hpmi
シブヤの公園には不思議な人がいる。なんて噂が立っていたけど今ではその人物のこと知らない人はいない。彼がディビジョンバトルで有名になってから彼とはあまり会ってはいなくて私の他にもご飯くれる人なんて増えただろうからって決めつけて。私は…いつまでもこの立ち位置から変わらない。彼にご飯をあげるというだけの関係しか。
雨と風の強い小さな嵐の日。飛ばされそうな傘を押さえて何とか仕事場からホームまで移動して電車に乗りシブヤに帰ってくると公園に差し掛かった所で低く唸る声が聞こえる。何だろう何かの動物?と思ったけど全然そうじゃなくて人が草藪の中で疼くまっていた。私は傘を放り出して駆け寄る。男の人の様でよく見れば有栖川さんだった。
「有栖川さん!」
「…那子?」
私に気付いたらしい有栖川さんはお腹を押さえていて何か悪い物でも食べたのかと思ったけど私の心配気な視線に蹴られたと掠れた声で言う。そんな酷い事する人がいるだろうか。いたら警察沙汰だけど、考えてみたら有栖川さんは有名で名が知れ渡ってる上にギャンブラーの顔がある。もしかしたらだけど悪質なギャンブルに引っ掛かってしまったのではないかと無い頭を回転させて必死に考える。
取り敢えずお腹の他にも傷が多かったので手当てしなくちゃと家まで連れて行こうとするけど男の人を支えてここからは距離があって今は止んでいるが雨天の気候。しかも怪我人に歩かせるのは難しい。少し考えてちょっと待ってて下さいと一旦公園から出て行く。
「有栖川さん、起き上がれますか?」
近くのドラッグストアで怪我とか腹痛に効きそうな薬やミネラルウォーターを買って袋から出して広げていると有栖川さんは起き上がれないようで首を横に振っている。無理して起き上がると傷口が悪化してしまうからこのままあまり身体を動かさないで処置しようと膝の上に彼の頭を乗せて濡れタオルで傷口を拭ってから消毒液を垂らしていると一瞬痛そうに顔を歪めてから彼は微笑する。
「なあ、会うの久し振りだよな」
「そう…ですね」
「元気してたか」
何時も大きな元気な声で話す彼が力無く話して瞳に涙を滲ませている。そして私を見上げる。いつの間に止んでいた雨風がシトシト雨になって降り出す。彼の瞳を見て分かったような気がしている。彼は私と会えない間少しでも寂しかったのではないかと。有栖川さん彼に限ってそれはあるのかなと思ってしまうけど彼の声色と眼差しでやっぱり分かったような気がしてしまう。
手を止めて動揺してる私に有栖川さんは身体を浮かして唇にそっと唇を重ねてくる。いきなりでびっくりして顔を離すと「いっでぇ」とやっぱりまだお腹が痛いのか声を上げる。
「あ、安静にしていて下さい!」
「へへ…そんな事も言ってらんねぇんだよなぁ…那子が可愛すぎて」
「何言ってるんですか…」
「今度は」
有栖川さんの泳いでた目線が私を真っ直ぐに見据えてくる。
「出来るだけ…会えるようにしてくれ」
控えめに告げた彼に私は自分が彼に忘れられた存在なんかじゃないどうでもいい人では無いと少し自信が持てたように思えてこんな時でも嬉しく思ってしまう。有栖川さんもつられて笑うとあーと小さく唸って身体を丸まらせて頭を上にずり上げて私にもっと密着してくる。
「女の膝枕って最高だよな」
「…色んな人にしてもらってます?」
「んなわけねーだろ」
「してたとしても、このポジションに勝るものは無し」と小さく呟く彼。私は唯この人からずっと離れられない理由が見つかってしまってとにかく嬉しくて。甘えるような彼にもっと依存してしまいそうな自分を抑え込むのに必死だった。
(24.07.02)
実際の公式様、団体様、会社、人物、商物、場所、組織等とは一切関係御座いません。