hpmi


別の組のヤクザとの仲を取り持つ為に若頭同士の顔見せが数時間前にあった。それが終わった途端にあっちの若頭の側近を何故か面倒見てやってくれという話に突然なった。何でそんな面倒な事を引き受けなくちゃいけねぇんだと文句を垂れれば無言で圧をかけられたから仕方なく従った。その問題のあっちの若頭の側近というのがまだガキとしか言えないような生意気な奴でどこか行きてぇ場所はあるかと聞いてみりゃあゲーセンという始末。何で俺がガキのお守りなんてしなくちゃいけねぇんだと今にも投げ出したくなった。
こいつの名前は蒼柳湊という名らしくゲーセンに向かってる間に聞いた。青って所が一緒ですねと言われたが別に何とも思わねぇ。ゲーセンに入ると蒼柳は俺を射撃ゲーム機の前に誘う。ゲームが始まると湊はゲーム用の銃を早撃ちして見た事ねぇ銃捌きを見せつけてくる。撃ち終わるとクルリと銃を手の中で回して元あった場所に戻す。結果を見ると適当に撃ってたわけじゃなく全てきちんと当たっていた。隣でニコニコしてる蒼柳を見下ろす。蒼柳は「次行きましょー」と楽しげに俺の腕を掴んで今度はカーレースゲームをやるようだった。そこでも初っ端からぶっ飛ばす勢いの運転を見せつけられる。一人楽しそうにしてる蒼柳に俺自身は何もしないで見てるだけだったが今度はカラオケに行きたいですと言い出してきやがった。
ここまで見て此奴銃捌きから車の運転からして中々ゲーム戦績と同じぶっ飛んでる奴だと思った。そういうのがこの世界では使えるのかは分からねぇが普通じゃねぇのは分かる。
三時間のカラオケを終えて二人で帰路を歩いていると蒼柳は夜景を見ながら「あと一時間かぁ」と呟く。


「蒼柳」
「はい。何でしょう」
「お前…友人とか親しい奴いないだろ」


蒼柳の意表をつかれたような表情。成る程な、こいつ若いうちからこの世界にどっぷりハマってるらしい。蒼柳は苦笑いする。


「そういう事言います?」
「事実だろ」
「こういう仕事してるとそういうの煩わしくなるというかいらなくなってきちゃうんですよね。巻き込むから」


巻き込むなぁ。確かにそうだな。けどこいつ今日見てきて分かったがやっぱり全然頭の中ガキみたいな奴でカタギの世界でやりてぇ事がまだまだ沢山あるような気がした。でもきっと自由にはなれねぇ。この世界にいる限り。
俺のスマホが鳴る。音声着信で発信者が火貂組の俺の側近の師弟からだった。今日あった事を少し話して蒼柳をチラと見て耳にスマホを当て直す。


「蒼柳だけどな。俺んとこに一泊してく。…ああ、そうだ」


通話を直ぐに終える。蒼柳は少し呆れたような顔をしている。あ?何だその顔は。


「何考えてるんですか」
「何も。唯ガキの人生相談に一日付き合ってやるってだけだ」
「やめといた方がいいですよ」
「あ?寝首でもかく気かよ」
「違いますって。今日僕といて分かったと思いますけど僕、振り回すタイプなんです」


蒼柳をジッと見る。何だか少し悲しげな表情をしている。それを横に俺はそうかよとだけ呟くと我慢していた煙草をポケットから出して蒼柳の前に見せる。吸ってもいいかと聞くと「どうぞ」と言って小さく笑っていた。




(24.10.12)



実際の公式様、原作者様、団体様、会社、人物、事件、商物、場所、組織等とは一切関係御座いません。創作物の悪用はお止め下さい。



29/100ページ