hpmi


ヨコハマの悪を根こそぎしょっぴくなんて無理な話だが目に留まった悪行は片付けておきたい性質だ。銃兎から犯罪を密かに匂わせる組織を見つけたと聞いて理鶯がかき集めた情報を頼りに潜入すれば最初は俺の顔が知られているから真正面から断られると思ったのにすんなりと受け入れられた。その辺りからこの匂う組織の長である「マダムブルー」と呼ばれる女が中々やり手の予感がしてその不安を持ちつつもフレンドリーに接し続けて表向きは良い顔をしていれば予想つかない事態に事は進んでいく。マダムの側近の青年とも呼べる若い男子が俺と思いがけず仲が深まってしまい一言で言うなら愛着というものが湧いてしまった。これはシミのように広がっていき敵だというのに自分から底なし沼に脚を突っ込んでいるような感覚さえあった。此奴といると俺は当初の目的が達成出来ない。なのにこのガキは磁石のように俺と引き合う。青年の方もそれが分かっているのか最近では互いにすれ違う度に動揺が隠せなかった。
ある日俺は青年、湊を中庭に呼び出した。それなりには自分の事を分からせておいて此方側にどうにか引き入れようと思っていた。此奴がこんなまだガキしか言えねぇような外見のような奴が危ねぇ橋を渡ってしまうのが何処か自分の中で許せなかったんだと思う。なのに湊の奴は俺の言葉を最後まで聞いてから一呼吸置いて笑い出す。そして中庭の真っ赤な色した薔薇の花弁に指先で少し触れてから溜息をつく。昨晩降った雨露が指先を濡らす。


「マダムは…僕を幼い頃から育ててくれたんです」
「……」
「これでもかけがえない絆で繋がってると思ってます。自分達があまり世間では良い位置にいない事、よく思われてない事も」


湊の指先が薔薇から離れる。そして深い海のような色した瞳で俺を見つめてくる。


「左馬刻さんの追ってる事件、本当はマダムは無関係なんじゃないですか」
「は…」
「僕を心配してくれているのは感謝してるし嬉しいです。でも」
「おい、何処まで知って」


湊の瞳の色に更に黒が差して淀んでいく。横目にキツく見る此奴の視線が脳裏に焼き付くような気がして愛しくもあり不快でもあった。俺はふつふつと沸き起こる感情を表に出しそうになった時、銃兎の声が後ろから近付いてくる。


「そこら辺にしとけ」
「あ?」
「マダムはこの事件には…無関係だ。これ以上は深入りするな。今さっきマダムと会って左馬刻は組織から離れるよう話をつけてきた」
「勝手な事してんじゃねェ!」
「左馬刻さん」


湊の声が会話の中に割って入ってきて振り返る。湊はさっきと違って真っ直ぐに此方を見ていて俺は苛つく心を抑えるように髪を掻き上げる。


「左馬刻さんの事好きです。だから…これ以上はマダムにも貴方にも傷付いて欲しくない。僕の中でマダムがかけがえない存在であるように左馬刻さんも同じなんです」


湊が一歩前に出て下を向く。一瞬見えた表情は泣き出しそうだった。俺はその頭を抱き寄せて撫でる。


「やめろ、泣くな」
「ごめんなさい」
「もういい。…悪いのは俺の方だ」


それから互いに言葉が見つからずにいて、銃兎が間に入って湊と別れこの場を後にした。中庭にいる湊が見えなくなると後ろを歩いていた銃兎が隣につく。


「気を落とすなよ」
「…分かってる」
「マダムもお前を知っててこの二ヶ月間傍に置いていたんだ。お前が全て背負う事は無い」


さり気なく気遣うような銃兎の何時もより柔らかい声質に俺はふっと口元に笑みを浮かばせる。それに気付いてか銃兎は少し困ったような表情を浮かばせる。


「何だよ」
「ウサちゃん優しいじゃねぇか」
「…置いてくぞ」


上着のポケットに手を突っ込んで溜息をつくその姿が俺を追い越して先を歩き出す。俺はその横に再びつくと煙草を二本取り出し一本を銃兎に差し出して銃兎はそれを受け取った。



(25.03.27)



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