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乱数の事務所で何をするでも無く寛いで一時間経った頃自分のスマホを見ていた乱数が美味しそうと呟く。何が美味しそうなのか分からなかったので聞いてみると見ていた画面を我々に見せてくれる。鰻丼の写真が載っている。帝統がそれを見て花札を弄っていた手を止めて目を輝かせて乱数のスマホを食欲丸出しで食い付くように凝視している。鰻といえば安い物か高い物で別れるがこれはどうも高い方らしく写真の下の説明欄に「炭火焼き」と書かれている文字を見て納得する。
「炭で焼くか焼かないかで値段も質も変わるといいますからね」
「ねぇねぇ食べに行こうよ」
「今からですか?」
「うん!あ、帝統。これ結構お高めだからお留守番してていいよ」
「そんな事言うなってぇ〜!俺も食いたぁーい鰻」
ニコニコと笑顔を向けて帝統の鰻丼の分のお金を払いたくないと拒否する乱数に帝統は乱数の腕にしがみついて甘えるように強請っている。それでも拒否しながらも乱数は特上はダメだよー?等と結局は帝統に甘いようで帝統はそれに八重歯を見せて眩しい笑顔を見せている。店に行く事に意見が一致した所で外に出て近場の鰻丼の食べられる店を探して練り歩く。帝統は歩きながら店に着く直前で鰻丼の値段を今になって聞いてくる。
「4200円だけど」
「高ぇな!さすが鰻」
「味わって食べたまえよ有栖川」
「その呼び方何か違和感あんだろ。ちゃんと味わって食うって」
何時もながらにやり取りしてる二人の会話を耳に入れ店の前までやって来ると店の前には二、三人の人がいて思ったより空いてるなぁと思っていればどうも今日は定休日らしいんですよとその人達が親切にも教えてくれる。それに楽しみにしていた乱数と帝統は声を揃えて不満の声を出し始める。私は教えてくれた人達に礼を言って取り敢えず店の前にいても意味が無いとこの場を後にする。
「ここまで来たのに休みなんて聞いてないよ〜」
「鰻食いたかったぜ」
「また今度来ましょう。それとちゃんと定休日を調べてから」
はぁいとまた揃う声。三人でやっと歩き出せば帝統のお腹の音がここからでもよく聞こえる。それに何か食べないとかなと乱数は新たに店を検索し出す。鰻は今は難しいとしてじゃあどの食ジャンルでいくんだと構えていたらここはどう?と見せてきたのは焼肉店だった。地図を見ればここからそう遠くも無い。でも何故焼肉がいいのか聞くと乱数ははにかんで笑って「炭火焼きだから」と言う。
「おっと、ちゃんと韻を踏んでますね」
「いや違ぇだろそれ」
「でもここ凄いランチコースが安いからお得だよ。ねぇ行こー?」
「宜しい。では進路変更するでおじゃ」
直ぐ近くにあって安いランチコースまで付いてる店なんて夢のようだと会話を弾ませて焼肉店に向かうと今度は店の定休日にぶつからずちゃんと数台車が停まっていた。早速中に入ろうと入り口の暖簾を潜ろうとしたら中から男三人が出てくる。直ぐに神宮寺寂雷と伊奘冉一二三、観音坂独歩だと分かって乱数は表情を曇らせる。
「飴村くん。会って早々その顔は何ですか」
「…何で寄りによって…ジジイに」
「聞こえてますよ」
「飲食店でバトんのはやめようぜ?てかここの肉めっちゃ美味かったんだって。なぁ独歩?」
「あ、ああ。…カルビが」
「そうカルビ!牛タン最高!だから喧嘩はやめよーぜ?」
ウィンクする伊奘冉一二三に帝統も渋い顔を向ける。この場で一人だけテンションが高いが喧嘩はやめようという意見は店側としては一理あるものだった。というより神宮寺寂雷の事だから乱数の何時もの態度に感情をセーブする事くらいは出来るのだろうけども。…それにしてもこの二人の仲の良さ悪さといったらどうなんだろうか。
「飴村くん、元気そうですね。体調は」
「お前の患者とかじゃねぇんだけど…いいから通して」
「相変わらず君は口が悪い」
「…?」
ドライな会話を交わしながらも神宮寺は何かを乱数に手渡す。それを見るとこの店のクーポン券だった。乱数は無表情で神宮寺を見上げると神宮寺は「良かったら使いなさい」と言って微笑する。それに乱数はやっぱり無愛想に雑に受け取る。
「何かあったら何時でも連絡しなさい」
「分かったって!」
入り口の店の前にいる寂雷をグッと押し退かして乱数は先に店の中に入って行く。麻天狼三人との今回のやり取りはそれっきりで肉を焼いてる間も乱数は上の空だった。乱数の身体の具合を心配はしてだろうが乱数を気に掛けるのは医師としてなのかそれとも師と弟子の関係から思いやってるのか。分からないが前よりかは穏やかな関係に何処かなってるようにも思えた。
私と帝統が声を掛けてやっと我に返った時には乱数の肉は焦げ過ぎてまさに炭になっていた。
(25.02.23)
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