hpmi
左馬刻の妹の合歓がいなくなって中央区に行ってからあいつの様子が気にかかっていた。ちょっと顔出しに行ってみようと決めて向かい行く途中に左馬刻の家のスーパーに立ち寄ってそこで食材を買って押し掛ける。扉を開けた左馬刻は俺を見て唖然としていたが小さく笑って中へ通してくれた。手に持ってる重量感のある買い物袋をテーブルの上に置けば「はあ?」とか首を傾げてテーブル上に出していく中身を見やる。
「カレーか」
「…まあ」
カレーのルゥの箱を見て左馬刻の好きな正解のカレーってなんだろなって思って出し終えた中身を並べた袋をたたんでいれば左馬刻はフックに掛けてあるエプロンを俺に放ってくる。それをキャッチするとなんかテンション上がってきた。左馬刻のエプロンなのかは分からないがいや多分そうだろうな。さり気なく髑髏のイラストロゴがついている。これは思うに合歓がつけたらしいワッペンだ。
エプロンの紐を後ろ手で結ぶと気合を入れて台所に立つ。それをテーブルに寄り掛かり腕組みして見つめる左馬刻。野菜に手を付ける。皮を剥いていくと深い溜息をつかれてしまう。険しい顔だ。
「お前の食うようなやつにはならねぇけど。…あ、どれくらいの大きさだ?」
「…小さく切れ」
野菜を切る作業に取り掛かる。型取ったかのように星型にカットしようとしたらまた溜息一つ。そんで台所の中まで入ってきて出来栄えを確認している。
「ふざけてんのか」
「やっぱり子供っぽいよな」
「弟猿に作る気分でやってんじゃねぇぞ」
そう言うと小さめの簡易まな板を出してそれで本当に細かく玉ねぎをみじん切りにし出した。凄い速さの包丁捌きなんだが。そのまま無言でお互い各々手を動かして、玉ねぎ丸々切り終えたのか手を洗って水をはらってタオルで拭く動作を横に見る。これくらいで手伝うのはここまでって事か。
色んな形で野菜をカットしていると手元を見ていたと思ってたその目が俺を見つめているのに気付く。何、と顔を上げると腰を一突きしてくる。
「おい」
「何だよ」
「俺様に同情してここに来てるんならいらねぇぞ」
動かしていた手を止めて左馬刻の方を見やる。同情とかでは無かった。ここで同情してるなんて言ったら外に放り出されるような気さえしていた。でも俺自身心配してたし何となく分かったような気がしてる。俺がこいつの心を分かった所で迷惑なのだろうきっと。でもここで隠し事しても何も無いし「寂しいと思って」と呟けば左馬刻は俺のカットしたばかりの人参の一つを手に取る。
「これは何だ」
「ハート?」
「もういい。貸せ」
左馬刻が俺から包丁を奪う。自分が使ってたやつがあるのにと思ったが俺に渡したやつの方が使い慣れてるらしくそれで器用に星型にカットしていく。職人技だった。
「肉は何を入れるつもりだ」
「鶏」
「牛肉じゃねぇんだな」
「高かったんだよ。こっちのジャンボパックの方がお得で」
左馬刻の手元にあるじゃが芋のカットに手を付けようと近付いたら使ってた包丁を台上にドンと置かれる。何だまたアウトライン踏んだのか?と思って顔を見合わせると…触れるだけのキスされた。顔が離れていって「鶏でいい」と小さく呟く。顔がすげぇ近くてドキドキした。てか鶏肉の気分だったのか?まあいいか。正解作れて良かった。
棚に左馬刻は移動する。そこから何か小瓶のような物を取り出す。それをまな板の横に置く。香料のようだ。
「クミンだ。香りがつく」
「…サンキュ」
「おう。…隣の部屋に居っから何かあったら呼べ」
ヒラヒラと手を振って左馬刻は台所から出て行く。後で分かったのだが左馬刻、野菜が好きじゃないらしい。気合いを入れて手作りで作ろうとしても人によっては野菜嫌いの人の事を考えれば俺の行為は嫌がられると思われるレベルだ。なのに一緒に作ってくれた。こいつの大人の優しさが伝わってきて結局俺の方が面倒見てもらう形になってしまった。
(24.06.25)
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