if
*暴力表現があります。
魔物が棲まう魔界にもテリトリーってもんがあった。魔物の属種によって区分けする事が多々だが上の力のある者がその区域内を統べる。そのリーダー的な存在がいる事でカーストの差があるが俺達は成り立っていた。俺の統治している領地では上と下がはっきり出てるからか事件はあるものの皆がこういうフィールドなんだと認知していて酷い抗争まで発展しなかった。ルールというものに従順という事だ。
今日もテリトリーの巡回に各地を廻っていると、俺の部下から他領地のリーダーの一郎が俺達のシマに入ってきた事がここまで耳に入る。直ぐに向かうと一郎の奴は一人海を眺めながらここの名産物の果物を食べていた。多分だがこれを此奴が買った時に店の主人が一郎だと気付いてテリトリー内に情報が知れ渡ったんだろう。一郎は俺が近付くと横にチラと見てきて海の方に視線を戻す。
「何してる。手前の領地に戻りやがれ」
石段に腰掛け荒れてない穏やかな海を眺めながら果物を齧る。俺の言葉も聞く耳持たずなのか知らねぇが珍しくここから今直ぐ退こうとは思ってないらしい。
「俺が恋しくなったのか一郎ちゃんよォ」
周りに誰もいないのを視認して二人きりの時の何時もの調子で話し掛ければ一郎は海を眺めていた視線を此方に向ける。そこで気付いた。一郎のオッドアイの翠瞳の方に眼帯がついてる事に。俺が気付いた事で一郎は眼帯を隠すように上から手で押さえて横へと顔を逸らす。
「何処で馬鹿やってそんな傷負って」
何時もより口数が少ない理由はこれかと一郎の直ぐ側に寄り傷を見てやろうと隣に座ると一郎は俺の行動に拒み始める。その抵抗のし方が普通じゃないのを察して俺は一郎の手を掴んで無理矢理眼帯を捲りその下を見る。見た途端に何がこいつに起こったのかやっと理解して怒声を浴びせる。
「何処のどいつと契約したんだこのクソ郎がァ!」
「契約…じゃねぇ!契約、だけど」
「その変態の名を教えろ!」
一郎の両肩を掴んで海まで響くような声で叫ぶと一郎は慌てた様子で「違ぇよ一時的だ!」と言い訳をしてくる。契約は契約なんだよこの馬鹿が。と言い返そうとすると一郎は言いにくそうなバツの悪そうな表情と消え入りそうな声で説明し出す。
「俺があいつのもんにならなかったら弟達に手を出すっつったんだ。仕方ねぇんだよ」
「一時的っつったな。それはあっちが言ったのか」
「ああ。一時的に契約で…いつかは契約解除してやるって」
「嘘だな」
「あ?何で」
「そういうのに限ってずっと付き纏う。それが分かったら、魔物狙いの人間には手を出さねぇ事だな」
立ち上がると俺を不安気な哀しそうな目で見上げてる弱々しそうな視線を他所に一郎から離れて歩き出した。
***
手に持ってたオブジェを投げて窓を割る。俺の他に部下も外で人暴れして追い詰めた男は俺の怒りを纏った鋭い視線に身を縮こませて壁際に尻をずって逃げる。銃を取り出すとその銃口を男に向ける。
此奴の屋敷に入って大体分かった。此奴は…魔物を奴隷のように扱うクソみてぇな存在だ。こんなのに一郎が手をかけられたと思うと反吐が出そうだった。
「テメェの契約してる魔物の中で黒髪のオッドアイの魔物がいるだろ。そいつの契約を取り消せ」
「出来る訳ないだろ…今更。唾つけた奴には、俺のもんだ」
「取り消せっつってんのが分かんねぇのか!!」
男の顔の直ぐ側を狙い撃つ。頬に赤く掠り傷の線が出来ているがそんなの知ったこっちゃねぇ。俺はおかしくなってケラケラ笑う男の肩を足先で踏みつけると銃口を額に突き付ける。
「俺様のもんに手を出したからには容赦しねぇぞ」
月を覆っていた雲が動き月光が俺の輪郭を照らし出す。自分の者をとられた一方的な想いで怒りで、唯満ちていた。
(24.12.02)
実際の公式様、原作者様、団体様、会社、人物、事件、商物、場所、組織等とは一切関係御座いません。組織の方の悪用はお止め下さい。作り話です。