hpmi
飯が進むような食欲をかき立てる匂いが広がり鉄板の上の肉達がどんどん炭火焼きになっていく。焼肉店には滅多に行く事も無いから店内の雰囲気とか昼間なのに宴会モードの客の多さとか何もかもが久し振りで兄弟三人で前に来たくらいだ。そうだ、今回は二郎や三郎とじゃない。左馬刻と来ている。こいつと色々和解とまで完全にいってないが昔の様に話し合えるようになってまたばったり会って腹減ったなって話になったから近くの焼肉店に入った。いきなり来店したのにスムーズに中に入れた。確かこの店は結構な人気店で中はこの時間帯は予約しないと入れないと思っていたが左馬刻に何かあるのか直ぐに通してもらえた。
注文してきたばかりのビビンバをかき混ぜながら、肉を焼いてる左馬刻に何気なく話し掛ける。
「ここの店と何かあんのか?ここ、予約しないと入れないだろ」
「まあな。ここら辺の店は殆どこんな感じだ」
「…なんかお前ホント凄ぇな」
「たりめぇだろ。…そんでもヨコハマ仕切るってんなら王様気分にはあまり浸らねぇ方が良いと思うが」
王様って言うより左馬刻の場合は親しまれるというか甘えっ子の乱数とはまた違うがアイドルに近いような気がする。左馬刻が来た分だけ評判が上がるから是非来て下さいっていう一種の顔パスみたいなものかもしれねぇ。
左馬刻が焼いていた俺が頼んだタン塩と二人で頼んだカルビが良い具合に焼かれてカルビの一枚を俺のビビンバの上に乗せてくれる。
「そういや、前に牛タンが好きつってたよな?」
「言ったな。肉全般は大体好きだ」
次の肉を鉄板で焼いていく姿を見て笑みがこぼれる。こいつ相変わらずだな。肉好きなのも、表面では俺様なのに俺様過ぎないとこも。左馬刻が焼いてくれたカルビを頬張る。肉々しい味がしてビビンバと一緒にかっこもうとすると左馬刻のスマホが鳴る。左馬刻は肉を摘んでたトングを置いてスマホを見るとチッと大きな舌打ち一つ。スマホをズボンのポケットにしまって部屋から出て行こうとする。
「何かあったのか」
「…ちょい出てくる。肉、勝手に焼くなよ」
肉奉行を一言発揮して部屋からそのまま出て行く。顔を出して廊下を歩いて行く背を追っていると俺は何だか嫌な予感がしてその後について行く。すると手洗い場辺りで泣きじゃくる声が聞こえる。女ともめてる様でどうして俺達がここにいる事が分かったのかは知らないが後をつけられていたのかもしれないと推測してみる。左馬刻と向かい合って少し屈んで声を上げている女の声がここまでよく聞こえる。
「私の他に好きな人が出来たの?!誰よそれ!誰」
どうも聞くからに左馬刻、女をフッたらしい。そんでそれにキレてる元彼女といった所か。前にもあったようなワンシーンだがこれは追い掛けて見に来るべきじゃないと思った。それに左馬刻やっぱり俺といない間に女をまた作ってたんだなって軽く傷心したり。
俺は部屋に戻ろうとすると左馬刻がズンズンとこっちにやって来る。振り返り様に腕を掴まれて女に見せつけるように「此奴?」と言ってのける。女は唖然としていてもう何も言葉が出てこないようだ。左馬刻は俺の腕を掴んだまま部屋へと連れ戻って行く。隣を歩く左馬刻を見やる。
「何言ってんだよお前…」
「間違ってねぇだろ?」
ニヤと笑む左馬刻から直視出来ずに目を逸らしてしまう。部屋に戻って二人で座敷に座ると左馬刻は肉を焼くのを再開する。ビビンバは少し冷めてしまっていた。
「俺の好みを知った所で一郎ちゃん」
「な、何だよ」
「追加で今夜はどうだ」
今夜。という事はそういう事かと意味が理解出来て俺はまた目を逸らす。
「今夜は駄目だ」
「今夜は?」
「…今夜は」
鉄板の上のカルビの肉を取ろうとする。左馬刻が勝手に取るんじゃねぇとニヤつきながら焼肉奉行をまた発動する。笑うとこなのか分からないがコイツがこれでいいならいいんだろなとは思った。
(24.10.02)
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