Chapter.2
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気が付けば、蘭は一人闇の中に立っていた。周りには何もなく、自分が立っているのか浮いているのか、その判断もつかない。ただこの闇の中で己の姿だけははっきりと認識できた。
少し周囲を見回して、蘭は「ああ、そうか」と自身の状況を理解した。
正面から、何かが近づいてくる。
――光球、オーブ、或いは。両手に収まるほどの大きさの、光。眩く輝いている筈なのに、目が眩むようなことはなかった。
じっと見つめていると光はやがて小さな獣の姿となった。三角形の大きな耳、美しく豊かな毛を蓄えた長く細い尾。小さいながらも体つきは逞しくイヌ科の生物を思わせ、また顔は小動物のようで愛らしかった。淡く光を纏うその姿は神々しくもある。
【我は、光を司る者たちの主。――永く、汝を待っていた】
「…………?」
可愛らしい外見と裏腹に低く響くような声(果たして実際に声を発しているのかは不明ではあるが)。その違和感よりも、光の獣の言葉そのものに蘭は眉を寄せた。
【汝、力を欲するか】
問われ、蘭は心の内で答える。
「……力は、欲しい。けれど欲しいのは戦うための力じゃない。何かを守れる力か、癒せる力が欲しい」
【何故】
「……。もし……。もし、“私”がここに居ることで、考えられる中で最悪の事態が起こった時に、対処できる術が欲しい。何も起きないで欲しいけど、起こらないとは限らない。……それに、これはただの我儘で、エゴだけど。傷を負ったままの彼の姿を、見たくないから」
悲しみとも痛みともとれる表情を浮かべる蘭。
「ああ、あと、あんまり派手に壊れたりしたら、みんな大変だろうから」
茶目っ気を出して笑うその姿が、一層痛々しい。
【……汝の優しき心の強さ、確かに認めた。我が癒しと守護の力、汝が思うよう使うがいい】
そう言って、光の獣は蘭の胸の中へ消えた。
「……よろしく、お願いします」
瞼越しに感じる明るさに目を開けると、すっかり夜が明けていた。どうやら、窓辺に座ったまま眠ってしまったらしい。
〝起きたか〟
腕の中から聞こえる声に視線を落とすと、タオがもぞりと身じろいだ。
「おはよ、タオ。……あのまま寝ちゃったのね。窮屈だったろ、ごめん」
するりと畳に降りたタオが背を逸らせて固まった身体を伸ばす。
〝どうと言う事は無い。それよりもお前の身体の方が心配だ。どこか痛んだり、具合が悪かったりはしないのか〟
「うん。へーき。――ねぇ、顔腫れてない? 特に目とか」
〝そんな様子は無いが〟
自身の顔をペタペタ触っていた蘭は、その言葉に安堵した。
少し周囲を見回して、蘭は「ああ、そうか」と自身の状況を理解した。
正面から、何かが近づいてくる。
――光球、オーブ、或いは。両手に収まるほどの大きさの、光。眩く輝いている筈なのに、目が眩むようなことはなかった。
じっと見つめていると光はやがて小さな獣の姿となった。三角形の大きな耳、美しく豊かな毛を蓄えた長く細い尾。小さいながらも体つきは逞しくイヌ科の生物を思わせ、また顔は小動物のようで愛らしかった。淡く光を纏うその姿は神々しくもある。
【我は、光を司る者たちの主。――永く、汝を待っていた】
「…………?」
可愛らしい外見と裏腹に低く響くような声(果たして実際に声を発しているのかは不明ではあるが)。その違和感よりも、光の獣の言葉そのものに蘭は眉を寄せた。
【汝、力を欲するか】
問われ、蘭は心の内で答える。
「……力は、欲しい。けれど欲しいのは戦うための力じゃない。何かを守れる力か、癒せる力が欲しい」
【何故】
「……。もし……。もし、“私”がここに居ることで、考えられる中で最悪の事態が起こった時に、対処できる術が欲しい。何も起きないで欲しいけど、起こらないとは限らない。……それに、これはただの我儘で、エゴだけど。傷を負ったままの彼の姿を、見たくないから」
悲しみとも痛みともとれる表情を浮かべる蘭。
「ああ、あと、あんまり派手に壊れたりしたら、みんな大変だろうから」
茶目っ気を出して笑うその姿が、一層痛々しい。
【……汝の優しき心の強さ、確かに認めた。我が癒しと守護の力、汝が思うよう使うがいい】
そう言って、光の獣は蘭の胸の中へ消えた。
「……よろしく、お願いします」
瞼越しに感じる明るさに目を開けると、すっかり夜が明けていた。どうやら、窓辺に座ったまま眠ってしまったらしい。
〝起きたか〟
腕の中から聞こえる声に視線を落とすと、タオがもぞりと身じろいだ。
「おはよ、タオ。……あのまま寝ちゃったのね。窮屈だったろ、ごめん」
するりと畳に降りたタオが背を逸らせて固まった身体を伸ばす。
〝どうと言う事は無い。それよりもお前の身体の方が心配だ。どこか痛んだり、具合が悪かったりはしないのか〟
「うん。へーき。――ねぇ、顔腫れてない? 特に目とか」
〝そんな様子は無いが〟
自身の顔をペタペタ触っていた蘭は、その言葉に安堵した。