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メインステージで準備が進められていた太鼓の演奏。物語をベースに作られた曲が演奏される。毎年恒例のイベントだ。でもここ数年は、見てない。
ステージの正面で、それでいて一番遠い場所に立って見ることにした。しばらくして、演奏が始まる。司会者が曲について説明をした。
「――この演目は、この地に古くから伝わる民話を元に作曲されました」
ずっと、この演奏を聞かなかったのは、いや、聞けなかったのは。この地に、人には無いはずの力を持って生まれ、そのために、親と家を失った子供がいた。子供は、自分を産んでくれた親のためにも、その力を抱えて生きていこうと決める。たった一人で、生きていくことを決める。そんな話。それが、おこがましくも自分とダブって、聞けなくなってしまった。 私の場合、両親は健在だ。民話がどうなのかは、細かいことは、正直よく知らないけど。けれど、会えないという点では、同じだと思う。両親とは、ずっと会っていない。私が本気で会おうと思えば、会えるのかもしれない。でも両親のほうから会いに来てくれることは、滅多にない。愛されていないわけでは、ないのだそうだけど。そろそろ、顔を鮮明に思い出せなくなってきた。それが、たまらなく悲しい。
私はここで、この町で、生きていくと決めた。両親に余計な心配を掛けたくないから。たとえ、一人でも。……そう、決めたはずなのに。私の心は、それに耐えられるほど強くなかったみたいで。『一人』でいることが耐えられなくなると、どういうわけか体調を崩す。それが『発作』で、『持病』。私は、話の子供のようにはなれなかった。
そんなことを思いながら太鼓の音を聞いていると、バッグが大きく揺れてハッとした。中を見ると、ゼブラがもぞもぞ動いていた。
「……あ、そっか。」
ゼブラは、特に耳がいいんだっけ。きっとこの太鼓の音がうるさいんだ。
「ごめんねゼブラ。気付かなかったや……。離れようか」
そう声を掛けると、さらにバタバタと暴れだした。え、それも嫌なの?
「ここにいろって? でも、うるさいんでしょ?」
「ヴヴ……っ」
……そうか……。理由は分からないけど、ここにいたいと言うなら、いようか。でも。
「――おいで。」
ゼブラをバッグから出して、片腕で抱えた。そして、気休めでしかないだろうけど、ゼブラの耳をそっと塞いだ。暴れないところを見ると、嫌がってはいないようだ。大丈夫なのかな。
そうこうしている間も、当然演奏は続いているわけで。いつのまにか曲も終盤になっていた。この話は、子供は最後にはこの土地を守る神になったとして終わっている。その子は、最後まで一人だった。少しだけ人と違う環境に生まれただけで、一人で生きることになった。幼いうちにそれを知って、一体何を思ったんだろう。そう考えるだけで、目元に力が入る。
ベシッ
「!」
何かに腕を叩かれたと思って見てみると、ゼブラの尻尾だった。
「にゃぁ、みゃぁ」
「ニャーァ」
「ニャァアッ」
「にゃーぅ」
バッグの中で、みんなが何がを訴えるように鳴いている。それを見ていたら、なんだかフッと力が抜けた。そうだよ、私には、みんながいるじゃないか。たった一人で、生きてるわけじゃない。強くないから、誰かに支えられながら生きよう。それでいいじゃないか。そうだ、きっと、今までは無理をし過ぎたんだ。頑張らなきゃ、自立しなきゃと、必死になりすぎた。もう少し、力抜いても良かったんだね。今みたいに、幸せを噛みしめられるくらい、心に余裕を持ってれば良かったんだ。
「……うん。私は、ひとりじゃないもんね」
今はもう、『一人を寂しがる』必要なんてないね。
演奏が終わり、辺りから拍手が起こる。そしてそれを待ち構えていたように、みんなわらわらと肩や頭の上に登ってきた。コマツとココはバッグの中から顔を出してこっちを向いているだけだけど。他の人から見たら、何の曲芸だと思われそう。でも私にとっては嬉しいことこの上ない。
まるで、みんな私の感情の浮き沈みや少しの変化を感じ取っているみたい。動物って、大体そうなのかな。それとも、私が勝手にそう思ってるだけ? ……まあ、どっちでもいいや。私を元気付けてくれてることには変わりないわけだし。
「―――そろそろ、出来てるかなぁ」
戻ろうか。そう言うと、今度は誰からの抗議もなかった。
――勝手に自己投影してごめんなさい。私は、みんなと一緒に生きていくことにします。ステージ前を立ち去る時、そう、心の中で謝った。
「あ、おかえりなさい。今丁度焼き上がったところですよー。――何か楽しいことありました?」
屋台に戻るとそう声を掛けられた。どうしてかと尋ねると、『なんとなく、嬉しそうな顔してたから』だそう。
「あ、違ってたらごめんなさい。てっきりそう見えたもので」
「ううん。その通り、かな。ちょっと思うことがあって」
「そうでしたか。ところで、その状況には突っ込んだ方がいいですか?」
たこ焼きと代金をやり取りしながら、そんなことを言われた。『その状況』とはどう考えても、頭と肩に猫を乗せてる状況だろう。それ以外考えられない。
「そっとしておいてもらえると大変ありがたいです」
「了解」
そうしてお互いくすくす笑いあった。
ベンチを借りてたこ焼きを頂く。きっと、家までなんて待ってくれない。ほら、もうすでに身、乗り出してるし。
「待って待って! あっついから!」
たこ焼きは熱々を食べるのが一番美味しいのは知ってるけども、火傷をさせるわけにはいかないので一度割って冷ます。早く食べたくてそわそわしている二人を押さえながらだから大変。でも、これがまた楽しかったりするんだなぁ!騒ぎながらみんなで食べたたこ焼き(たこ、ネギ、トッピングなし)は、格別美味しゅうございました。なんつって。
ステージの正面で、それでいて一番遠い場所に立って見ることにした。しばらくして、演奏が始まる。司会者が曲について説明をした。
「――この演目は、この地に古くから伝わる民話を元に作曲されました」
ずっと、この演奏を聞かなかったのは、いや、聞けなかったのは。この地に、人には無いはずの力を持って生まれ、そのために、親と家を失った子供がいた。子供は、自分を産んでくれた親のためにも、その力を抱えて生きていこうと決める。たった一人で、生きていくことを決める。そんな話。それが、おこがましくも自分とダブって、聞けなくなってしまった。 私の場合、両親は健在だ。民話がどうなのかは、細かいことは、正直よく知らないけど。けれど、会えないという点では、同じだと思う。両親とは、ずっと会っていない。私が本気で会おうと思えば、会えるのかもしれない。でも両親のほうから会いに来てくれることは、滅多にない。愛されていないわけでは、ないのだそうだけど。そろそろ、顔を鮮明に思い出せなくなってきた。それが、たまらなく悲しい。
私はここで、この町で、生きていくと決めた。両親に余計な心配を掛けたくないから。たとえ、一人でも。……そう、決めたはずなのに。私の心は、それに耐えられるほど強くなかったみたいで。『一人』でいることが耐えられなくなると、どういうわけか体調を崩す。それが『発作』で、『持病』。私は、話の子供のようにはなれなかった。
そんなことを思いながら太鼓の音を聞いていると、バッグが大きく揺れてハッとした。中を見ると、ゼブラがもぞもぞ動いていた。
「……あ、そっか。」
ゼブラは、特に耳がいいんだっけ。きっとこの太鼓の音がうるさいんだ。
「ごめんねゼブラ。気付かなかったや……。離れようか」
そう声を掛けると、さらにバタバタと暴れだした。え、それも嫌なの?
「ここにいろって? でも、うるさいんでしょ?」
「ヴヴ……っ」
……そうか……。理由は分からないけど、ここにいたいと言うなら、いようか。でも。
「――おいで。」
ゼブラをバッグから出して、片腕で抱えた。そして、気休めでしかないだろうけど、ゼブラの耳をそっと塞いだ。暴れないところを見ると、嫌がってはいないようだ。大丈夫なのかな。
そうこうしている間も、当然演奏は続いているわけで。いつのまにか曲も終盤になっていた。この話は、子供は最後にはこの土地を守る神になったとして終わっている。その子は、最後まで一人だった。少しだけ人と違う環境に生まれただけで、一人で生きることになった。幼いうちにそれを知って、一体何を思ったんだろう。そう考えるだけで、目元に力が入る。
ベシッ
「!」
何かに腕を叩かれたと思って見てみると、ゼブラの尻尾だった。
「にゃぁ、みゃぁ」
「ニャーァ」
「ニャァアッ」
「にゃーぅ」
バッグの中で、みんなが何がを訴えるように鳴いている。それを見ていたら、なんだかフッと力が抜けた。そうだよ、私には、みんながいるじゃないか。たった一人で、生きてるわけじゃない。強くないから、誰かに支えられながら生きよう。それでいいじゃないか。そうだ、きっと、今までは無理をし過ぎたんだ。頑張らなきゃ、自立しなきゃと、必死になりすぎた。もう少し、力抜いても良かったんだね。今みたいに、幸せを噛みしめられるくらい、心に余裕を持ってれば良かったんだ。
「……うん。私は、ひとりじゃないもんね」
今はもう、『一人を寂しがる』必要なんてないね。
演奏が終わり、辺りから拍手が起こる。そしてそれを待ち構えていたように、みんなわらわらと肩や頭の上に登ってきた。コマツとココはバッグの中から顔を出してこっちを向いているだけだけど。他の人から見たら、何の曲芸だと思われそう。でも私にとっては嬉しいことこの上ない。
まるで、みんな私の感情の浮き沈みや少しの変化を感じ取っているみたい。動物って、大体そうなのかな。それとも、私が勝手にそう思ってるだけ? ……まあ、どっちでもいいや。私を元気付けてくれてることには変わりないわけだし。
「―――そろそろ、出来てるかなぁ」
戻ろうか。そう言うと、今度は誰からの抗議もなかった。
――勝手に自己投影してごめんなさい。私は、みんなと一緒に生きていくことにします。ステージ前を立ち去る時、そう、心の中で謝った。
「あ、おかえりなさい。今丁度焼き上がったところですよー。――何か楽しいことありました?」
屋台に戻るとそう声を掛けられた。どうしてかと尋ねると、『なんとなく、嬉しそうな顔してたから』だそう。
「あ、違ってたらごめんなさい。てっきりそう見えたもので」
「ううん。その通り、かな。ちょっと思うことがあって」
「そうでしたか。ところで、その状況には突っ込んだ方がいいですか?」
たこ焼きと代金をやり取りしながら、そんなことを言われた。『その状況』とはどう考えても、頭と肩に猫を乗せてる状況だろう。それ以外考えられない。
「そっとしておいてもらえると大変ありがたいです」
「了解」
そうしてお互いくすくす笑いあった。
ベンチを借りてたこ焼きを頂く。きっと、家までなんて待ってくれない。ほら、もうすでに身、乗り出してるし。
「待って待って! あっついから!」
たこ焼きは熱々を食べるのが一番美味しいのは知ってるけども、火傷をさせるわけにはいかないので一度割って冷ます。早く食べたくてそわそわしている二人を押さえながらだから大変。でも、これがまた楽しかったりするんだなぁ!騒ぎながらみんなで食べたたこ焼き(たこ、ネギ、トッピングなし)は、格別美味しゅうございました。なんつって。