hpmi
十月にはイベントがあるって事は何となく前からは知っていた。自分の誕生日の七夕くらいしか覚えていなかった俺も乱数達とチーム組むようになってそれも一変した。乱数の誕生日のバレンタインデーと幻太郎の誕生日のエイプリルフール。それだけは忘れる事なく毎年盛大に祝ったりして。イベント好きな乱数に合わせるようになってかシブヤの街が賑わうハロウィンなんかも俺の記憶の棚にあってこの日を覚えてる理由は一つに限った。仮装してる乱数に会う為だ。
仮装舞台会場みてぇな街中を歩いて時折話し掛けられながらハチ公前に来ると今年も一際目立つピンク髪の魔女がいて目が合う。その後ろ姿だけで乱数だと分かって俺を見つけるなり乱数はこっちに嬉しそうに駆け寄って来る。近くで見ると存在感有り過ぎな魔女だ。
「帝統だ!ハピハピハロウィン!」
「出たな魔女っ子乱数」
「違うよ。これは魔法少年」
「何が違うんだよ」
帽子の広い鍔を持ってくるっと回ってみせる乱数に下がズボンだから魔女じゃないのかとも思ったけどこれだと魔女っ子にしか見えないのは黙っておく。乱数は話してたオネーさん達と別れるとどこかでお昼にしないかと歩きながら聞いてくる。乱数と歩き出した途端に声掛けられる率が高くなってそれに普通に驚いてしまう。
「その格好で喫茶店か?」
「うーん。今日くらいは別にいいと思うけど…ワゴンフードがいいんだよ」
「じゃあ、あの寿司ロールはどうだ?」
乱数がオネーさんに声掛けられてない間を見計らって話し返し寿司ロールのワゴン車を指差す。その幟旗と看板を見ていいねと賛成してくれる。昼飯が決まって二人でそのワゴンに向かい列に並ぶ。勿論脚を止めれば乱数に向けられる視線や声も鮮明になってくる。さすがはシブヤのアイドル。
「ちょっと派手過ぎじゃねぇか?」
「うん。自覚はしてる」
「魔女っ子乱数」
「魔法少年」
「さっきから言いてぇ事あんだけど」
「えっ、なになに?」
目を瞑って気難しい顔をしている俺に乱数は深刻そうな話なのかと気構えている。俺は目を開く。何時ものある意味で美しいフォルムの素早い謝罪ポーズで頭を下げる。
「魔法少年!奢って下さぁあい!」
何とも間抜けな声が出た。周囲のFPファンからはクスクスと笑われているがこれが俺のキャラなので特に気にするなと自分に言い聞かせる。金がねぇのは何時もの事。乱数は俺を呆れたように見下ろし溜息をつくと両手を合わせて伏せている俺の頭上に手に持ってる星型のステッキをクルクルと回し出す。
「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン」
「…何だ?テクマク?」
「もう黙ってて!今から帝統に幸運パワーを送り込むから」
「おお助かる!」
「でもその代わり帝統も僕にちゃんとラブパワーを送ってね」
じゃないとイタズラしちゃうよと首元にステッキの先の星を突きつける。ラブパワーか。ラブパワーなぁ。俺は笑ってそのステッキを受け取り乱数にも魔法をかけ始める。
「えっと、何だっけか呪文」
「テクマクマヤコン」
「テクマク…テク、だーっ!」
「わ」
呪文をかけるのが煩わしくなって乱数の身体を浮かせるくらい抱え上げる。人目も気にせず声を張り上げる。
「マジで好きだぁー!」
「えええ!?」
周囲のシブヤ民が一斉に皆注目してざわめき出す。乱数は周りの視線や声に今まで特に気にしてなかったのに気にし出して俺と自分が笑われているのに頰を染めて「もー恥ずかしいなぁ」と呟いていた。
(24.10.05)
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