hpmi


イケブクロのよく買い物に使ってるスーパーで久し振りに萬屋の仕事を手伝いにやって来た佳梛と一緒に夕飯の買い出しをする事になって安くなる時間帯を狙って行く。一兄は事務所で事務仕事をしてるし二郎はまだ外周りの猫探しから帰って来なくて二人で丁度良いから行って来いと言われたのもあってだ。スーパーはそれ程遠くは無くでも時間帯が時間なので人が殺到する。それを覚悟して行けば思ってた通り入り口から分かる店内の人の密度。カートに籠をセットして気合いを入れて中に入る。店内に入ると直ぐに目に入るのは野菜コーナーで今日は野菜をふんだんに使った野菜カレーにすると一兄が言っていた。その材料に必要なのは勿論野菜だが家にストックがあるのもあるので今必要な物しか買わない事に決めている。佳梛は一兄から渡されたメモを見て「じゃがいも」と読み上げる。一番安いじゃがいもの袋を手に取ってから籠の中へインする。


「えっと…あとは」


メモを見ていた佳梛が不意に顔を上げて野菜達の横に売られてるセール品の籠に急に興味を示し始める。その中の調味系の品に手を付けてる佳梛の手からそれを取り上げて箱の中に戻す。


「次は」
「あ… すみません。えっと、ナスです」
「ナス、ね」


カートを押して直ぐ近くにあったナス売り場へ。そこのナスを一つ手に取って選び出す佳梛は籠に入れようとする。三個で〜円とかいうタイプの売り方だったがどうも普段との値段を比較してみると微妙に価格が今の方が高くなってしまう。直ぐに計算した僕は頭を横に振ると佳梛も気付いたらしくナスを箱に戻す。もう一段階安く買える袋入りナスが隅にあってそれを代わりに籠へ。質より値が重視が僕ら山田家の決まりだった。


「あ」
「何、どうした」
「ミートボール」


何か香ばしいような煮詰めてるような匂いがしてその方を見ればミートボールを実際に作ってみせて試食が出来るようだった。トレーの上の出来立てのミートボールを貰ってもぐもぐと食べてる佳梛に僕も貰って食べる。佳梛は食べたばかりの品の「誰でも簡単ミートボール!」と書かれたフレーズを見てこれにも興味を示しているようだったけど今日はそれは買わないと教えてやればちゃんと理解出来たようで小さく頷いて手にあるミートボールの袋を戻す。ここまで分かったのだが佳梛の奴、スーパーの買い出しやお使いを一人でした事がなかったらしかった。しかも僕より数学得意なのにナスを単に買う事ばかりに気が入ってて値段を比較してない。というより買い物術が無いので元から分からないのだ。それに仕方ないかと一つの可愛気ととって納得してカートを押して試食場から離れると佳梛は僕が教えたカレールーを棚から取って入れながら一兄の話題を持ち出してくる。


「カレー作るの得意なんですよね」
「当たり前だろ」


佳梛はそれに楽しみそうに笑うと、少し子供みたいな嫉妬心が湧いてしまう。一兄と比較するこのもおこがましいけどでも佳梛が言ってしまうと兄と張り合うなんて愚かな事したくなってしまう。僕は此方をジッと見つめている佳梛に「僕も上手いんだ」と言ってやると佳梛は何だか嬉しそうに笑ってて今度作ってやるとも言ってやった。
レジで会計を済まして入り口前まで来てどんよりと雨雲が近付いてて今にも降りそうで佳梛に早く帰るよう催促する。それでも手に荷物をお互い持ってるから急ぐのも程々だけど。
早足で歩きながら道を歩んでいるとあと少しという所で雨が降ってきてしまった。仕方なく二人で雨宿りにシャッターが閉まってる小じんまりとした店の前に立ち尽くしていれば僕は大切な事を思い出してポケットから例の物を出す。それを見て佳梛は結構驚いていて買い物袋を少し音をたてて雑に置く。


「どうやって手に入れたの?!」
「まあ…色々と。軽く手回しで」
「凄い!…あ、これ誰に?」
「佳梛に決まってるだろ」


手に持ってるもうすぐやる自分が出る決勝トーナメントのチケットを佳梛の手元に寄せれば佳梛は一人悶絶するように喜んでいる。凄いな、佳梛ってこんなリアクション出来るのか。外はどんよりとした気候なのに花咲いたように眩しく微笑み「有難う」の一言。今はそれがかなり効いた。


「どー…致しまして」


自然と寒い筈なのに火照りを見せている頬を掌で隠して雨脚が弱まった空を仰いで佳梛にチケットをしまうように言い、二人帰路についた。




(25.01.30)



実際の公式様、原作者様、団体様、会社、人物、事件、商物、場所、組織等とは一切関係御座いません。政治組織は創作物の勝手に持ち出し、悪用はお止め下さい。



57/100ページ