hpmi
上空で打ち上がる標的。見てて惚れ惚れする程的確にそれを次々に射止めていく理鶯さんの射撃の腕前を眺めること数十分。近くで眺めていたこのクルーズ船の来客も小さな拍手を送っている。クルーズ船にMTCと乗船する事が出来たのは本当に奇跡だった。というより左馬刻の女として側に置いて貰ってる時点でそうなのだろう。左馬刻はコロコロと女を変える浮気性だと思ってたけどもう付き合って結構経つし長く持ってる方だと思ってる。でもたまに不安になったり周りの目が気になってしまう。それも付き合って覚悟していた事なのに。敵のような存在が束になって押し寄せてくるそんな心地だ。それでもお互い離れたくないのは分かってるから別れてやらない。左馬刻とは。別れたら…生きていけないくらいにはきっと辛くなるから。でもたまにこういう目の前で理鶯さんのようなファインプレーとか見てしまうと褒めてしまうのもお互い様だった。隣にいる左馬刻が即座に反応する。
「理鶯さんカッコいい」
「ぶち犯すぞ」
「あはは。理鶯さんカッコいい、イデデ」
「犯すぞゴラ!」
左馬刻の前で他の男の名前でカッコいいと言うのは御八度なのに私みたいなのは簡単に口にしてしまうから直ぐ小さな喧嘩になってしまう。そういうのがいけないんだと分かっていてもやってしまう。どう反応してくるかとか駆け引きみたいな。付き合ってからやるもんじゃないのに恋愛ゲームみたいな事を懲りもせずやり続ける。
ドリンクバーでジュースを用意していた銃兎さんが戻って来る。手に見慣れない色のスムージーみたいなジュース。礼を言って受け取ると「これは?」と聞く。
「アサイジュースです。美味しいし健康にいいんですよ」
「カクテルがあっただろ」
「今はやめろ」
「ンでだよ」
「酔ってこんなとこで羽目外してみろ。里那さんもいるんだぞ」
銃兎さんの発言にハッと左馬刻は鼻で笑う。私が多分意味も無く会話に出てきちゃったけど。左馬刻はジュースを受け取りながら「俺様は酔い潰れねぇんだよ」と言ってジュースに口を付ける。そんでグラスを二度見すると旨ぇなと呟く。
理鶯さんがクレー射撃を終えて戻って来る。私達の足元にあるバッグからタオルを取り出すとそれで顔や首周りを拭いていてその最中に「カッコよかったよ」と声を掛けると左馬刻が面白いくらいに反応する。
「里那、テメェ。喧嘩売ってんな」
「左馬刻もやるか?」
「やるわけねぇだろ。てか里那。来いや」
「わ」
半分一気に飲んでジュースを銃兎さんに手渡して私の分も奪って渡すと左馬刻は私の手を引いて抱き寄せる。そのままダンスステージへと誘われる。曲が変わる。ちょっとノリの良いアップテンポの音楽。よく外人さんとかクラブで踊ったりするけど私はそういうの全く経験無いからどうすればいいのか分からなくて私の腰に手を回してる左馬刻と向い合わせになったままヤケになって声を上げる。
「だぁー!私踊れないのー!」
「スイングだ、スイング」
そう言って笑む左馬刻様は随分とクルーズ船イベントを楽しまれていらっしゃるようで。私も左馬刻や周りの人の真似して踊ってみるけど何だかやっぱり慣れてないとなぁ。顔を染めているであろう私に左馬刻は尻に手を持っていこうとしてその手を前を向いたままペチと軽く叩く。キレられるかなと思ったけど左馬刻は笑ってて私を抱き寄せるとやっぱり楽しそうにしてた。それだけで此方も楽しくなってくるから不思議だね。
二人だけの世界になった視界の先で初めて見る二人のイチャつき振りに目が離せなくて食い入るように見てしまう。左馬刻あいつ、わざと見せつけてるのかなんて。
「何だ銃兎。妬いているのか」
「いえ。そんな事は無いですよ」
仕事用のスマイルで理鶯に即効で返してやると理鶯はそうかと笑って小さく無理はするなと続けて余計に言うのだった。
(24.10.10)
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