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未夏さんの家の庭では色んなものが作れる。四季折々の季節物の野菜を作ってるみたいだけど今の時期は春なので今回は春キャベツをメインに収穫を頼まれていた。これも萬屋の仕事の一つであったとしても未夏さんの頼み事は仕事の部類に入れたくないのもあった。それでもこれは萬屋ヤマダの依頼としてだからと言われて仕事として心を入れ替えて作業に取り掛かる。採れたキャベツや他の春野菜の土を落として外の水道で水洗いをしていると部屋の中で見守っていた未夏さんが「お茶する?」と縁側から顔を覗かせる。少し休憩するかと俺は手を洗って彼女の傍へと行く。
縁側で二人腰掛けてお茶と茶菓子を食べながらのどかな春の景色を眺める。大きな桜の木が一本あってその木に咲いてる見事な桃色の花弁の色付きが一層花見を楽しませてくれる。俺は不意に隣を見てまだ彼女の処置の施されている脚を見る。


「ごめんね。忙しいのに来てもらっちゃって」
「全然大丈夫ッスよ。それより、脚の骨にヒビ入ったのって治ったんスか」
「えっと、治りかけで…走るのとかは難しいんだけど。お陰様で」


えへへと笑って脚を伸ばしてみせる。やっぱりまだ完治してないんだな。


「ずっと屈んで収穫作業は厳しかったから助かったよ」
「…いえ」
「でもごめんね。他にもスケジュール入ってたんでしょ?」
「二郎と三郎と出来たばかりのアニメグッズ店に行く予定だったんスけど、俺は何時でも行けるんで」


気にしないで下さいと笑い掛けると未夏さんも笑い返してくれる。二郎と三郎も収穫作業を手伝うと言って来ようとはしていたが他にやる仕事があるからとそっちに行かせた。それに俺と未夏さんの二人きりで会いたかったのもあったりする。
そよそよと春風が吹いて桜の花びらが舞い落ちる。今が一番見頃だからこの後雨でも降ってしまうものなら直ぐに散っちゃうだろうな。今が花見のピークだろう。
桜の木を見上げてた俺にそっと横から髪に手が触れて花弁がついてたのか未夏さんは取って見せてくれる。


「綺麗な黒髪だから桜も綺麗に映えるね」


優しくふんわりと笑う未夏さん。俺も彼女の茶髪の髪についてる花弁を見つけてとってみせる。花弁手に笑い掛ける俺に未夏さんも俺についてた花弁を手に控えめに笑む。


「私もついてたんだ。…でもこんなに一度に沢山散っちゃたら花見も長く出来ないね」


途端、ぶわと春風が少し強く吹き込む。未夏さんの手にある花弁が風に舞い上がって飛んでいく。どこに行ってしまったのか分からなくなった花弁に少し残念そうにして彼女は俺がさっきとったばかりの籠に入った自分が育てた野菜達を見つめる。


「新緑の季節になったらまた野菜が採れるから呼んでもいいかな?」
「はい。今度は二郎と三郎も連れて来ます」


強く風が吹いて花弁が今日で全て舞い落ちてしまうんじゃないかと思う程に木々から離れていって、こういうのが桜吹雪なんだろなって見上げていると、未夏さんの手が俺の髪にまた触れる。どうやらまた同じ所に花弁がついてたようだった。


「可愛いなぁ」


可愛い、と呟く彼女に少し違和感があって。未夏さんに言われるの悪くないんだが可愛いよりもカッコいいの方が俺は言われて嬉しく感じるのだ。だから違和感。その腑に落ちない表情をしている俺に気付いた未夏さんは小さく笑う。


「歌ってる時のカッコいい一郎くんと雰囲気変わるから。ギャップがあって…ごめん」
「い、いいんスよ」


ギャップか。未夏さんに言われるならやっぱり悪くは思えない。俺は大事そうに花弁をハンカチにしまってる彼女の茶髪にそっともう一度触れる。花弁を取るフリして、触れたかった。彼女はそんな俺に優しく笑い掛けて顔を近付けてくる。思わずドキドキして動揺してしまえば彼女は直ぐに離れていく。
花弁をとるのを口実にしようとしてたのを気付かれたようで上手く言えなくて、俺は笑って誤魔化してみせれば彼女は「可愛いなぁ」とまた俺を見つめて呟くのだった。



(25.04.19)



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