対面させました
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動物病院で保護されていたゼブラという名の大きな猫を預かることになったわけだけど、一人でさっき買った大量の荷物と一緒に連れて帰るのは不可能なわけで。どうしようかと悩んでいたら、『オレが家まで運ぶよ』と、何故か先生自ら荷物持ちを買って出てくれた。店員さんが、俺が行きますよ!とか、急患来たらどうするんすか!とか叫んでたけど、彼のその必死な叫びは全て無視されていた。不憫な。結局先生と一緒に帰路につくことになったワケだけど、キャリーを先生が持つと物凄い抗議の声があがる上に尋常じゃなく暴れて手が付けられない。一体どれほど嫌われているのかは分からないけど、私が持っても何も言わないし静かにしているので、キャリーを私が、買ったものを先生が持った。
忘れかけていた専用ドアについての相談は、現場を見てみないと分からないってことで、家に来るついでに確認するそうで。その点も含めて店員さんは自分が行くと言っていたみたいだったんだけど。いいのかな。まあ私としては問題なく設置できるなら何でもいいんだけどね。
「それにしてもよく引き受けてくれたねぇ。ゼブラで五匹目になるよね。生活に余裕あったりするの?」
この人はちょいちょい失礼なことを言う。多分悪気はないと思うけど。
「別にそんなことありませんよ。家の広さだけを言えば、私一人じゃ広すぎるくらいに余裕はありますけど。金銭面はそうでもないです。そりゃあ、貯金くらい多少はありますけど、大した額じゃないし。……でも、自分自身のためだけにお金使うのと、それ以外のために使うのとじゃ、意味がまるで違います。私は、例えギリギリの生活だったとしても、今の方がいいです」
家で待っていてくれているはずのコマツたちを思い出して、自然と笑みが零れる。綺麗事なんて言う気はない、紛れもない本心だ。正直、家が賑やかになるのは嬉しい。
「そりゃよかった」
「え?」
先生のその相槌に振り向いたけど、にっこにっこ笑ってるだけで何も言ってくれなかった。そのあとの道のりも、内容があるんだかないんだか分からないようなくだらない会話が続いた。私のスルースキル、上がったんじゃないだろうか。
キャリーと荷物を玄関ポーチにひとまず置いて、出入口の相談をすることになった。ゼブラ君には少し我慢してもらって。
「ここに付けてもらえればいいんですけど、なんせ玄関でしょ? 空き巣とか防犯面で心配で」
「あー、だよねぇ。要するに、猫の出入りができて玄関の鍵とかこじ開けられない造りになってればいいわけね?」
「簡単に言えばそうですね」
「よーし分かった。特注になるけど、安全なの手配しとく。玄関に土間あるよね?」
「あ、あります。……あの、特注って、あんまり値が張るとちょっと……」
困るんですが。
「大丈夫大丈夫。値段は普通に売ってるやつと大して変わらないから」
「ああ、なら、いいんですけど」
大体これくらい、とメモに値段を書いて見せてもらったけど、壊滅的に字が汚い。数字だと言われれば、辛うじて解読できるレベル、かな。……病院のカルテとか大丈夫だろうか。うーん、あの店員さん、相当苦労してそう。まあそんなこともあったけど、とりあえず相談はいったん終了。現物が届かないとどうにもならないそうだし。
さて、それではこれから本日のメインイベントといきましょうか。てっきり先生はもう帰るかと思ったんだけど、『万が一喧嘩したら危ないしお願いした手前責任もって付き合うよ』とか何とか言ってまだいる。何だかんだ言って家にあがる気満々だこの人。私はこの人を信用しても良いんだよね、ね?
若干不安がよぎるけど、いつまでも外にいるわけにもいかないので玄関の鍵を開ける。
「ただいまー」
少し声を張り上げて言えば、リビングの方からバタバタ音がした。土間を眺めてなんかふんふん言ってる先生は放っといて、キャリーだけ持ってリビングに向かった。リビングのドアを開けて中に入ると、案の定トリコとコマツが遊んでいて、サニーが毛繕いしていて、ココはゆったり寛いでいた。けど次の瞬間にはコマツ以外全員が一斉にこっちを向いたから驚いた。どうやらキャリーが気になるみたい。そりゃそうだよね。なんか集まってきちゃったし、とりあえずキャリーは床に置いて様子を見てみよう。
ガァンッ
……と、思ったんだけど。何やらキャリーを置いた途端に中で体当たりをしているらしいのでそうもいかなくなった。これは出たがってるんだよね?
ガンッ
「わ、ちょっと待ってゼブラ! 今開けるから」
正直いきなり開けるのは心配なんだけど、しょうがないね。
「えーと、仲良くね」
とりあえず今言えることはこれだけで、それ以上は全て蓋を開けてみないと分からない。キャリーをそっと開けてやると、のそりとゼブラが出てきた。私はというと、ドキドキしながら様子を見守るしかない。
大丈夫、だと思うんだ、なんとなく。でもあくまで予想なわけで、決定事項じゃないからやっぱり心配にはなるよね。ところで先生、いつまで玄関にいるつもりですか。
座って少し様子を見ていたけど、やっぱり私の心配は杞憂だったらしい。特別仲良くはないけど、まあ喧嘩にはなってない。サニーがちょっと唸っただけで。うまくやっていけるなら、私はそれでいい。
「やぁ、どんな具合?」
「あ」
やっと先生がやってきた。
「遅いですよ。何してんですかひとの家で。」
「ごめんごめん。別に物色はしてないから」
「そうじゃないと困りますよ」
こっちは呆れてるってのに、先生はあっはっはなんて笑ってる。楽観的と言えば聞こえはいいけど……。
……てゆーか、先生がリビングに入ってきた瞬間、空気が変わった。それまで、なんか挨拶みたいなことしてるように見えたんだけど、一斉に動きを止めて先生の方を見た。獣医は嫌われるって聞いたことあるけど、このコたちのリアクション、変だよね。ゼブラはともかく、みんな威嚇したりするわけじゃなくてただ固まるだけ。サニーは嫌そうな顔とかするけど。あと、私が先生と話してると極端に静かになって、私や先生を見てる。一般論はよく分からないけど、これは何か違う気がする。
「お前ら仲良くしろよー」
なんて呑気に言ってるけど、温度差おかしい。絶対『なんでこの人いるの』って感じで見てる。……オモシロ。
「……ニャァ?」
ちょっとぼんやりしてたらいつの間にかサニーが膝の上によじ登ってた。体を伸ばして前脚で私の顔の辺りを触ってくる。どうも頬に貼ってある絆創膏が気になるみたい。
「ああそれね、ゼブラに引っ掻かれた傷」
「!」
さらりと言った先生の方をバッと見たサニーは、膝から飛び降りてゼブラに向かって唸りだした。最初に顔あわせた時よりも凄んでる。毛がめっさ逆立ってる。床に寝そべってるゼブラは、なんか迷惑そう。喧嘩にならないか冷や冷やしながら見てたら、今度はコマツが乗ってきた。絆創膏の近くに顔を寄せてひげを動かしてる。
……えーと、もしかして、心配してくれてる?サニーのあれって、もしかして抗議?え、だったら超嬉しい。
でも、この程度のことで仲が険悪になるのはいただけない。
「心配してくれるの? ありがと。でも大丈夫だよ、大した傷じゃないし、ちゃんと治療もしてもらったから。サニーも、そんなに怒らないで? あれは不可抗力だもん。ね?」
「…………」
うーん、サニー不服そう。あれ、ゼブラの眉間に皺が……。言ってることは、伝わってる、よね? ……先生が笑いを堪えてるのがちょっと納得いかないけど、今は無視しよう。
―――お願い、言ってることが分かるなら、どうかお互いを傷つけるようなことはしないで。
忘れかけていた専用ドアについての相談は、現場を見てみないと分からないってことで、家に来るついでに確認するそうで。その点も含めて店員さんは自分が行くと言っていたみたいだったんだけど。いいのかな。まあ私としては問題なく設置できるなら何でもいいんだけどね。
「それにしてもよく引き受けてくれたねぇ。ゼブラで五匹目になるよね。生活に余裕あったりするの?」
この人はちょいちょい失礼なことを言う。多分悪気はないと思うけど。
「別にそんなことありませんよ。家の広さだけを言えば、私一人じゃ広すぎるくらいに余裕はありますけど。金銭面はそうでもないです。そりゃあ、貯金くらい多少はありますけど、大した額じゃないし。……でも、自分自身のためだけにお金使うのと、それ以外のために使うのとじゃ、意味がまるで違います。私は、例えギリギリの生活だったとしても、今の方がいいです」
家で待っていてくれているはずのコマツたちを思い出して、自然と笑みが零れる。綺麗事なんて言う気はない、紛れもない本心だ。正直、家が賑やかになるのは嬉しい。
「そりゃよかった」
「え?」
先生のその相槌に振り向いたけど、にっこにっこ笑ってるだけで何も言ってくれなかった。そのあとの道のりも、内容があるんだかないんだか分からないようなくだらない会話が続いた。私のスルースキル、上がったんじゃないだろうか。
キャリーと荷物を玄関ポーチにひとまず置いて、出入口の相談をすることになった。ゼブラ君には少し我慢してもらって。
「ここに付けてもらえればいいんですけど、なんせ玄関でしょ? 空き巣とか防犯面で心配で」
「あー、だよねぇ。要するに、猫の出入りができて玄関の鍵とかこじ開けられない造りになってればいいわけね?」
「簡単に言えばそうですね」
「よーし分かった。特注になるけど、安全なの手配しとく。玄関に土間あるよね?」
「あ、あります。……あの、特注って、あんまり値が張るとちょっと……」
困るんですが。
「大丈夫大丈夫。値段は普通に売ってるやつと大して変わらないから」
「ああ、なら、いいんですけど」
大体これくらい、とメモに値段を書いて見せてもらったけど、壊滅的に字が汚い。数字だと言われれば、辛うじて解読できるレベル、かな。……病院のカルテとか大丈夫だろうか。うーん、あの店員さん、相当苦労してそう。まあそんなこともあったけど、とりあえず相談はいったん終了。現物が届かないとどうにもならないそうだし。
さて、それではこれから本日のメインイベントといきましょうか。てっきり先生はもう帰るかと思ったんだけど、『万が一喧嘩したら危ないしお願いした手前責任もって付き合うよ』とか何とか言ってまだいる。何だかんだ言って家にあがる気満々だこの人。私はこの人を信用しても良いんだよね、ね?
若干不安がよぎるけど、いつまでも外にいるわけにもいかないので玄関の鍵を開ける。
「ただいまー」
少し声を張り上げて言えば、リビングの方からバタバタ音がした。土間を眺めてなんかふんふん言ってる先生は放っといて、キャリーだけ持ってリビングに向かった。リビングのドアを開けて中に入ると、案の定トリコとコマツが遊んでいて、サニーが毛繕いしていて、ココはゆったり寛いでいた。けど次の瞬間にはコマツ以外全員が一斉にこっちを向いたから驚いた。どうやらキャリーが気になるみたい。そりゃそうだよね。なんか集まってきちゃったし、とりあえずキャリーは床に置いて様子を見てみよう。
ガァンッ
……と、思ったんだけど。何やらキャリーを置いた途端に中で体当たりをしているらしいのでそうもいかなくなった。これは出たがってるんだよね?
ガンッ
「わ、ちょっと待ってゼブラ! 今開けるから」
正直いきなり開けるのは心配なんだけど、しょうがないね。
「えーと、仲良くね」
とりあえず今言えることはこれだけで、それ以上は全て蓋を開けてみないと分からない。キャリーをそっと開けてやると、のそりとゼブラが出てきた。私はというと、ドキドキしながら様子を見守るしかない。
大丈夫、だと思うんだ、なんとなく。でもあくまで予想なわけで、決定事項じゃないからやっぱり心配にはなるよね。ところで先生、いつまで玄関にいるつもりですか。
座って少し様子を見ていたけど、やっぱり私の心配は杞憂だったらしい。特別仲良くはないけど、まあ喧嘩にはなってない。サニーがちょっと唸っただけで。うまくやっていけるなら、私はそれでいい。
「やぁ、どんな具合?」
「あ」
やっと先生がやってきた。
「遅いですよ。何してんですかひとの家で。」
「ごめんごめん。別に物色はしてないから」
「そうじゃないと困りますよ」
こっちは呆れてるってのに、先生はあっはっはなんて笑ってる。楽観的と言えば聞こえはいいけど……。
……てゆーか、先生がリビングに入ってきた瞬間、空気が変わった。それまで、なんか挨拶みたいなことしてるように見えたんだけど、一斉に動きを止めて先生の方を見た。獣医は嫌われるって聞いたことあるけど、このコたちのリアクション、変だよね。ゼブラはともかく、みんな威嚇したりするわけじゃなくてただ固まるだけ。サニーは嫌そうな顔とかするけど。あと、私が先生と話してると極端に静かになって、私や先生を見てる。一般論はよく分からないけど、これは何か違う気がする。
「お前ら仲良くしろよー」
なんて呑気に言ってるけど、温度差おかしい。絶対『なんでこの人いるの』って感じで見てる。……オモシロ。
「……ニャァ?」
ちょっとぼんやりしてたらいつの間にかサニーが膝の上によじ登ってた。体を伸ばして前脚で私の顔の辺りを触ってくる。どうも頬に貼ってある絆創膏が気になるみたい。
「ああそれね、ゼブラに引っ掻かれた傷」
「!」
さらりと言った先生の方をバッと見たサニーは、膝から飛び降りてゼブラに向かって唸りだした。最初に顔あわせた時よりも凄んでる。毛がめっさ逆立ってる。床に寝そべってるゼブラは、なんか迷惑そう。喧嘩にならないか冷や冷やしながら見てたら、今度はコマツが乗ってきた。絆創膏の近くに顔を寄せてひげを動かしてる。
……えーと、もしかして、心配してくれてる?サニーのあれって、もしかして抗議?え、だったら超嬉しい。
でも、この程度のことで仲が険悪になるのはいただけない。
「心配してくれるの? ありがと。でも大丈夫だよ、大した傷じゃないし、ちゃんと治療もしてもらったから。サニーも、そんなに怒らないで? あれは不可抗力だもん。ね?」
「…………」
うーん、サニー不服そう。あれ、ゼブラの眉間に皺が……。言ってることは、伝わってる、よね? ……先生が笑いを堪えてるのがちょっと納得いかないけど、今は無視しよう。
―――お願い、言ってることが分かるなら、どうかお互いを傷つけるようなことはしないで。