hpmi
理鶯のキャンプ場から火貂組が所有してる建物の屋上へと来る。屋上にはプールがあり夏場の暑さのピークも去って入るには少し肌寒さも残るってのにプカプカと水中に浮かんではぼうと夜空を見上げている女の姿。こいつの名前は白北未実。火貂組の取り締まってるシマを荒らした男達から人身売買で売られそうになってた所を俺が助けて今ん所ここで匿ってる。でもこいつ怖い目にあったってのに呑気にここの施設の屋上プールなんかに入っててやけに仄暗いプールだったからそこで浮かんでる未実はどこか今にも消えちまいそうなそんな儚い気さえあった。
「何してる」
プールサイドまで行って吸ってる煙草の白煙を吐く。未実は視線だけ此方に向けると浮かんだまま俺を横に見て「満月だと思って」と言って小さく笑う。まあ確かに満月だ。今にも届きそうなくらいの。
「満月なのは見りゃ分かる」
「綺麗だよね」
大きな月を見上げたまま手を伸ばすがその手が月を掴める事は無い。なのにこいつはまるで月に恋してるような目をして言葉にする。月に夢でも見てるのかなんて言葉が浮かんだ。そんでもってどうしようなく虚しさを感じた。
「未実」
「何?」
「いいもんやるから此方来い」
浮いてた身体を起こして未実は俺の元までやって来る。見上げるその頰に手を持っていくとその頬を掴んで軽くおちょぼ口の様にする。未実は直ぐにその手を退けると俺を敵意は無い瞳で睨んでくる。
「ちょっと笑ってないでよ。これがいいもんなの?」
「せがむようじゃ俺様の隣に立つには不似合いだな」
そう言ってやるとこいつはキッとした目をして俺の胸倉を掴んで引き寄せる。キスされんのかと思ったがそうでもなく急な反射神経も働かずにしょうもなく水中へと身体が落ちてしまう。水飛沫が上がって水中から顔を出すと俺は未実の側に寄って大声で叫び掛ける。
「っぶねェなァ!」
「えへへ」
「えへへじゃねぇんだよ」
吸ってた煙草の吸い殻が水ん中に落ちた時に手からどっかに行ったのか探すとプールサイドにあった。水をかぶって火が消えちまってて煙草一本でも俺にとっては貴重だったから舌打ちが出てしまいそうになる。それを見て笑ってる未実の顎を掴むと俺は顔を近付ける。未実もキスされんのかと一瞬構えたような姿勢になったがその反応だけ見て肩を押して退かす。
「何、期待してんだ。わざとに決まってんだろが」
「ふ」
肩を男にするみてぇに押されたってのに未実は特に気にする事も無く笑う。そして俺を見て切なそうに目が細められる。綺麗と月光の下で俺を見て呟くその声はやっぱり今にも消えちまいそうな程に儚かった。
(24.10.08)
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