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夏祭りが始まる一ヶ月前くらいにシブヤのオネーさん達と僕のデザインした浴衣が見立てた浴衣が着たいよねって話になった。それ面白そうって流れになり、その中に同じデザイナー繋がりの泰雅も加わって祭りに向けて二人で準備してきた。当日になると僕の事務所の前にはお友達連れてくよっておネーさんが言ってた通り何人もの女の子が集まっていた。早速祭りが始まる前に泰雅と僕の二人で自分らがデザインした浴衣のお披露目をして作った中からどれをどのおネーさんに着せるか選んで着付けが分からない娘には手伝ったりした。どんどん集まった娘がシブヤの街に繰り出して行くと最後の二人になったおネーさんが着替え終わりくるっと僕の前で回って見せる。


「わぁ、似合ってるよ。こっちのオネーさんも」
「乱数ちゃんに見立てて貰えて嬉しいなぁ」
「彼氏さんとこの後待ち合わせしてるんでしょ?いーの?」


ちょっとだけ弄ってやろうと最近出来たらしい彼氏を話題に出せばオネーさんは惚気ているのかこの後が楽しみなのかえへへと笑ってその幸せそうな表情にこっちもつられて笑ってしまう。
二人のおネーさんも無事祭りに送り出せて少し多めに作っていた帯を片していると一着だけ緑の浴衣が残ってるのが目に入る。あれ、この浴衣知らないなぁ。泰雅が作ったんだろうけど聞いてた浴衣のデザインとは違うし見たことないやつだ。
手分けして着付けていた泰雅が奥の部屋から出てくると「事務所閉めるか」と聞いてくる。


「えー閉めないよ。夏祭りの時は終わるまで開放してるから」
「…有栖川と夢野は」
「帝統達は祭りには出てないよ。帝統はこの時間はギャンブルだし幻太郎は小説の締切近いから」


二人の今夜の活動について教えてあげれば泰雅はそれ以上は特に気にしてなさそうに僕の手にある緑の謎の浴衣を手に取る。そしてそれを広げて僕に充てがう。そして残った帯の中から黄色い帯を手に取って浴衣に合わせ始める。何をしたくて何を言いたいのか分かって小さく笑ってしまう。


「着てかないって。夏祭り行かないし」
「お前ら、シブヤディビジョン代表じゃないのかよ」
「僕等が行ったら歌自慢大会の妨害になっちゃうから」
「………」


ラッパー達やダンサー達が集まってその名の通り歌やダンスを自由に披露するイベントに僕等が行ったら邪魔になるだけと伝えれば泰雅は充てがっていた浴衣を離して顔を曇らせる。…この浴衣、泰雅が僕の為に作ってくれたんだな。泰雅は僕を抱き寄せる。肩に顔がうずめられ項が辺りがくすぐったい。
すると花火が上がっているのか音が聞こえる。事務所の外に出てちょっとでも見てみたくて「泰雅」と身を捩ろうとするけどがっしりとホールドされていて全然動けない。その内にも打ち上がる音は増していく。


「夏が終わる」
「終わる…ね」
「今夜は帰さないかも」


僕の耳元に口が寄って抱きつかれたまま囁かれる。僕は抵抗を見せずそのまま口調を変えて返事してやる。


「俺と来るとろくな事がないぞ」


ありったけの低温と言葉で突き放してやる。でも泰雅は僕から離れようとはせず抱きしめる力を緩めようとしない。…どうしてなんだ。俺は何時もどうして何で。


「(また大型犬に懐かれるなんて)」


何処からか軽快な音楽が聴こえる。花火も次々に上がる中で僕は自分の置かれている立場や環境という鎖に繋がれ続ける事で過去と未来の狭間で苦しんでいた。



(24.09.09)



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