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二周に一回くらいのペースで薔薇の植木の水やり当番がまわってくる。このだだっ広い庭園の何十本と植えてある薔薇の木一本一本に丹精込めて水をやらなくてはいけないのだ。…いや、愛情込めるのだからその言い方は却下だ。毎週皆で力を合わせて愛を込めるだけ込めているので薔薇もそれに応えてくれているのか大輪の花弁を咲かせている。最初は水魔法が上手く使えなくて焦ったものだ。時間内に全ての木に水やりという義務がありながら水が出せないなんて。でも今じゃ鍋を出すより容易に出来るようになったと思えてしまう程。ああでもまだ未熟だ、鍋には勝てない。
マジカルペンで木の根本に水をたっぷりあげている俺と同じ当番のエース。こいつとはいつもペアを組んでいる。植木の水やりの時は毎回エースとだ。エースは俺よりも要領が良いから水やりをすいすいと熟す。だからエースといると何時も劣等感を感じていた。こいつは器用というか俺にはないものを必ず持っていて羨ましいのが本音だった。
しゃがんで水をたっぷり地面にふくませていると、隣の木に水をやるのかエースが移動してくる。その木は俺がやるからいいと言おうとした瞬間に水を思い切り顔面からかけられる。腹を抱えて笑うエースに俺はやり返す。エースはやり返されると思わなかったのか睨みを利かしてくる。
それから無謀な水の掛け合いが始まる。薔薇の木をそっちのけで。もう制服のシャツの中までびっしょりでこれは後先怒られてヤバいかと思い始めてきた頃ユウが寮の建物の中から俺達を見つけたのか駆け寄って来る。


「喧嘩は駄目だって言ったじゃん!」
「喧嘩じゃない!コイツが先にやってきて!」
「デュース」


ペンから噴射していた水が止まりユウから視線を移す。エースがマジカルペンを手に何だか照れくさそうな顔をしている。


「腕上げたな」


いきなり何を言い出すかと思いきや褒めてきた?これは冗談か。でも表情がそうにも見えないようで見えるような。それに…何だ。腕を上げたって。直ぐには言葉の意味と答えが出なくて無言で言葉を失っているとエースは少し必死そうに「だから!」と言い出す。


「魔法だよ!前は水なんて出せなかったろ?」
「あ…ああ。そうだな…うん」


俺がさっきまで考えていた事をそのまま言われたような気がした。その言葉通り水は前は出せなかった。さっきも考えていたが。それをエースにこうして面と向かって言われるとちょっと気恥ずかしいが嬉しいのはある。俺はやっぱり照れっぽく言って今にも誤魔化しそうなエースを前に笑い掛ける。


「エースもな」
「俺はいいんだよ!俺は出来が良いんだから!」


ふふんと鼻高々に笑ってみせるエース。その何時ものカッコつけてる彼が何だか可愛く思えてもっと反応が見てみたいとは思って不意打ちで水をかけてみる。エースはちょっと取り乱して何すんじゃい!と風魔法を使って水を巻き上げていつかのコンボ技を繰り出すのかマジな水量を完成させそれを俺にぶつけてくる。


「何すんじゃゴラぁあ!!」
「喧嘩はやめよー!」


魔法が使えないのに俺達の間に入って止めに入ろうとするユウ。さすがに魔法が使えない俺等の喧嘩とは無関係のユウを巻き込むわけにもいかないので二人で同時に手を止めるとグリムも来たのかユウの足下で笑っている。


「喧嘩する程仲が良いんだゾ。仲直りした時が一番コイツらデキてるって分かるからな」


エースとユウと俺の三人で腰に手を添えて自信満々に言い放つグリムに目線を落とすとグリムは「ん?」と恍けたみたいに丸っこい瞳で見上げてくる。


「え?今のグリムが言った?」
「ふなぁあ!俺様を馬鹿にする目で見んじゃねー!」


地団駄を踏んで怒るグリムに三人で声を揃えて笑う。グリムが良い気分でカッコつけるとこう横槍入れたくなるんだよな。
このままお喋りや水の掛け合いもずっとしてられないので残りの数本の水やり仕事を終える為再開し出した。




(24.08.06)


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