Chapter.2
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「きゃあああ!」
突然、誰かの悲鳴が辺りに響いた。その声に振り向くと、周囲の人々は騒めき混乱していた。どうやらすぐ近くの建物で抗争が起きているようだ。
「今度こそお前らぶっ潰して、この界隈は俺達がもらう!」
建物の下に集まっているのはキャップにつなぎという揃いの格好をした集団。リーダー格であろう人物が建物屋上にいる集団に向けて声を張り上げる。対して、彼らを見下ろすこちらも全員ゴーグルを着けたスタイルの集団のリーダーと思しき人物は挑発的な笑みを浮かべ、親指を立てた右手をクイッと下に向け相手を煽る。
「(始まった始まった。順当では?) ほら、被るでしょ?」
〝成程〟
蘭が指さしたゴーグルの集団を見たタオは今朝の彼女の発言の意味を理解した。彼らは一様に首元にストールかスカーフのようなものを巻いている。中には口元を覆い隠す形で巻いている者もいた。厳密にいえば異なる仕様ではあるものの、着替える前の蘭の姿と共通するものがある。
「ヒュ――かぁっこいー」
ファイが楽し気に声を上げる後ろでは人々が現場から距離を取り始める。誰かが『ナワバリ争いだ』と叫んだ。
「このヤロー! 特急の巧断憑けてるからっていい気になってんじゃねぇぞ!」
そんな相手の暴言など歯牙にもかけず、ゴーグル集団のリーダーの青年の手が上がる。それを合図に同グループのメンバーが一斉に建物から飛び降り、巧断を用いたバトルが始まった。双方のグループのメンバーそれぞれが己の巧断を操り相手グループへ向かって一斉に攻撃を放つ。
「(こうして見ると結構かわいい巧断いたんだな)」
争う両集団の巧断の中には蘭のツボを突くような姿をした巧断もいた。表情に出すまいと努める蘭だったが、抑えきれない感情で頬が緩み口角がわずかに上がる。
「あれが巧断か」
「モコナが歩いてても、タオが喋ってても驚かれないわけだ――」
奇妙な姿をしたモコナも、“そういう姿の巧断”に見えるのだろう。“喋る猫”も、やはりこの国では驚くに値しないようだ。
「最近の若いモンは!」
「この悪ガキどもー!」
「またあいつらだ!」
周囲の人々は往来の真ん中で争い始めた彼らに非難の声を上げる。このような事は日常茶飯事なのだろう。
「(一般人からしたら、不良グループ同士の抗争みたいなもんかな)」
このように街中で騒がれては、巻き込まれる側はたまったものではないだろう。狙いの外れた攻撃が周囲の建物などに当たる。その場に居合わせただけの無関係の者たちにとっては迷惑以外の何物でもない。
未だ建物から降りる様子のないゴーグルの青年に対して帽子集団の一人が巧断を向ける。人に近い形をしたその大型の巧断はビルの上まで跳躍し青年に向けて腕を振り下ろした。だが彼はそれに動じるどころか、ニッと余裕の笑みを浮かべ自身の巧断を出した。
エイにも似た姿をした彼の巧断は大量の水を放出し、相手の集団をその巧断ごと全て押し流した。
「うわあああ!」
水は波となりビルに打ちつける。人々はそこから逃れようと走り出した。その雑踏の中、足を滑らせ転倒してしまった少年が一人。傍にいた顔のよく似たもう一人の少年が彼を助け起こそうとしていた。彼らの頭上に、衝撃で外れた看板が落ちていく。
「っ⁉」
瞬間、蘭の身体は強張り、彼女の意思で動かすことが出来なくなった。息が詰まり、まるで全身の筋肉が固まってしまったようだ。
「危ない‼」
小狼が飛び出し、少年達を庇うように覆いかぶさった。看板が彼らに当たろうというその刹那、突如巨大な炎が上がり、それを燃やし尽くした。
「(今の、“護る”波動……? ……この感じ、まさか同調してる……?)」
体の自由が利かなくなったのはほんの一瞬のことだった。だが、蘭の身体にはその余韻がはっきりと残る。
「(まずいな……。今の段階でこの強さじゃ、この後の“あれ”に中てられたら……)」
〝蘭……〟
薄く滲んだ脂汗を周りに気付かれぬように拭い、『あれってレイアースだっけ』と関係のない方向へ思考を飛ばそうとした蘭だったが、次の瞬間、それも無意味となる。
「⁉」
彼女の“知らない”ことが起こってしまった。
突然、誰かの悲鳴が辺りに響いた。その声に振り向くと、周囲の人々は騒めき混乱していた。どうやらすぐ近くの建物で抗争が起きているようだ。
「今度こそお前らぶっ潰して、この界隈は俺達がもらう!」
建物の下に集まっているのはキャップにつなぎという揃いの格好をした集団。リーダー格であろう人物が建物屋上にいる集団に向けて声を張り上げる。対して、彼らを見下ろすこちらも全員ゴーグルを着けたスタイルの集団のリーダーと思しき人物は挑発的な笑みを浮かべ、親指を立てた右手をクイッと下に向け相手を煽る。
「(始まった始まった。順当では?) ほら、被るでしょ?」
〝成程〟
蘭が指さしたゴーグルの集団を見たタオは今朝の彼女の発言の意味を理解した。彼らは一様に首元にストールかスカーフのようなものを巻いている。中には口元を覆い隠す形で巻いている者もいた。厳密にいえば異なる仕様ではあるものの、着替える前の蘭の姿と共通するものがある。
「ヒュ――かぁっこいー」
ファイが楽し気に声を上げる後ろでは人々が現場から距離を取り始める。誰かが『ナワバリ争いだ』と叫んだ。
「このヤロー! 特急の巧断憑けてるからっていい気になってんじゃねぇぞ!」
そんな相手の暴言など歯牙にもかけず、ゴーグル集団のリーダーの青年の手が上がる。それを合図に同グループのメンバーが一斉に建物から飛び降り、巧断を用いたバトルが始まった。双方のグループのメンバーそれぞれが己の巧断を操り相手グループへ向かって一斉に攻撃を放つ。
「(こうして見ると結構かわいい巧断いたんだな)」
争う両集団の巧断の中には蘭のツボを突くような姿をした巧断もいた。表情に出すまいと努める蘭だったが、抑えきれない感情で頬が緩み口角がわずかに上がる。
「あれが巧断か」
「モコナが歩いてても、タオが喋ってても驚かれないわけだ――」
奇妙な姿をしたモコナも、“そういう姿の巧断”に見えるのだろう。“喋る猫”も、やはりこの国では驚くに値しないようだ。
「最近の若いモンは!」
「この悪ガキどもー!」
「またあいつらだ!」
周囲の人々は往来の真ん中で争い始めた彼らに非難の声を上げる。このような事は日常茶飯事なのだろう。
「(一般人からしたら、不良グループ同士の抗争みたいなもんかな)」
このように街中で騒がれては、巻き込まれる側はたまったものではないだろう。狙いの外れた攻撃が周囲の建物などに当たる。その場に居合わせただけの無関係の者たちにとっては迷惑以外の何物でもない。
未だ建物から降りる様子のないゴーグルの青年に対して帽子集団の一人が巧断を向ける。人に近い形をしたその大型の巧断はビルの上まで跳躍し青年に向けて腕を振り下ろした。だが彼はそれに動じるどころか、ニッと余裕の笑みを浮かべ自身の巧断を出した。
エイにも似た姿をした彼の巧断は大量の水を放出し、相手の集団をその巧断ごと全て押し流した。
「うわあああ!」
水は波となりビルに打ちつける。人々はそこから逃れようと走り出した。その雑踏の中、足を滑らせ転倒してしまった少年が一人。傍にいた顔のよく似たもう一人の少年が彼を助け起こそうとしていた。彼らの頭上に、衝撃で外れた看板が落ちていく。
「っ⁉」
瞬間、蘭の身体は強張り、彼女の意思で動かすことが出来なくなった。息が詰まり、まるで全身の筋肉が固まってしまったようだ。
「危ない‼」
小狼が飛び出し、少年達を庇うように覆いかぶさった。看板が彼らに当たろうというその刹那、突如巨大な炎が上がり、それを燃やし尽くした。
「(今の、“護る”波動……? ……この感じ、まさか同調してる……?)」
体の自由が利かなくなったのはほんの一瞬のことだった。だが、蘭の身体にはその余韻がはっきりと残る。
「(まずいな……。今の段階でこの強さじゃ、この後の“あれ”に中てられたら……)」
〝蘭……〟
薄く滲んだ脂汗を周りに気付かれぬように拭い、『あれってレイアースだっけ』と関係のない方向へ思考を飛ばそうとした蘭だったが、次の瞬間、それも無意味となる。
「⁉」
彼女の“知らない”ことが起こってしまった。