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その日はいつも通り仕事を終えて、いつも通り買い物を済ませ、いつも通り帰路を歩いていた。いつもと違ったのは、近所の公園で猫が喧嘩するような声が聞こえたこと。
「フギャーッ! ニャァァアア‼」
「シャーッ」
ナワバリ争いの類だろうと思った。
日暮れ前の公園には、もう人は居なかった。今の時期は日が長いが、子供達はもう家に帰るべき時間だ。そんな静寂の中に響く声たるや、尋常ではなかった。声から察するに、複数の猫が居るようだが、放っておくと怪我をするものが出そうな様子だ。だが、人間が口出し(?)しても良いものだろうか。猫には猫の事情があるだろうし、部外者の人間が介入するのは、どうかとも思った。けれども、どうも、異常な感じがした。
騒ぎの聞こえる方へ近づくと、十匹ほどの猫が居た。猫たちは一様に同じ方を向いている。その先には、隅に追い詰められてしまったらしい猫が一匹。
この公園は、子どもが使うボールが外へ出にくいようにと、30㎝ほどのコンクリートの基礎の上に柵が立っている。公園の周りを囲んでいるその柵の隅に、脅えた様子の猫。柵を越えて逃げてしまえばいいのにと思ったが、それが出来ない理由がすぐに分かった。その猫は既に、足に傷を負っていた。血が滲んでいるのが確認できる。
ふむ、とすると、この猫たちは負傷している一匹相手に、こんな大勢でよってたかっていぢめてんのか。
あいわかった。介入します。
「こらお前ら」
出せる限りのドスの利いた声を出して、周りの猫を威嚇する。
「一体何が気に入らないのかしらねぇが。喧嘩なら一対一でヤレやコラァ‼」
声を張り上げて、偶々持っていたペットボトルの水を撒き散らした。猫たちはクモの子を散らしたように逃げていく。
うーん、ちょっとやりすぎ? 別に動物虐待じゃないよ、違うよ。動物は寧ろ好きだもの。等と自分を正当化して(酷い人間だ)、震えている一匹に近づく。手を出した手前、放っておくわけにはいかない。
「ごめんね。ビックリしたね。もう大丈夫だよ」
なるべく刺激しないように、少し離れた位置にしゃがんだ。まだ脅えている猫は、より隅の方で縮こまってしまった。
「大丈夫。怖くないよ」
生憎と、動物は好きだけれど、知識の方は人並みにしかない。一体どうすれば目の前の猫が落ち着いてくれるのか、分からない。猫との接し方なんて、知らない。兎に角、足の怪我を何とかしてあげなければ。そればかり考えていた。下手に傷を舐めたりして膿んでしまっては大変だ。
縮こまるばかりで威嚇はしてこない。あまり喧嘩に強いタイプではないらしい。なんだか今度は私がいぢめてるみたいだな……。このままでは埒があかないので、意を決して手を伸ばした。
「~~~~ッ」
カブッ
「いっ」
親指を思い切り噛まれた。
「~~~~ったくない……ッ」
涙目でそんなこと言っても説得力の欠片もないのは承知だ。でも今は、この猫の方が痛いはずだ。
大丈夫、手を噛んだって事は、身を守る本能はちゃんと働いてる。大丈夫。
何やら、噛んだ猫の方が困惑した顔をしているのを見て、少し痛みが和らいだ。噛まれた親指はそのままに、残りの指でそっと猫の顔に触れた。
「落ち着いて? キミを助けたいだけなんだ」
果たして言葉が通じるのかは不明だが、敵意がないことが伝わればいい。
「・・・・・・・・」
猫はこちらを見上げながら、そっと口を離し、手を舐めてくれた。これは『ごめんなさい』と受け取っても?
「こんな傷大したことないよ。ありがとう」
なんだか某ジ○リ映画みたいな展開になってしまった。とりあえず、この猫が優しいコだというのは分かった。
それにしても、近くで見たら結構小さな傷がいっぱい……。目立つのは、左前足の付け根と、右後ろ足。毛が赤黒く染まってる。
「……よし」
多分イヤだろうけど、仕方ない、我慢して貰おう。
不思議そうにこちらを見ている猫を横目に、鞄を漁る。そしてズルズルとタオルを引っ張り出した。洗ったばかりだし、今日は使ってないから、割と清潔……だと思う……。タオルで猫をそっとくるんで、抱えた。暴れられたりして、余計な傷を作りたくなかったものだから。これならないよりマシだろうか。
所詮は自己満足なのだろうが、まあよしとしよう。
猫が意外にも大人しくしてくれている内に、と動物病院までの地図を記憶から探った。この時間でもまだやってるかなぁ? そんな言葉を猫に掛けながら、自宅へ向けていた行き先を変更した。
「フギャーッ! ニャァァアア‼」
「シャーッ」
ナワバリ争いの類だろうと思った。
日暮れ前の公園には、もう人は居なかった。今の時期は日が長いが、子供達はもう家に帰るべき時間だ。そんな静寂の中に響く声たるや、尋常ではなかった。声から察するに、複数の猫が居るようだが、放っておくと怪我をするものが出そうな様子だ。だが、人間が口出し(?)しても良いものだろうか。猫には猫の事情があるだろうし、部外者の人間が介入するのは、どうかとも思った。けれども、どうも、異常な感じがした。
騒ぎの聞こえる方へ近づくと、十匹ほどの猫が居た。猫たちは一様に同じ方を向いている。その先には、隅に追い詰められてしまったらしい猫が一匹。
この公園は、子どもが使うボールが外へ出にくいようにと、30㎝ほどのコンクリートの基礎の上に柵が立っている。公園の周りを囲んでいるその柵の隅に、脅えた様子の猫。柵を越えて逃げてしまえばいいのにと思ったが、それが出来ない理由がすぐに分かった。その猫は既に、足に傷を負っていた。血が滲んでいるのが確認できる。
ふむ、とすると、この猫たちは負傷している一匹相手に、こんな大勢でよってたかっていぢめてんのか。
あいわかった。介入します。
「こらお前ら」
出せる限りのドスの利いた声を出して、周りの猫を威嚇する。
「一体何が気に入らないのかしらねぇが。喧嘩なら一対一でヤレやコラァ‼」
声を張り上げて、偶々持っていたペットボトルの水を撒き散らした。猫たちはクモの子を散らしたように逃げていく。
うーん、ちょっとやりすぎ? 別に動物虐待じゃないよ、違うよ。動物は寧ろ好きだもの。等と自分を正当化して(酷い人間だ)、震えている一匹に近づく。手を出した手前、放っておくわけにはいかない。
「ごめんね。ビックリしたね。もう大丈夫だよ」
なるべく刺激しないように、少し離れた位置にしゃがんだ。まだ脅えている猫は、より隅の方で縮こまってしまった。
「大丈夫。怖くないよ」
生憎と、動物は好きだけれど、知識の方は人並みにしかない。一体どうすれば目の前の猫が落ち着いてくれるのか、分からない。猫との接し方なんて、知らない。兎に角、足の怪我を何とかしてあげなければ。そればかり考えていた。下手に傷を舐めたりして膿んでしまっては大変だ。
縮こまるばかりで威嚇はしてこない。あまり喧嘩に強いタイプではないらしい。なんだか今度は私がいぢめてるみたいだな……。このままでは埒があかないので、意を決して手を伸ばした。
「~~~~ッ」
カブッ
「いっ」
親指を思い切り噛まれた。
「~~~~ったくない……ッ」
涙目でそんなこと言っても説得力の欠片もないのは承知だ。でも今は、この猫の方が痛いはずだ。
大丈夫、手を噛んだって事は、身を守る本能はちゃんと働いてる。大丈夫。
何やら、噛んだ猫の方が困惑した顔をしているのを見て、少し痛みが和らいだ。噛まれた親指はそのままに、残りの指でそっと猫の顔に触れた。
「落ち着いて? キミを助けたいだけなんだ」
果たして言葉が通じるのかは不明だが、敵意がないことが伝わればいい。
「・・・・・・・・」
猫はこちらを見上げながら、そっと口を離し、手を舐めてくれた。これは『ごめんなさい』と受け取っても?
「こんな傷大したことないよ。ありがとう」
なんだか某ジ○リ映画みたいな展開になってしまった。とりあえず、この猫が優しいコだというのは分かった。
それにしても、近くで見たら結構小さな傷がいっぱい……。目立つのは、左前足の付け根と、右後ろ足。毛が赤黒く染まってる。
「……よし」
多分イヤだろうけど、仕方ない、我慢して貰おう。
不思議そうにこちらを見ている猫を横目に、鞄を漁る。そしてズルズルとタオルを引っ張り出した。洗ったばかりだし、今日は使ってないから、割と清潔……だと思う……。タオルで猫をそっとくるんで、抱えた。暴れられたりして、余計な傷を作りたくなかったものだから。これならないよりマシだろうか。
所詮は自己満足なのだろうが、まあよしとしよう。
猫が意外にも大人しくしてくれている内に、と動物病院までの地図を記憶から探った。この時間でもまだやってるかなぁ? そんな言葉を猫に掛けながら、自宅へ向けていた行き先を変更した。