hpmi
雨音を聞いていると何故か自然と落ち着いてくる。私にとってそういう季節だ。六月になると自宅の庭に見事な紫陽花が咲く。紫と白と青とピンク。どれも綺麗でこれが直ぐに時期が変わると色褪せてくるなんて勿体無いと思う。だからこういう花の見頃は写真をおさめて記憶の一枚に留めておく。今年は近所の桜の木を見たし秋には金木犀が見れて冬には椿。その花の姿を撮る度に私の携帯の中のアルバムも増えていく。花の次に写真アルバム枚数が多いのは人物だった。けど一人だけだ。私には親しい友人等がいないから彼一人だけなのだ。私を一番気遣ってくれる人。
傘を持って近くで紫陽花をもっとよく見ようかなと思っていると携帯の着信音が鳴って彼、銃兎さんからSNSメールが届く。
***
今日は一日中雨で仕事が山のように残っているがずっとPCに向き合ってるわけにもいかず集中力が切れて喫煙ルームに行くとそこで一服する。その間に椅子に腰掛けて携帯で家にいるであろう凛にトークメールを送ると直ぐに返信が返ってきた。今日は本当は凛の家にあがる予定だったがやめて仕事の方を選んだ。その話題を持ち出して伝えれば凛は「気にしないで。此方こそ来て欲しいなんて言っちゃってごめん」と返信がきた。それと一緒にごめんねのキャラクタースタンプ。最近の奴は色々集めたりしてるよなと思いながらも何か返そうとするとあっちからまた話し掛けてくる。
『今は時間あるの?』
『ありますよ。休憩中なので』
『お疲れ様。風邪引かないようにね』
『さすがにこの土砂降りの中を歩いて移動する事は無いからな。デスクワークですよ』
片手で煙草を吸いながら携帯の画面のやり取りを見ていると凛のアイコンが紫陽花になっているのに気付く。そのタイミングで添付写真が一枚送られてくる。色鮮やかな四色の紫陽花だった。
『綺麗ですね』
『癒されるよね』
『そうだな。凛もあまり窓を開けて濡れながら遊ぶなよ』
『遊んでないよ。癒やされてるだけ』
凛のやり取りを見て自分の考えてる事と真逆の言葉が返ってくるから色々と興味深くてそれに毎度ながら笑んでいるとまた凛からトークメールがくる。銃兎さんにも癒やされてますという言葉と「ありがとう」のスタンプだった。それに笑みを隠しきれずにまた表に出してしまうと喫煙ルームにいつの間に誰か入って来ていたのか同僚が壁に凭れ掛かってニヤけたまま此方を見て「彼女?」と聞いてくる。携帯の画面を下に向ける。
「…さあ、どうでしょうか」
「彼女だな。そんな顔をするのは女かペットなんだ」
「何だペットって」
「俺の家の見守りカメラに映ってるポメが可愛くてさ。見る?」
「いえ、いいです」
遠慮の言葉を無視して横で熱く犬の話を語り出す同僚に俺はトーク画面のやり取りを見て返信を待っていると良いタイミングで返信がくる。
『銃兎さん、これから暑くなるかもだけど体調壊さないでね』
あの大雑把な凛が俺の気遣いをするなんてと思いながらも「凛もな」と返すと仕事に戻る時間になって携帯画面を閉じる。未だにペットの事について語っている同僚を受け流して俺は喫煙ルームから出て仕事場へと戻った。
(25.06.26)
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