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星百合学園の文化祭が近くなるに連れ簓のスマホのカレンダーを見る回数も日に日に増えていく。当日はどんな服で行ったらええかなぁとか言い出す様に俺は何でもええんちゃう?何着ても騒がれるんやからと言ったれば簓は照れていていや褒めとらんしここで褒めても何もならへんからってストレートに言い返した。
成人しとる簓がこんなに文化祭にときめくんはちゃんと理由があった。簓の彼女の美雨がダンス部の出し物でダンス披露するという話があってそれを見に来てくれないかと誘われたのだ。でもなぁ簓も日曜忙しいし果たしてその日に時間作れるのかって思てたら愛の力とやらで仕事を何とか片付けてその日のダンスイベントの時だけ時間を作ったらしかった。
そして今日がその待ちに待った文化祭。簓の奴どんなウケ狙いの服着てくるんかと思って構えてたら思ったよりラフな服でそれでも所々にビビットカラーが施されててサングラスなんて掛けている。


「いや、そのサングラスはあかんやろ」
「何着てもええって言うたんの盧笙やないか」
「でもなぁ…少しでもカラートーン抑える服に出来んかったんか。…ああ、髪からしてもうメロンソーダやったわ。そーだった」
「ええやん!十点中の六点やったるで〜」
「低。まあええけどな。ギャグなんてもうどうでもええんよ」


投げやりに言って途中で買ったプチハッシュドポテトを口に入れようとする。簓の視線が隣から痛いほど無言で投げかれられてるのにはあと溜息を一つつく。ついで、あのなぁと意見。


「俺にお笑い芸人を勧めるんはもう終わりにしてくれ言うたやろ」
「言うてへんけど」
「いや、お前が言ったんやなくて俺…やなくて、あれ」


フッと簓が吹き出して笑う。手の中の紙コップに入ったポテトの一つを楊枝でさしてそれを簓の口内に押し込む。ポテト頬張って二人ダンス会場がまもなく始まるステージへと急ぐ。けどもうダンスイベントは始まっていて簓は慌てて演目のチラシを広げて見る。丁度美雨の出る番だった。二人でステージを遠くから見て美雨を捜す。だがいない。簓はあれ?あれ?とチラシ手に持ってよく見ようと前へと進んで行こうとしている。その肩を掴む。簓は悲しい表情になる。


「…ステージ裏に行ってみるか」
「あ、ああ。そうやな」


二人で急ぎステージ裏に行く。そこには次のダンスを控えてる快活な生徒グループ達の中でパイプ椅子に一人丸まって座ってる美雨の姿。簓は話し掛けようと近付くと美雨の顔が上がり目と目が合う。瞳に大粒の涙を溜めている。


「な…なんかあったんか…美雨ちゃん」
「お腹が…痛くて」
「え、それヤバいんとちゃうか!保健室に」
「っていうのは…嘘で」


ダンス演目が終わり美雨と踊る筈だった仲間の娘達が戻ってくる。それより先に美雨は逃げるようにステージ裏から離れる。簓と俺もキャアキャア言われながらその後を追う。人目のない校舎裏まで来ると美雨は目頭に力を込めたまま大きな溜息をつき瞳を擦る。心配そうにしている簓に美雨も迷惑掛けられないと口を開く。


「出るつもりだったん…ですけど、どうしてもメンタルがついてかなくて」
「…緊張したんか?」
「そういうのよりも…何て言うか極端に自信が無いだけなんです。…すみません」
「謝る事ないで。ステージに出れなかったんは残念やけど会場まで来れたんやね。よく頑張りました」


簓が美雨を抱き寄せて頭を撫でてやっている。そうすると、簓の腕の中で美雨は溢れ出すようにえんえんと泣き出した。


「(自信か…)」


俺も他人事の様に言えないなと思ってしまう。自信がつかないんは人それぞれ皆違うから仕方ないがそれのせいで夢を諦めるなんて勿体無い事だと思う。でも上手くいかない自分で納得のいかない時は本当にそうなのだ。だからそういう時は思い切り悩んで考えてそしてまた自由に出来るように好きな事に戻ってこれたら良いと思う。まだ若いんやから沢山色んなことに挑戦すればいいって何時かの自分にもそっと言い聞かせて。




(24.08.27)



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