hpmi
数日後に雪が降るという予報があってその日に被らないように空却くん達の住んでるシェアハウスへと向かう。今日は空却くんも十四くんも修行してないのか寺院にはおらずシェアハウスの談話室でまったりとしてるのを見つける。獄さんもいて三人で何をしてるんだろうと聞いてみたら何もしてないと返される。それでも外ではしゃぎまわってたり修行はしてないけれど手元には何か読んでいて後ろから覗き見てみれば旅行雑誌だった。獄さんのらしいけど三人でバイクに乗ってツーリングでも行くのかなと思ってみても空却くんと十四くんはバイク持ってないし運転出来ないもんな。じゃあ車とかで行くのかなとさり気なく聞くと空却くんは私の方を見ずに頁を捲る。
「実里とデートする時のプラン決めてんだよ」
「え。本当に?!どこ行きたいの?」
「ここ、行きてぇなぁ」
「何処の県…って、国外じゃん!」
「中々良さ気な食いもんがあんだよ」
そう言って雑誌の写真を見せてくれる空却くん。それを見て確かに美味しそうだけど何時もナゴヤって言ってる地元愛の彼が国外に行きたいと言い出すのは私に合わせてくれてるという事だろうか。というよりまだニホンの各地もろくに知らない私が二人で旅行なんていいのか、なんて言いたい事は沢山思い付くけど空却くんはそれを悟ってか「今度行くか」と私の論議しそうな表情を押し切ってまた次の頁を捲る。
「何処行きてぇのか言わねーと拙僧が全部決めちまうぞー」
「全部!って事は一つの国だけでは御座らん?」
「はあ?旅行は色んな国飛んだ方が楽しいだろうがよ」
「でもさ、でもさ。今、国外旅行ってお金結構かかるよ?」
私のお金の話に反応したのか違う雑誌を見ていた十四くんが同意の声を出して私と目が合わさる。
「物価高ってやつですよね。アルゴージスのバンド仲間も最近国外旅行行ったみたいなんですけどやっぱり殆ど買えないって」
「じゃあアレだ。次のラップバトルで勝つしかねーな」
「ええ?!やっぱりそうなっちゃうんスかぁ~!」
十四くんが頭を抱えて弱気な声を出すと空却くんは雑誌を閉じて立ち上がる。何だか少し苛ついている。この二人似ているようで考える事正反対なんだよなぁ。十四くんのもう一人のモードはとにかく。
「なぁに情けねー声出してんだ!そうと決まったら喉が枯れるまでラップかますんだよ。おら、行くぜ」
「ひぃ」
十四くんの首根っこを掴んでその隣でバイク雑誌を見ていた獄さんの腕も掴む空却くん。それに獄さんは片手で雑誌を閉じると「俺もか」と言って空却くんを見上げる。空却くんは何処かそのやる気のなさそうな二人の態度についに怒りメーターに火がついたのか鬼の形相に一瞬なると二人に叫び返してグイグイと部屋の外に出そうとする。それに私は待ってと呼び止める。彼の傍に寄って鞄の中から数日前から編み始めた手編みのマフラーを取り出しそれを彼の首元に当てがって最終確認する。
「出来たのか」
「うん。着けてく?」
「おう」
マフラーを彼の首元に柔く巻いてあげる。それを見ていた十四くんがうっとりとした表情でラブラブと呟くと大人しくしてた空却くんは振り返って見てんじゃねぇぞと照れ隠しに叫んでマフラーの先のポンポンを肩の後ろに回し入り口の方へと先に歩み出す。
三人が談話室から出て行き寒空の下で修行を始めるのを窓から眺める。膝の上にはさっき彼が読んでいた旅行雑誌と開いた頁。彼と何処までも行けたらいいなと夢見てはそのいつかの時に思いを馳せた。
(25.03.04)
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