Chapter.0
夢小説設定
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一般的に『立派』と言われる自宅。外見は日本家屋だが、住居部分は比較的現代的な造りになっている。
玄関の鍵を開け、中へ入ると少しひんやりとした空気が纏わりついた。
「ただいまー」
「にゃぁ」
室内に向かって一声掛ければ、すぐにタオが出迎えてくれる。物心ついた頃から家に居るこの黒猫は、そう言えばいったい何歳なのだろう。黒々としたつやの良い毛並みや身軽さからは老いを感じない。
タオが出迎えてくれるから、たとえ人がいなくても自然に『ただいま』と言える。
そう言えば、二人は何の用事で出掛けてるんだっけ。
出迎えてくれたタオと共に、二階にある自室へ向かう。鞄を机の傍へ置き、制服のままベッドへうつ伏せにダイブする。
「あ――――……」
今日もくたびれた。
学校は、嫌いではない。嫌いではないが、何と言うか。
寝返りを打ち、添い寝してきたタオの背中を撫でながらぼんやりと考え事をする。
今日出た課題は、百合の家へ行ったときにやればいい。後で洗濯を済ませて……晩御飯何にしよう。明日家を空けるなら、冷蔵庫の中は整理した方がいいな。何が残ってたっけ。
そう考えはするが、動く気にはなれなかった。制服から着替える事すら億劫だ。
大きく息を吐くと、タオがぐりぐりと頭を顎のあたりに押し付けてくる。くすぐったさに身をよじりながら首元を撫でてやる。そうすれば今度は顔を舐めてきた。
「んん。なに、元気出せって?」
珍しく甘えたような行動をとるタオにそう聞くと、にゃぁと一言返ってきた。
「……ありがと」
タオと額を合わせて、抱きかかえて起き上がる。
ふと、部屋の隅にある本棚に目が行った。買い集めた漫画や小説、CDやDVDが詰め込まれ、背表紙が整然と並んでいる。夢中になって読んでいた頃が、最早懐かしい。家のことや学業が忙しく、いつの間にか手に取ることすらなくなっていた。
順番や配置にこだわって仕舞われた本。背表紙の並びをなぞっていくと、深い緑色をした本で視点が止まった。
妙に目を引き付けられたのは『ツバサ』だった。
よく覚えている。忘れるはずがない。好きだったんだ本当に。自分でもどうかしていると思うくらい、どうしようもなく好きだった。抱いていたその感情が、ホンモノなのかゲンソウなのか、今でもよく分からないけれど。
タオを抱き上げたまま本棚に近づき、その辺に転がっていたクッションを掴んでそれに座った。コミックを何冊も取り出し傍に積み上げた。胡坐をかいた足の中に落ち着いたタオを一撫でしてから、一巻の表紙を開いた。
玄関の鍵を開け、中へ入ると少しひんやりとした空気が纏わりついた。
「ただいまー」
「にゃぁ」
室内に向かって一声掛ければ、すぐにタオが出迎えてくれる。物心ついた頃から家に居るこの黒猫は、そう言えばいったい何歳なのだろう。黒々としたつやの良い毛並みや身軽さからは老いを感じない。
タオが出迎えてくれるから、たとえ人がいなくても自然に『ただいま』と言える。
そう言えば、二人は何の用事で出掛けてるんだっけ。
出迎えてくれたタオと共に、二階にある自室へ向かう。鞄を机の傍へ置き、制服のままベッドへうつ伏せにダイブする。
「あ――――……」
今日もくたびれた。
学校は、嫌いではない。嫌いではないが、何と言うか。
寝返りを打ち、添い寝してきたタオの背中を撫でながらぼんやりと考え事をする。
今日出た課題は、百合の家へ行ったときにやればいい。後で洗濯を済ませて……晩御飯何にしよう。明日家を空けるなら、冷蔵庫の中は整理した方がいいな。何が残ってたっけ。
そう考えはするが、動く気にはなれなかった。制服から着替える事すら億劫だ。
大きく息を吐くと、タオがぐりぐりと頭を顎のあたりに押し付けてくる。くすぐったさに身をよじりながら首元を撫でてやる。そうすれば今度は顔を舐めてきた。
「んん。なに、元気出せって?」
珍しく甘えたような行動をとるタオにそう聞くと、にゃぁと一言返ってきた。
「……ありがと」
タオと額を合わせて、抱きかかえて起き上がる。
ふと、部屋の隅にある本棚に目が行った。買い集めた漫画や小説、CDやDVDが詰め込まれ、背表紙が整然と並んでいる。夢中になって読んでいた頃が、最早懐かしい。家のことや学業が忙しく、いつの間にか手に取ることすらなくなっていた。
順番や配置にこだわって仕舞われた本。背表紙の並びをなぞっていくと、深い緑色をした本で視点が止まった。
妙に目を引き付けられたのは『ツバサ』だった。
よく覚えている。忘れるはずがない。好きだったんだ本当に。自分でもどうかしていると思うくらい、どうしようもなく好きだった。抱いていたその感情が、ホンモノなのかゲンソウなのか、今でもよく分からないけれど。
タオを抱き上げたまま本棚に近づき、その辺に転がっていたクッションを掴んでそれに座った。コミックを何冊も取り出し傍に積み上げた。胡坐をかいた足の中に落ち着いたタオを一撫でしてから、一巻の表紙を開いた。