Chapter.2
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流れ切らずに跳ね返った水の一部が瓦礫を巻き込んで戻って来た。波が進む先には小狼達が。
「――っ!」
―― 護れ!――
バチンッと音を立て、瓦礫が止まり水が引いていく。
小狼達を淡く発光する半球状の膜が覆い、瓦礫の水から彼らを守った。
「……間に合った」
そう呟いた蘭は彼らに向けて突き出していた右手を下し、息を吐いた。瓦礫を弾いた光のドームが解け、その粒子は蘭の元へ集まり小さな獣の姿を取った。
「おまえらの巧断も特級らしいな」
不意に声がした。声の主はゴーグル集団のリーダー。
「炎を操る巧断か。俺は水で、そっちは炎。おもしれぇ」
青年の巧断が再び水を放つ。今回は明らかに小狼達を狙って。
小狼は腕を広げ少年達を庇い立つ。彼の前に炎の壁が現れた。水と炎がぶつかり合い、ドオッと強い衝撃が辺りを揺らした。二つは相殺され、周囲には水蒸気が立ち込める。
「俺は浅黄笙悟だ。おまえは?」
「……小狼」
笙悟と名乗った青年は、次に蘭を見た。
「そっちのおまえは?」
「…………」
ちらと辺りを窺う蘭だったが、現在彼女の近くに人影はなく、ゴーグル越しではあるが笙悟の視線が向いているのは間違いなく蘭だった。それでも蘭は渋っていた。ここで名乗れば後ほど面倒なことになるのは想像に難くない。しかしだんまりを決め込んでしまうとそれはそれでおかしな流れになってしまう。
「…………八代蘭、だけど」
長い――彼女の主観ではあるが――葛藤の末に蘭は答えた。胃の辺りがキリキリする。いずれ穴が開くのではないかと蘭は心配になった。
「おまえら気に入った」
二人の名を聞き、笙悟は満足げに、そして楽しそうに笑っていた。
「(勘弁して)」
「笙悟! 警察だ‼」
これだけの騒ぎだ、警察が動くのも当然だろう。しかし笙悟の仲間達は慌てる様子もなく、この状況すら楽しんでいるようだ。今回が初めてというわけでもないのだろう。
「今からいいトコだったのによ」
笙悟は残念そうに溜息を吐き、仲間たちに撤収の指示を出した。FOWOOO‼ という声を合図に散り散りになる。
「次、会った時が楽しみだぜ!」
笙悟は去り際にそんな言葉を残していった。警察官が到着したころには笙悟のグループは全員この場を去っていた。
「……はぁ。――……さて、と」
蘭は壊れた壁や外れた看板に目を向けた。近くにいた警察官にこの現場を修繕しても良いかと尋ねると、記録を取った後であれば直してもらえるのは有難い、と返された。後処理としては随分と簡素に思えるが、このような事が日常的に起こっているのであればその都度厳密な対応をしていては埒が明かない。被害の規模の割には重大な事件としては扱われていないのかもしれない。
「お願いしても?」
蘭は浮遊している己の巧断に問いかけた。巧断はコクンと頷き、空中を跳ねるように壊れている箇所へ駆けていく。破損部分でトンと跳ねると光の粒子が舞い、それが晴れるとすっかり元通りになっていた。あっという間に周囲の目立つ傷を直し、霧散して蘭の中へ入り消えた。
「(ありがとう)」
胸元に触れ、他の誰かに聞かれぬように心の中で礼を言う。
〝蘭、無事か〟
「うん」
「すごかったね―――。さっきのは小狼君と蘭ちゃんが出したのかな―――?」
「今のも巧断か?」
蘭が振り返ると、小狼の巧断が彼の中へ消えた後だった。
「良く分からないんです。でも急に熱くなって……」
「必死だったからよく覚えてないんだよね。それより、さっき転んでた人、怪我してない?」
蘭が少年の方へ視線を誘導すると、小狼もハッとして彼に声をかける。
学生服の少年は涙目でこそあるが、無傷のようだ。
「よかった……。君もだいじょう……」
小狼がもう一人の中華服を纏った少年にも声をかけるが、彼はぺこりとお辞儀をした後フッと消えてしまった。
「ええ⁉ 消えた⁉」
驚いて周囲を見回す小狼を少年は不思議そうに見ていた。
「あ――」
何かに納得したらしいファイがぽんと右手拳の側面を左の掌に打ちつけた。
「あの子も巧断なんだー」
「巧断ってのはなんでもアリだな」
「そういえば、うちの巧断みたいなのはどこ行ったのかなぁ」
ナワバリ争いが始まった前後からモコナが見当たらない。ファイと小狼が辺りを見回してその姿を探す。
「あ――、大方、その辺で踏みつぶされてんじゃねえのか? まんじゅうみたいによ」
「いや―――、違うみたいだよ――。ほら」
モコナを見つけたらしいファイが指さす方向には、
「かわいー」
「ふかふかー」
「いやされるー」
「モコナ、モテモテっ!」
たくさんの少女達に囲まれ楽しそうなモコナの姿が。
〝何をやっておるのだ、彼奴は〟
「……えーと、私ちょっと行ってくるね」
蘭はモコナを返してもらうべく少女達に近づく。
「(大丈夫、だよね? ここ“無かった”もんね?)」
タオを連れ、一度大きく呼吸して彼女達に声をかける。
「――っ!」
―― 護れ!――
バチンッと音を立て、瓦礫が止まり水が引いていく。
小狼達を淡く発光する半球状の膜が覆い、瓦礫の水から彼らを守った。
「……間に合った」
そう呟いた蘭は彼らに向けて突き出していた右手を下し、息を吐いた。瓦礫を弾いた光のドームが解け、その粒子は蘭の元へ集まり小さな獣の姿を取った。
「おまえらの巧断も特級らしいな」
不意に声がした。声の主はゴーグル集団のリーダー。
「炎を操る巧断か。俺は水で、そっちは炎。おもしれぇ」
青年の巧断が再び水を放つ。今回は明らかに小狼達を狙って。
小狼は腕を広げ少年達を庇い立つ。彼の前に炎の壁が現れた。水と炎がぶつかり合い、ドオッと強い衝撃が辺りを揺らした。二つは相殺され、周囲には水蒸気が立ち込める。
「俺は浅黄笙悟だ。おまえは?」
「……小狼」
笙悟と名乗った青年は、次に蘭を見た。
「そっちのおまえは?」
「…………」
ちらと辺りを窺う蘭だったが、現在彼女の近くに人影はなく、ゴーグル越しではあるが笙悟の視線が向いているのは間違いなく蘭だった。それでも蘭は渋っていた。ここで名乗れば後ほど面倒なことになるのは想像に難くない。しかしだんまりを決め込んでしまうとそれはそれでおかしな流れになってしまう。
「…………八代蘭、だけど」
長い――彼女の主観ではあるが――葛藤の末に蘭は答えた。胃の辺りがキリキリする。いずれ穴が開くのではないかと蘭は心配になった。
「おまえら気に入った」
二人の名を聞き、笙悟は満足げに、そして楽しそうに笑っていた。
「(勘弁して)」
「笙悟! 警察だ‼」
これだけの騒ぎだ、警察が動くのも当然だろう。しかし笙悟の仲間達は慌てる様子もなく、この状況すら楽しんでいるようだ。今回が初めてというわけでもないのだろう。
「今からいいトコだったのによ」
笙悟は残念そうに溜息を吐き、仲間たちに撤収の指示を出した。FOWOOO‼ という声を合図に散り散りになる。
「次、会った時が楽しみだぜ!」
笙悟は去り際にそんな言葉を残していった。警察官が到着したころには笙悟のグループは全員この場を去っていた。
「……はぁ。――……さて、と」
蘭は壊れた壁や外れた看板に目を向けた。近くにいた警察官にこの現場を修繕しても良いかと尋ねると、記録を取った後であれば直してもらえるのは有難い、と返された。後処理としては随分と簡素に思えるが、このような事が日常的に起こっているのであればその都度厳密な対応をしていては埒が明かない。被害の規模の割には重大な事件としては扱われていないのかもしれない。
「お願いしても?」
蘭は浮遊している己の巧断に問いかけた。巧断はコクンと頷き、空中を跳ねるように壊れている箇所へ駆けていく。破損部分でトンと跳ねると光の粒子が舞い、それが晴れるとすっかり元通りになっていた。あっという間に周囲の目立つ傷を直し、霧散して蘭の中へ入り消えた。
「(ありがとう)」
胸元に触れ、他の誰かに聞かれぬように心の中で礼を言う。
〝蘭、無事か〟
「うん」
「すごかったね―――。さっきのは小狼君と蘭ちゃんが出したのかな―――?」
「今のも巧断か?」
蘭が振り返ると、小狼の巧断が彼の中へ消えた後だった。
「良く分からないんです。でも急に熱くなって……」
「必死だったからよく覚えてないんだよね。それより、さっき転んでた人、怪我してない?」
蘭が少年の方へ視線を誘導すると、小狼もハッとして彼に声をかける。
学生服の少年は涙目でこそあるが、無傷のようだ。
「よかった……。君もだいじょう……」
小狼がもう一人の中華服を纏った少年にも声をかけるが、彼はぺこりとお辞儀をした後フッと消えてしまった。
「ええ⁉ 消えた⁉」
驚いて周囲を見回す小狼を少年は不思議そうに見ていた。
「あ――」
何かに納得したらしいファイがぽんと右手拳の側面を左の掌に打ちつけた。
「あの子も巧断なんだー」
「巧断ってのはなんでもアリだな」
「そういえば、うちの巧断みたいなのはどこ行ったのかなぁ」
ナワバリ争いが始まった前後からモコナが見当たらない。ファイと小狼が辺りを見回してその姿を探す。
「あ――、大方、その辺で踏みつぶされてんじゃねえのか? まんじゅうみたいによ」
「いや―――、違うみたいだよ――。ほら」
モコナを見つけたらしいファイが指さす方向には、
「かわいー」
「ふかふかー」
「いやされるー」
「モコナ、モテモテっ!」
たくさんの少女達に囲まれ楽しそうなモコナの姿が。
〝何をやっておるのだ、彼奴は〟
「……えーと、私ちょっと行ってくるね」
蘭はモコナを返してもらうべく少女達に近づく。
「(大丈夫、だよね? ここ“無かった”もんね?)」
タオを連れ、一度大きく呼吸して彼女達に声をかける。