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カランコロンと下駄の鳴る音。隣でさっきから唸っている乱数は表情が忙しく変わってオネーさんに遭遇する度に猫撫で声になるがいなくなると低音で怠いと本音がこぼれる。それも分かる。何故なら今夜という夏祭りの前に帝統が突然祭りまで時間があるから罰ゲーム有りのゲームしようぜと言ってテレビゲームを始める事になってそれが珍しくギャンブルじゃなくてカーレースゲームだったのだ。それを三人でやって見事に三位で敗北した乱数。テレビゲームに種も仕掛けも無いし帝統は勝つのに自信があったようだ。あの帝統がぶっちぎりで勝ったのに真剣に疑問を抱く乱数に帝統はその思考を悟って「このゲームかなり練習したんだ」と意外な言葉が。それに素直に驚いてる姿に笑って「乱数の浴衣姿がどうしても見たかった」と続けて言いなさった。
「何それ。…大体、皆に晒しちゃってる時点で全然響かないからね」
「あ、マジか。じゃあもう帰るか」
「それにしても練習してた帝統はまぁともかく幻太郎もテレビゲーム出来るなんて知らなかったなぁ」
「私も帝統くんの相手をしてやっていたので」
下駄の音が止まる。ハッとして一拍置いてやっと察した乱数は思い切り此方を向いて睨んでくる。そして「幻太郎もグルかよ!」と標準なのか分からない声のトーンで荒々しく声を上げる。帝統が乱数の機嫌を取ろうと肩に手を回す。
「いーじゃねぇか。似合ってるし俺得ってやつ」
「は?」
「怖ぇな。…まあもういいだろ。充分罰ゲームしたし早く乱数ん家に」
さり気なく乱数の腰に触れようとしている帝統。その手を乱数は軽く掴み上げる。帝統は最終的に乱数を罰ゲームで負けさせた事で乱数の損ねてしまった機嫌に自分の思うようにコントロールがいかない様で真の狙いまで行き着かないようだ。
するといつの間にか我々の中に一人増えてて気付いた三人がその人物を一斉に見ると「よっ」と小さく挙手をしたにこやかに笑みを向けてくる泰雅くんの姿。それを見てあからさまに帝統は表情を曇らせる。
「何?可愛い事してんじゃん。俺も混ぜてよ」
「失せろ」
「なあなあ。そこでさ、面白いゲームあんだけど一緒にやんない?景品がかなり良いみたいよ」
「あ?何のゲームだよ」
「射的。本物の銃じゃねぇよ?」
「知っとるわ。で、景品は何だよ」
ん、と泰雅は足の靴擦れを気にかけてる乱数に指先を向ける。一瞬見ていなかった乱数は泰雅と目を合わせて「何」と言っているが帝統はハッキリと聞いていて泰雅を強く押す。けどビクともしない。
「んなの、やるわけねーだろが」
「じゃあ金魚すくいでもいーよ?俺強いからさ。どんな金魚もお持ち帰りするし」
「ふざけんな!!」
帝統が泰雅に飛び掛かる勢いで胸倉を掴もうとする。周囲の祭りを楽しむ人達が此方に注目し始めてこれは色々とヤバいと思った矢先、乱数がゲホゲホと大きく咳き込む。私はすかさず持ってきていた巾着袋に入っている飴を取り出すとそれを乱数に手渡す。乱数は縋るように飴を口に含んで徐々に落ち着いてくる。乱数の具合の脆さを初めて見た泰雅は言葉を無くしていてそれに帝統は横目で泰雅を睨み付ける。
「いいから、失せろってんだ」
泰雅は帝統と私、乱数を見て悲しそうな表情をして人混みに紛れて見えなくなる。また三人に戻った空間で乱数は「ごめん」と力無く呟く。帝統はその背中を擦ってやっている。
「俺も泰雅と同じ…その、下心つーかあったけどよ」
「下心?」
「ああ。…でもさすがに今お前が辛そうなのにそれは出来ねぇつーか」
乱数の蒼の瞳が帝統を見上げる。花火が上がる。花火をバックに二人のシルエットが鮮やかに浮かぶ。ふっと乱数は柔らかく笑う。そして何かを言葉にしたけれど丁度重なった花火の音でよく分からない。
「何だ?」
「んーん。何でもない。それよりそこの店の綿飴買わない?」
帝統は聞こえなかった乱数の言葉を考えているようだがこくこくと頷き三人で歩き出す。店に向かう途中で乱数はさり気なくまたテレビゲームしようねと言うのだった。
(24.09.22)
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