夕食をすませて猫たちと遊んでいた。あれだけ散々遊んでたと思われるトリコはまだまだ遊び足りないらしく、ボールを投げてやると勢いよく追いかけていく。おまえは犬か、とツッコみたくなる。普段どれだけ動き回ってるの。コマツとサニーは胡坐かいた足の上で寛いでる。可愛いなぁ畜生。
　黒猫君は相変わらず一定の距離を保ってじっと座ってるだけ。腕伸ばしても届かない位置で。うーん、このパターンはよく分からない。嫌われてるのかとも思ったけど、だったらそもそも外へ出たがったりしそう。部屋の隅に逃げるわけでもなく、ただホントに一定の距離から近づかないだけ。コマツたちとも仲良くやってたみたいだし。
　人間が嫌いとかじゃなくて、ただ触られるのが嫌いなだけ？　なにそれ特殊すぎる。サニー以上に神経質で潔癖症ってこと？　そのサニーでさえ、今ではめっちゃ触らせてくれるけどね。……でもやっぱり、なんかビビってるように見えるんだよね、この黒猫君。まあ、それなら無理に触ったりしないけど。許してくれるのを待つよ。
　こちらには敵意がないことを伝えるため、じっとこちらを見る黒猫君に微笑んでみる。果たしてこれが通用するのかは分からないけど。最近はリアルに頬の筋肉が緩みまくってるから、不自然ではないはず。
　……ん？　この子睫毛(らしき毛)長……。そういえばサニーもかなり長かったけど、全体的に長いからあんまり目立たない。黒いから分かりにくいけど、短毛だからかそこだけなんとなく生え方が違うのは分かる。―――この子もサニーも男の子だけどね！
　ふむ、サニーとはまた違うきれいさだな。サニーは『エレガント』って感じ。黒猫君は『洗練された』ってのがしっくりくるかな、字面と音の響き的に。そもそもこの子、猫なのに背筋正して座ってるんだよね。猫背じゃない。立ち姿が女の子の理想の『王子様』みたいよ？
この子は、家にいてくれるのかな････。居てくれるなら、嬉しいな……。なんて考えていると、いつの間にかサニーがコームを咥えていた。ブラッシングしてくれって？　了解。
「はい、ゴロンして？」
　そう言えば胡坐の真ん中に陣取って体を伸ばす。これは懐いてくれてるととってもいいのかなサニー。
　この時、ブラッシングに集中していて、黒猫君の方を向いていたサニーがどんな表情をしていたのか、まるで気づかなかった。