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桜の開花が近い頃、今年も卒業シーズンが巡ってきて式を終えた校舎の前では今日の主役でもある生徒達が各々友人や講師達と言葉を交わし合ってる。涙ぐむ人もいればこれから先の未来に胸躍らせる人も。そういう色んな生徒らの表情を見るのが好きだ。この日の為に俺ら教師は生徒らと共に日々を重ねてきた。三年間過ごした生徒が巣立っていく瞬間、忘れられない想い出の1ピースとなるのだろう。
友人と仲良さ気に話して何かを書き込み合ってる女子生徒の一人が俺に気付いて此方に駆け寄って来る。俺にもそれを見せるとその娘が何時も授業の時も欠かさず手にしているメモノートでそれの裏表紙にびっしりと友人や他教師のメッセージが書き込んである。


「盧笙せんせー、ここにメッセージ書いて!」


ペンを受け取り俺もまだ空いてる隅っこの方に書き込むと俺のメッセージを見てか女子生徒は涙ぐみ始める。キャップをペンに付けようとしている所で急に泣かれてしまい女子生徒は少し驚いてる俺に笑顔に変わって手を左右に揺らして「そんなんじゃない」と困らせるつもりは無かったと言う。唯、俺のメッセージや書体を見て最後になるのだと思ったらしく寂しくなってしまったようだった。


「先生、本当に今まで有難う御座いました。先生の生徒で良かったです」


また何処かで会えたらいいねと言葉を添えて女子生徒はペンとメモノートを受け取って涙を浮かべながら笑って次の書き込んで貰う教師の元へと移って行く。こういう卒業のワンシーンで胸に響くのは俺だけでは無い筈だ。感情が高まるのが抑えきれず俺も涙ぐみそうになっていると、後方に気配がして振り返ろうとしたら何かが頰に当たる。指先でそれが簓の指だと分かって俺は笑む簓を見て薄っすら濡れた目元を慌てて拭う。


「簓、何時から見てたんや」
「盧笙がメモ帳受け取ってる辺りからか?」
「ほぼ全部やないかい」
「一度は見てみたかったんや。盧笙が青春してるとこ」
「青春しとるんは生徒であって俺やない」
「そないなこと言わへんで」


簓の手が俺の肩に乗るとポンポンと撫ぜられ肩を組む形に。それを発見した生徒らにスマホで写真を撮られそうになる。その瞬間に零も俺ら二人の後方について入ったのかシャッター音の後に振り向いて見上げれば簓も零もノリノリでピース等していてばっちりどつ本記念写真なんてものになってしまった。


「写真撮られたな」
「てか零、後ろに立つと背後霊みたいになるやん」
「そりゃあ俺でも分かるぜ?親父だけに親父ギャグだってな」


簓と零は顔を見合わせて笑う。笑ってる場合やないと俺は言えば零は「いいじゃねぇか。こういうめでてぇ時くらい」と桜の木の方を見やる。その方を俺らも向くとそこでは制服のボタンを交換し合ってる初々しい男女がいた。


「青春やなぁ」
「んじゃ俺等も青春すっか」
「は?何する気や」
「祝い酒をこの後何時もの居酒屋でな」


どこが青春なんやそれの、と言い返すと零はガハハと豪快に笑ってみせる。一気に卒業式気分が変わったな。何時もの酒って聞くだけで完全おっさん発言やろ。


「でもまぁ、簓と盧笙は毎日が青春真っ盛りだろなぁ」
「見せられる限りでこれからも見せたるで〜」


ワキワキと簓が両手を動かし始める。俺は迫りくるその手から身をかわして避けると「盛んなアホ!」と声を上げたのだった。




(25.03.29)



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