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学校に何人かはいる不登校生。でも俺のクラスメイトの如月という生徒はちょっと変わっていた。雨の日に必ず学校を休むのだ。特に一年の内で一番雨の降りやすい時期。梅雨時とか殆ど登校してなくてその法則に気付いた友人が「わざとかな」なんて笑っていたけど何か理由はちゃんとあるんだと思う。俺が知ってるそいつは意味も無く登校しない奴じゃないから。
その日は俺も兄ちゃんに内緒で学校を休んだ。雨の日で家は普通に出たけどそれからずっとイケブクロの街中で時間潰し。道行く人には制服着てるのにこの時間に?って変な目で見られたけどこれを味わっているのは如月も毎回そうなんだろうなって思ったら何処にも居場所が無い閉塞感に同情する。今日はサッカー部は元々休みで、三郎には一応計画がバレてて一言言ってある。朝食の時には三郎いなかったから特に兄ちゃんに気付かれずに出掛ける事に成功した。
ブクロの街中を少し歩いた先の所のあまり立ち寄った事の無い公園で如月はいた。どこかで購入したのか何か飲んでいて屋根付きのベンチに座っている。俺もその側に近付くと如月は俺に気付いて驚いたように意外そうに見上げてくる。


「え。今から学校?」
「…俺も休み」
「二郎が?」


傘を畳んで如月の向かいの椅子に座る。如月は自分が飲んでる温かそうな飲み物を俺から慌てて隠すように横に置く。その動作を目で追い何故最近休んでいるのかと、雨の日に学校に来ないのかを聞いてみる。


「だって雨の日は皆憂鬱だろ?それに屋内で行動してる。人の声が、あまり良いとはいえない声がよく聞こえてくるから嫌なんだ」


如月の言葉を聞いて憂鬱な日だからとは言っているが要は人との付き合いが上手くいってないのだろうと思った。その俺の探りの目から少し居心地が悪そうに視線を俯かせる。


「お前って、なんか考えが他と違うつーか」
「よく言われる」
「…気分悪くしたか?」
「してないよ。でも人の声とか悪く取ったり一々怯えたりするの一種の病気じゃないかなとは思ってる。だって二郎の言う通り皆は普通に学校行ってて仲間を作ってて同調してる。なのに俺はそういう事どうしても出来ない」


隠してるつもりでもここまで知られてしまっては隠す必要も無いかと思ったのか今飲んでる飲み物と一緒に堂々と心の内も曝け出してくる。ここまで聞いて少し無理して話させちまったなと反省してさっきまで差してたビニール傘の先から水の染みを出来ていくのを見下ろして考える。仲間が沢山いて囲まれて喧嘩したり時には互いを高め合ったりする楽しさがある事俺は知ってる。でも此奴はそれを知らない。どうしてもって言うけど本当にそれで割り切れるものなのだろうか。友人も仲間もいるって事は幸せな事だ本当に。だから余計に孤独の内にいる如月の事放っておけなかった。


「俺ん家行くか」
「…え」
「俺ん家っていうか、事務所だけど。…三郎っていう三男がいて何となくお前に似てるっつーか」


如月の手の中のカフェの洒落れた店のロゴが目に留まり嗚呼あのカフェで買ったのかなどと考えたりもして如月の返事を唯待つ。如月は「呼んでくれて嬉しいけど」と言葉に出す。


「俺は三郎くんとは似つかないよ。一緒されたら困ると思う」
「はああ…」
「何?何か悪い事言っちゃった…?」
「マイナス思考だな。そんなんじゃ疲れねぇか?」


大きな溜息が出て逸らしていた顔を上げてしっかりと真正面から如月を見据える。そして持ってきたスクールバッグの中から兄ちゃんに貰った名刺入れを出してその一枚を如月に差し出す。


「これやるから何時でも頼れよ。それと」
「?」
「雨の日キツかったら無理して学校に行かなくていいから。その代わりその日は必ず少しでも俺に連絡すること」


BGMのようなザアザア降りだった雨音が静音になり屋根下のスペースから外を見れば雨は止んでいて空には虹がいつの間に出来ていた。俺は名刺入れをしまってスマホを出すとそれで虹を撮る。


「二郎」
「ん?」
「有難うな。…これからも頑張れる気がする」


頑張れるというプラスな言葉が此奴から出た事に素直に嬉しく感じた。すると話していた間に送った虹の写真の添付のSNSに既読がつきその相手の三郎がやっと起きたのか反応して返事してくる。それが気になるのかチラと見てくる如月。山田兄弟の写真を代わりに見せてあげる。如月は兄ちゃんの事をカッコいいと言い三郎の写真を見て可愛いと呟く。


「あれ、もしかして三郎くんMCやってる?」
「知らなかったか?」
「うん。ごめん…情報疎くて」
「これが生意気でさ。でも可愛いか分からねぇけど、可愛いかな」


如月はクスと笑う。好きな写真見てもいいと言うと学校のダチと写ってる俺の写真も見始めた。少しでも雨の日の登校が出来るようになればといいなと思った。


(事務所来る気になったか?)
(余計に行けなくなるよ。だってこんなに有名人で…)
(考え過ぎだって。でもまあ、学校も人の目が気になんならこっそりでもいいからさ。気が向いたら)
(でも)
(ああ…もう、マイナス思考だな)




(25.06.16)



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