hpmi
仕事も連勤続きで定時に帰れなくなる日が続く毎日に一二三のフレグランスの仕事も大きなイベントを催すとかでその当日の前から一二三は俺にイベントの事をそれなりに伝えてくれていた。何でもフレグランスでトップホストである蝶人の一二三と同じカブキ町のホスト繋がりで華人の人気ホストとコラボ接待するとか。それを聞いた時には戸惑ったけどフレグランスの今後の未来にも繋がるから絶対に出ないといけないんだと俺に諭すように言ってきて俺は話を聞いた後「頑張ってな」としか言葉を掛けられなかった。
でも頑張らなきゃいけないのは俺もそうで営業の仕事が山のように次から次へと舞い込んできて目が回りそうでその度上手くいかない時はハゲ課長に叱られるのループ。精神も限界に近付いてるけどここで俺が挫けたら全て失う事になるから今の山場を乗り切る事だけを考える。次の休みの日を忘れてしまうくらい手探りに必死に。
眩い光が俺の顔を照らし出す。その明るさに目を咄嗟に隠して光の方を向くとカーテンが全開にさせられたのが分かって視界にぬっと同居人の顔が出てくる。それにナチュラルにびっくりして肩を跳ね上がらさせると光の中、一二三は両腰に手を置いて「朝だぞ」と状況を説明してくれる。
「ああ…」
「朝だぞ起きろー!」
身体半分掛かってる毛布を一気に引っ剥がされる。俺の身体を覆っていた物が取り払われると一二三は毛布を綺麗に畳んで笑んでいる。俺は暫く一二三の様子を見ながらまだ完全に開けていない思考のまま額に手を置く。昨日がとにかくこれまでに無い営業のハードさだったのは覚えてる。それと一二三のコラボ接待の日だった事も。なのにそれを感じさせない一二三の快活振りに俺も微笑する。
「一二三、昨日は大変だったのに元気だな」
「そりゃあもう、俺は一日一日大切にするからな」
ご飯作るから来いよと一二三は俺を誘う。俺は机の上の時計を見る。その時間の経過にどれだけ寝たのかが分かってやべぇとか声を出すとスリッパを履いて足早に洗面所に行き朝ルーティンを始める。朝というよりもうすぐ昼に近い時間帯だけど一二三はそれまで俺を寝かせてたって事か。おかげでそれなりに疲れは取れたけど。
何時もの食卓につくと台所にいる一二三が卵料理を作っているのか美味しそうな香りがしてジュウと料理作りの音がする。出来立ての作った料理をよそって持ってきたそれを俺の前に出す。オムライスだった。
「オムライス!」
「そうそう。んでこれにこれを」
一二三はエプロンのポケットから何かを取り出しそれをオムライスに立てる。小さな旗だ。麻天狼のロゴが描かれてるその幸せに俺は素直に感動していて凄いと呟く。旗のついてるオムライスを見つめている俺を見ている一二三は満足気に笑って俺の隣に腰掛ける。
「一気にアガるっしょ」
「今日は豪華だな」
「そりゃさ、独歩の誕生日だからな」
一瞬フリーズしてしまう。ハッとカレンダーを見ると十五日の今日に赤丸がついてる。思考が一気に冴えてマジかよなんて頭良くない言葉が出る。一二三はそんな俺の様子を見てちょっと困ったような溜息をつく。
「自分の誕生日忘れるとか勿体無いぜ」
ん、と一二三がもう片方のエプロンのポケットから何かを取り出す。それを見せてくれると手作り感溢れるでもお洒落なデザインの紙のような物がそこには合ってその中央には一二三の字で「GIGOLO」と書かれている。これは何だろかと考えさせられてしまう。
「これは?」
「一日俺を好きなように出来る券」
またフリーズ。でも直ぐに気を戻して、横を向いて上がるテンションに手で顔を覆い隠す。
「何だその夢のような券は」
「ほら、食えよ。冷めちまうぞー」
一二三はスプーンでオムライスを掬うと俺の口に運んでくれる。口を開けて受け入れると好きな味が広がる。これでもう幸せなのに幸せに続くさらなる幸せ。たまらん。
もぐもぐと食べてる俺を見て一二三は頬杖をついて次のご飯を掬っている。俺は今日まで言いたかった事を言葉にする。
「お疲れさん。疲れたろ」
「独歩もな。誕生日おめでと」
気遣ったつもりが気遣いで返された。何処までも優しい彼に俺は一二三の蝶人華人コラボ接待を想像してしまうけど今は目の前の幸せだけを受け取っていたい。
すると一二三がニヤニヤしながら「早く俺をどうするか決めないと効果切れちゃうぞ」と催促してくる。それに今直ぐかよとリアクションを取ってしまうと一二三は俺の口元についてたのかご飯粒を取ってくれる。
「ゆっくりでいいぜ」
優しく微笑みかける一二三に窓から差し込む光に照らされて今日まで頑張ってきて良かったと思った。
(25.05.15)
実際の公式様、原作者様、団体、会社、人物、事件、商物、場所、政治、組織等とは一切関係御座いません。政治組織の持ち出し、悪用、改変、閲覧はお止め下さい。
公式様や原作者様にご迷惑お掛けしていましたら申し訳ありません。