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幻太郎の家に行くことになっていた日の午後。何時ものようにシブヤの交差点に来るとそこから見える大型スクリーンにニュースの特報が流れている。もうすぐやるディビジョンラップバトルの事とか事故に合ってしまった人のニュースとか。ニュースって伝えるべき事を伝えるものだけどそれを明るいものから悲しいものまで様々で。でもそれが無いとボク達は情報を得る事は出来ないしあまり良くないニュースが流れる事で拡散するSNSの内容も変わる。上手く出来てるけどそれが欠かせない時代だから割り切って皆生きている。そんな事を考えてたらFPについて情報を流してるSNSが見たくなっちゃって開いて見ると幻太郎についての一番上の固定の情報があってそれを開いて見たら幻太郎の執筆した小説が賞をとったというものだった。此方まで嬉しくなっちゃうニュースで幻太郎のファンも皆喜んでいる。


「こういうのばかりが増えるといいのに」


誰に言うでも無いこの場の呟きが近くの団体グループの声にかき消されて青信号になりボクは歩き出す。人々の娯楽や楽しみや自由を制御するなんておかしいし、してはいけないし出来ない筈だから。



***



幻太郎に家に来ると幻太郎は締切が終わって少し落ち着きを取り戻してるのかご機嫌に最近買ったという紅茶の茶葉を出してくれる。綺麗なカップに注ぐ香り高いダージリン。それとクッキーまで出してくれてそれを飲食しながらボクはさっき手に入れた良いニュースの情報を幻太郎との話題に変える。


「ああ、もう知っていましたか」
「ましたかって。賞とったんだからどっちみちすぐ分かっちゃうよ?」
「ですね。なのですが、思いもしなかった内容のネタでとったので私としても内心驚いてはいます」


幻太郎は上品にカップを手に取り一口飲むとやっぱり賞をとったから機嫌が良いのか締め切りが終わったから機嫌が良いのか分からないけれど今日はよく笑っている。ボクは来る前買ってきた物を机の上に出す。幻太郎の例の賞をとった本だった。幻太郎が硬直する。


「読むよ」
「やめなさい」
「ええ、何で。読みたい読みたい」
「今言ったでしょう。狙ってもいなかった思いもしなかったネタだと」
「嘘付かない」


本のタイトルは「炎の兎」というタイトル。なんか何時もの幻太郎っぽくないけどこれは実は自分がとれると思わなかったって事だよね。それとも納得のいってない作品とか?よく分からないけど見て欲しくないと言うんなら買ったけど見ない事にしなくちゃなのか。


「じゃあ飾っておこうかな」
「飾るのもやめなさい」
「分かったよもー。じゃあ話を変えるけど」
「そうして下さい」


カップをソーサーに静かに置く姿を前に本の袋と一緒に入れてたある物を取り出す。押し花の栞だ。それを見て幻太郎はそれなりに思い出したのか「前も作ってましたよね」と言う。


「これをあげるよ。今年はネモフィラだよ」
「まあ、頂けるなんて。大事にしますわねアタクシ」
「いらないの〜?」
「いりますよ」


こうして見るとネモフィラを押し花にするのも中々宜しいですねと言いながら幻太郎は栞の中の青の花弁を見て大事そうに栞を自分の引き出しに入れる。その一瞬を隙見て本を開くと一頁目の主人公らしい人物の名前に自分の名前の漢字が入っているのが目についてしまう。幻太郎が本を取り上げる。


「ごめん。もうしないから」
「賞を頂いたのは思いもしなかったネタでした。ですがこれは没案とかでは決して無いのですよ」
「ちゃんと分かってるって。読まないから、そんな顔しないで?」


険しい表情をしている幻太郎に近寄るとボクは幻太郎に腕を絡ませて抱きつく。それに幻太郎は機嫌を戻して座り直すとボクに買った本を取り上げたまま自分の身体の後ろに隠してしまう。本当に見られたくないんだなぁ。


「栞のネモフィラね。帝統が選んでくれたの。目に付く所に何時も咲いてて綺麗だからって。それで栞にしたんだ」
「…有難う御座います」
「また作れたら作れるといいなぁ」


次はどの花にしようかなと本の事にはあまり触れないように言うと幻太郎はボクが本当に読む気が無いのを悟ってか安心したようにカップに手を付ける。もしかしてあの本ちょっと怖いやつだったのかなと思ったりしたけど、考えれば考える程読みたくなってきちゃうから妄想だけに留めておこう。



(25.05.21)


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