表情は苦笑気味。
えーと、なんだかあっという間にリビングがカオスな状況になってきたな。リンちゃんはトリコの腕に抱き付きながらまだサニーと何か揉めてるし、ゼブラは“鉄ちゃん”来てからより一層睨んでるし。ココとコマツはもうそっとしておこうと思ってるのかちょっと避難してるし。そんな中でも気にせず作業してる木立先生はさすがだと思う。
木立先生から簡単に体調をチェックされた後、寝室で身体を拭いてもらった。リンちゃんに手伝ってもらって着替えもした。さっぱりした。
それからリビングに戻って、何故鉄平先生が家に居るのかを聞いた。彼の名前は木立先生が教えてくれた。
「オレも関係者だからさぁ。説明しようと思ってこうして来たわけ。ホントはもっと早く話そうかとも思ったんだけど、色々タイミングは合わないしそもそもどこまで話していいか分かんないし。何だかんだグズグズしてる内にあんなことになっちゃって。早く話してれば回避できたかもしれないと思うと責任感じちゃうよね。でも超特殊な事情じゃん? 君に拒絶されちゃったら元も子もないし。まぁとにかく今はこうして上手くいってるわけだから結果オーライってことで」
そこまでいったところで、彼の背後に立った木立先生がスリッパで頭を引っ叩いた。スパーンッといい音がした。
「オーライじゃないよ全く。ワタシ個人としては雛ちゃんが危険な目に遭ったって時点でアウトだよ」
「だからホントに申し訳なかったって。自ら出向いて来てるし彼女の疑問には出来るだけ答えるつもりですからそのスリッパ降ろしてくださいよ」
鉄平先生の返事に納得したのか、木立先生はスリッパを履きなおした。そして、私から先生への質問タイムが始まった。
何でも聞いて?答えられないこともあるかもしれないけど。そう言われたけど、急に言われてそんなに質問出てくるかな……。
「えーと……。私は彼らと、これからも一緒に居てもいいんでしょうか」
「いいよ。むしろ、ここに置いてくれるんならこっちとしてもありがたい」
ああ良かった。お墨付きは多いほうがいい。
「『関係者』というのは、どういうことですか?」
「オレも一緒でただの人間じゃないってこと。まぁオレの場合、猫じゃないんだけどさ」
「インコかオウムの類ですか。」
「なんで分かったの」
え、マジで?冗談半分だったのに。
「――みんなは、この先は人の姿のままですか。それとも、猫になれたりしますか」
「それは本人たち次第だろうね。コツさえつかめば自由にどっちにもなれるだろうけど」
そっか、それもそうか。
え――――と……。あとは……。うー……ん。
「……また後日、聞いてもいいですか?」
「ああ。電話でも店のほうに来た時でも、いつでも良いぜ」
ああ、ちょっとまた頭がいっぱいいっぱいかも。案外容量ないな、私の脳。
よく分からないことは多いけど、私は別にそれでいい。そもそも、完全に理解していることがどれほどあろうか。大体の物事は“なんとなく”でどうにかなったりする。だからそれでいい。
リンちゃんは、今晩泊めて欲しいそうだ。だったら今日はたくさん話そうか。そんな風に考えた。
分からないことをいつまでも悩むより、今は分かることを分かっていればいいような気がする。