Chapter.2
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案内された部屋で、蘭は窓辺に座ってぼんやりとしていた。先程までの謎の睡魔はどこへやら、タオと二人きりになった途端、目が冴えてしまった。
〝寝ないのか?〟
「…………」
タオの問いにも膝を抱えたまま足の先を見つめるばかりで反応がない。
しばらくの沈黙の後、
「……ぅ……っ」
蘭の瞳に涙が滲んだ。
「……っ……ひっ……ぅぅぅ……っ」
必死に声を押し殺すが、次々に大粒の涙が零れ落ちる。
〝蘭〟
「うぇ……っ……まって、だめだ……っ、ひ、っく……とまんな……っ」
ボロボロと溢れ出る涙を手で拭うが、止まる気配はない。予想もしていなかった自身の状態に蘭は混乱した。こんなつもりではなかった。ただ少し、これからのことを考えようとしただけだ。それだけで、いつの間にか涙が込み上げてきた。
蘭の精神状態は、彼女が思う以上に緊張していた。ギリギリまで張り詰めていた糸が、彼らと物理的に離れたことによりぷつりと切れてしまった。
タオは何も言わず身体を伸ばし彼女の頬を伝う雫を舐めとった。
「ごめん……ごめん、タオ……」
〝何を謝ることがある〟
「これから、始まるのに……っ……今から、こんなんじゃ……」
先程までの、気を張った表情とは違う、涙で濡れた顔に、タオはいつかの蘭の姿を重ねた。不安に泣きじゃくるこの少女を、黒猫は愛おしく思う。
〝お前が一人抱え込む必要はない。我も居るのだぞ。いくらでも当てにしろ〟
タオは子供をあやすように、蘭に頭を擦り付ける。蘭は再びくしゃりと顔を歪ませて、タオをその腕に抱いた。
「……がんばろうって、思ってたのに……うまくいかなかったらどうしよう、とか、間違えたら、どうしよう、とか、そんなことばっかり、浮かんできて……。悪い想像ばっかり……っ」
蘭が瞬きをする度涙が溢れた。時々しゃくり上げ、鼻を啜りながら震える声で胸の内を吐露する。
「……タオ……傍にいて……。“私”でいられるように。一人じゃ、潰れそうだから……」
〝無論だとも。お前が望むなら、いつまでも傍にいる〟
タオは蘭の頬に鼻をトンと押し付けた。
「……ありがと」
袖で涙を拭い、一度大きく深呼吸した蘭。タオを抱きしめたまま、歌う。
「――――……~♪……」
蘭の思い描く、“始まりの”歌。己を鼓舞するために、改めて決意を固めるために。
呟くような、囁くような、他の誰にも聞かれるはずのない歌は夜の闇とネオンに消えた。
〝寝ないのか?〟
「…………」
タオの問いにも膝を抱えたまま足の先を見つめるばかりで反応がない。
しばらくの沈黙の後、
「……ぅ……っ」
蘭の瞳に涙が滲んだ。
「……っ……ひっ……ぅぅぅ……っ」
必死に声を押し殺すが、次々に大粒の涙が零れ落ちる。
〝蘭〟
「うぇ……っ……まって、だめだ……っ、ひ、っく……とまんな……っ」
ボロボロと溢れ出る涙を手で拭うが、止まる気配はない。予想もしていなかった自身の状態に蘭は混乱した。こんなつもりではなかった。ただ少し、これからのことを考えようとしただけだ。それだけで、いつの間にか涙が込み上げてきた。
蘭の精神状態は、彼女が思う以上に緊張していた。ギリギリまで張り詰めていた糸が、彼らと物理的に離れたことによりぷつりと切れてしまった。
タオは何も言わず身体を伸ばし彼女の頬を伝う雫を舐めとった。
「ごめん……ごめん、タオ……」
〝何を謝ることがある〟
「これから、始まるのに……っ……今から、こんなんじゃ……」
先程までの、気を張った表情とは違う、涙で濡れた顔に、タオはいつかの蘭の姿を重ねた。不安に泣きじゃくるこの少女を、黒猫は愛おしく思う。
〝お前が一人抱え込む必要はない。我も居るのだぞ。いくらでも当てにしろ〟
タオは子供をあやすように、蘭に頭を擦り付ける。蘭は再びくしゃりと顔を歪ませて、タオをその腕に抱いた。
「……がんばろうって、思ってたのに……うまくいかなかったらどうしよう、とか、間違えたら、どうしよう、とか、そんなことばっかり、浮かんできて……。悪い想像ばっかり……っ」
蘭が瞬きをする度涙が溢れた。時々しゃくり上げ、鼻を啜りながら震える声で胸の内を吐露する。
「……タオ……傍にいて……。“私”でいられるように。一人じゃ、潰れそうだから……」
〝無論だとも。お前が望むなら、いつまでも傍にいる〟
タオは蘭の頬に鼻をトンと押し付けた。
「……ありがと」
袖で涙を拭い、一度大きく深呼吸した蘭。タオを抱きしめたまま、歌う。
「――――……~♪……」
蘭の思い描く、“始まりの”歌。己を鼓舞するために、改めて決意を固めるために。
呟くような、囁くような、他の誰にも聞かれるはずのない歌は夜の闇とネオンに消えた。