洗ってあげました
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
トリコを『飼う』ことにしてから数日。実に楽しい毎日を送っている。猫たちはすっかり馴染んで、自由に家の中を歩き回る。でも夜はそれぞれの寝床で寝ている。一緒に寝てくれたのはあの一回だけ(くそぅ、残念)。
変わったことといえば、外へ出たがるようになったこと。朝、ご飯を食べ終わった頃に外へ出たいと窓を引っ掻き、夕方仕事から帰ってくると家の前で待っている、という状態が続いている。門限があるわけでもないのに帰ってくると必ず待ってる。最初にそれを見たときは、大人しく待ってる姿が可愛くて悶絶した。専用の出入口でも付けようかと思ったが、ホンニンたちに不満がないらしいのと可愛さ優先で今のところは保留にしている。あと防犯上の理由ね。
にしても、あの子ら仲良すぎ。大抵コマツがトリコの後を追いかけている。上に乗って移動してるのを見たこともある。いや、仲が良いに越したことはないんだけどね。
今日も朝から外へ出してくれと訴えるので窓を開けてあげた。バイトは休みなので今日は家で帰りを待つことになる。ああ、買い物だけは済ませよう。天気もいいし、洗濯物がよく乾きそうだな。
二匹が帰ってきたのは予想よりも早い、お昼をまわった頃だった。私がいることを承知の上なのだろう、トリコがリビングの窓の隙間から顔を突っ込んで鳴いていた。
「おかえりー」
足の裏を拭いてやるためのタオルを持って近づくと、コマツが何かを訴えるように鳴いた。
「? どした?」
しゃがんで尋ねれば、ふいと顔の向きを変えた。その方に視線を向けると、庭の隅に猫がいた。警戒心が強いのか、睨むようにこちらを見ている。コマツもトリコも割とフレンドリーな子だから忘れてたけど、普通そうだよね。知らない相手には警戒するだろうし、あの子はなんか気が強そうだし。
「友達連れてきたの? おいで。大丈夫だから」
多分こういう場合は無理に近づくより待ってた方がいい。気長に待ってればいい。
「ニャー」
トリコが、まるで促すように鳴いた。それに反応して、毛の長いその猫はゆっくりではあるが近づいてきた。相変わらず鋭い目つきは変わらないが、手を伸ばせば触れそうな距離まで近づいてくれた。全く信用されてないわけではないらしい。
近くでよく観察するとなかなか美形だ。でも。
「せっかくきれいなのに、それじゃもったいないね」
本当は艶やかな長毛であろう毛並みは土埃や木屑なんかで汚れている。今のままでは、遠目で見たらただの毛玉だろう。
「お風呂入れてあげたいけど、知らない人間に触られるの嫌かな。……そもそもお風呂嫌いだったらダメか」
コマツとトリコの足を拭いて、長毛猫君とにらめっこしてみる。嫌がること無理にしたくないしなぁ。……うわぁ尻尾ふさふさ。
なんてぼんやり考えてたら猫君がサッシに前足を掛けた。お?好感触? さらに、正座する私の膝に足を掛けて急接近。おお、なかなか積極的じゃないか。持ち上げてみても嫌がるような素振りはない。ガン見してくるのは変わりないけど。
「お風呂入る?」
「……」
返事なし。まあいいや、嫌がったら止めよう。
長毛君を抱えて風呂場へ移動する。幸いにも先日買った猫用シャンプーがある。まだコマツもトリコも洗ったことないけどね。
タイルの上に猫君をそっと降ろす。ちゃっかりついてきた二匹には外で待ってるように言って戸を閉めた。流石に三匹一度にここで相手はできないぜ。洗面器にお湯を張って、手で掬って猫君に掛けていく。あれ、思っていたより大人しい。猫って水嫌いだよね、確か。まあいいか。さあシャンプー開始。
……わー、柔らかい。長毛初めて触った。
力を加減しながら毛に付いた汚れを丁寧に落とした。きれいなグラデーションだな。……染めてるワケじゃないよね、この色。染めてたらこんな自然な色味してるはずないもんね。
一通り洗い終わり、シャンプーを流してやると猫君も多少なりともさっぱりした顔をしていた。毛が濡れて体のラインがよく分かる。思ってたより細いなぁ。もう一回りくらい大きいのかと思った。トリコとコマツの中間くらいかな。
「はい終わり。いい子でした」
猫君をタオルに包んで風呂場から撤収ー。扉を開けると出待ちされていた。
「なぁに、キミたちも洗ってほしいのかぁ?」
からかう様に尋ねればそっぽを向いて歩いて行ってしまった。嫌なのか。ちょっと傷つくぞ? ちょっとな。
それはさておき、もうちょっとシャンプーの仕方調べた方がいいなぁ。急だったとはいえ、やり方合ってるのか心配。
ドライヤーをもってリビングまで移動する。長毛種用のブラシがないけど何とかするか。タオルで粗方の水分を取ってから猫君を足の上に乗せてドライヤーを構えた。・・・・ビックリしなきゃいいけど。スイッチを入れ、少し放した位置から風を送る。猫君はじっとして温風にあたっている。……何故うちに来る子はみんないい子なの……!
あまりの大人しさに困惑しながらも感動した。
しっかり乾いたようだったのでドライヤーのスイッチを切った。うん、見違えるほどきれいになった。さらさらふわふわだ。
「はい、きれいになったよー」
猫君を一撫でして床に降ろした。自分の身体、というか毛並みをぐるりと確認すると私の顔を見上げてきた。
「・・・・ニャァ」
初めて聞いた長毛君の声は都合の良い私の耳にはまるでお礼のように聞こえたのでした。
変わったことといえば、外へ出たがるようになったこと。朝、ご飯を食べ終わった頃に外へ出たいと窓を引っ掻き、夕方仕事から帰ってくると家の前で待っている、という状態が続いている。門限があるわけでもないのに帰ってくると必ず待ってる。最初にそれを見たときは、大人しく待ってる姿が可愛くて悶絶した。専用の出入口でも付けようかと思ったが、ホンニンたちに不満がないらしいのと可愛さ優先で今のところは保留にしている。あと防犯上の理由ね。
にしても、あの子ら仲良すぎ。大抵コマツがトリコの後を追いかけている。上に乗って移動してるのを見たこともある。いや、仲が良いに越したことはないんだけどね。
今日も朝から外へ出してくれと訴えるので窓を開けてあげた。バイトは休みなので今日は家で帰りを待つことになる。ああ、買い物だけは済ませよう。天気もいいし、洗濯物がよく乾きそうだな。
二匹が帰ってきたのは予想よりも早い、お昼をまわった頃だった。私がいることを承知の上なのだろう、トリコがリビングの窓の隙間から顔を突っ込んで鳴いていた。
「おかえりー」
足の裏を拭いてやるためのタオルを持って近づくと、コマツが何かを訴えるように鳴いた。
「? どした?」
しゃがんで尋ねれば、ふいと顔の向きを変えた。その方に視線を向けると、庭の隅に猫がいた。警戒心が強いのか、睨むようにこちらを見ている。コマツもトリコも割とフレンドリーな子だから忘れてたけど、普通そうだよね。知らない相手には警戒するだろうし、あの子はなんか気が強そうだし。
「友達連れてきたの? おいで。大丈夫だから」
多分こういう場合は無理に近づくより待ってた方がいい。気長に待ってればいい。
「ニャー」
トリコが、まるで促すように鳴いた。それに反応して、毛の長いその猫はゆっくりではあるが近づいてきた。相変わらず鋭い目つきは変わらないが、手を伸ばせば触れそうな距離まで近づいてくれた。全く信用されてないわけではないらしい。
近くでよく観察するとなかなか美形だ。でも。
「せっかくきれいなのに、それじゃもったいないね」
本当は艶やかな長毛であろう毛並みは土埃や木屑なんかで汚れている。今のままでは、遠目で見たらただの毛玉だろう。
「お風呂入れてあげたいけど、知らない人間に触られるの嫌かな。……そもそもお風呂嫌いだったらダメか」
コマツとトリコの足を拭いて、長毛猫君とにらめっこしてみる。嫌がること無理にしたくないしなぁ。……うわぁ尻尾ふさふさ。
なんてぼんやり考えてたら猫君がサッシに前足を掛けた。お?好感触? さらに、正座する私の膝に足を掛けて急接近。おお、なかなか積極的じゃないか。持ち上げてみても嫌がるような素振りはない。ガン見してくるのは変わりないけど。
「お風呂入る?」
「……」
返事なし。まあいいや、嫌がったら止めよう。
長毛君を抱えて風呂場へ移動する。幸いにも先日買った猫用シャンプーがある。まだコマツもトリコも洗ったことないけどね。
タイルの上に猫君をそっと降ろす。ちゃっかりついてきた二匹には外で待ってるように言って戸を閉めた。流石に三匹一度にここで相手はできないぜ。洗面器にお湯を張って、手で掬って猫君に掛けていく。あれ、思っていたより大人しい。猫って水嫌いだよね、確か。まあいいか。さあシャンプー開始。
……わー、柔らかい。長毛初めて触った。
力を加減しながら毛に付いた汚れを丁寧に落とした。きれいなグラデーションだな。……染めてるワケじゃないよね、この色。染めてたらこんな自然な色味してるはずないもんね。
一通り洗い終わり、シャンプーを流してやると猫君も多少なりともさっぱりした顔をしていた。毛が濡れて体のラインがよく分かる。思ってたより細いなぁ。もう一回りくらい大きいのかと思った。トリコとコマツの中間くらいかな。
「はい終わり。いい子でした」
猫君をタオルに包んで風呂場から撤収ー。扉を開けると出待ちされていた。
「なぁに、キミたちも洗ってほしいのかぁ?」
からかう様に尋ねればそっぽを向いて歩いて行ってしまった。嫌なのか。ちょっと傷つくぞ? ちょっとな。
それはさておき、もうちょっとシャンプーの仕方調べた方がいいなぁ。急だったとはいえ、やり方合ってるのか心配。
ドライヤーをもってリビングまで移動する。長毛種用のブラシがないけど何とかするか。タオルで粗方の水分を取ってから猫君を足の上に乗せてドライヤーを構えた。・・・・ビックリしなきゃいいけど。スイッチを入れ、少し放した位置から風を送る。猫君はじっとして温風にあたっている。……何故うちに来る子はみんないい子なの……!
あまりの大人しさに困惑しながらも感動した。
しっかり乾いたようだったのでドライヤーのスイッチを切った。うん、見違えるほどきれいになった。さらさらふわふわだ。
「はい、きれいになったよー」
猫君を一撫でして床に降ろした。自分の身体、というか毛並みをぐるりと確認すると私の顔を見上げてきた。
「・・・・ニャァ」
初めて聞いた長毛君の声は都合の良い私の耳にはまるでお礼のように聞こえたのでした。