hpmi
五ヶ月程前くらいにセイナさんという女性と付き合い始めた。彼女は医療関係の人で仕事で会って話してるうちに親しくなったのだ。それから少しずつ近付き寄り添っていき同棲まで考えた所で飴村くんがどこで知ったのか私と彼女の関係を知ってしまった。それからだ。私と彼女との歯車が噛み合わなくなったのは。飴村くんのせいにはあまりしたくないが彼によって全てが崩れたといってもいい。彼は… はっきり言って自分勝手で恋愛クラッシャーだ。でもそこを好きになってしまっていた私も私だった。
降りしきる雨の中、シブヤの人通りの殆んど無い路地広場で私と彼は向かい合ってマイクを手にバトルしている。飴村くんとバトルしたのは久方振りだ。彼は相変わらず癖のある戦い方をかましてくる。言葉の一つ一つや彼の取り乱した乱暴な声調を聞いて今までにないバトルを体感する。もっていかれる。彼に、私の人生と感情と私自身を。彼と戦う事で私は…私達はどうなるのだろうか。セイナさんとは、私は…彼女の事を想ってる筈なのに。
雨が強くなる。大雨の嵐といってもいい。飴村くんとの言葉のぶつけ合いは続く。どちらも譲れないのか。
視界がグラつく。雨が次第に強くなって叩きつけてくる。まるで雨が彼の心を写しているようだ。
「じゃく…ら…い」
マイクをしっかと持って言葉を紡いでいた飴村くんの身体がフラつき地面に崩れるように倒れそうになる。私はマイクを解除して彼の元に駆け寄る。飴村くんが地面に落ち倒れる前に抱き拾う。彼の小さな呼吸を聞きながら温もりを手に状態を確認しようと額に手を当てるが手をはらわれる。
「さわ、る…な」
その弱々しい声と振り払った手が今出せる最後の力だったのか彼は目を閉じてぐったりと重みをかける。額に手をもう一度当てる。熱い、高熱だ。
病院に連れて行こうと抱き上げようとすると彼が腕の中で震え出す。状態が悪くなったのかと思ったが違くて押し殺したように泣いていた。
「ごめん…よ」
私の言葉が、容赦なく降り注ぐ大雨の雨音とどこかで聞こえた車のクラクションや帰路を慌てて帰る人達の声でかき消えた。君にはもう届いていないだろう。私の言葉は、想いは。私が君を愛していた…こと。
私は彼を抱いたまま崩れるように膝をつき、自分の想いを全て流し、まっさらに、あの日へ戻るように心の雨を二人で降らせていた。
(24.07.15)
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