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朝の眠気が吹き飛ぶような風の冷たい寒さの中を気怠げに登校して行く生徒達。目の前を大きな背中を丸めて歩く一郎に三歩で近付き飛び付くと一郎は少し抜けた声を出して前屈みになって振り返る。おはよと挨拶すれば一郎も挨拶し返してくれる。何気ない日常だけど何か違うような気がした。それは。


「一郎カーディガン着てる!」
「あ?」
「これどうしたの〜?〇〇のじゃん」


〇〇とはファッションに詳しい者なら誰でも知ってる超有名ブランドだ。幅広い層から着られて愛されてるブランドだけどこのブランドの物を身に着けてるのが気になるんじゃない。そこじゃなくて一郎が何時ものパーカーではなくカーディガンを制服の下に着ている事だ。これはあまり無い事だなと素早く察して「んん?怪しい」と前方に周り一郎に顔を近付けて覗き込むと一郎は僕から退いて引き剥がされる。


「何でもねぇって」
「誰かとオソロにしたでしょ」
「は…いや、それは」


僕の悟りレーダーが何かに反応する。ぐるんとその方を向けば眠たそうに欠伸をしながら一人で登校している未夏くんを見つける。一郎から一旦離れて一郎にやったように駆け寄り未夏くんにも飛び付く。此方は転げそうになってて驚かれた。


「何だ、飴村くんか」
「おはよ!って、あー!」


未夏くんの服を見て指差す。自然と声も大になって周囲の生徒が迷惑そうに僕等を見てる。それはそうと未夏くんのさ服がね。一郎と同じカーディガンってこと。直ぐに気付いちゃって。僕はニヤニヤしながら続いて駆け寄って来た一郎を見やると一郎は未夏くんを見て頬を紅く染めて頭を誤魔化すように掻く。未夏くんもほんのり紅い。


「未夏。あー今日はカーディガンだったのか」
「うん…」
「オソロなんだぁ〜二人でオソロなんだー」
「乱数、拡散はやめろ」
「えへ。バレちゃった?」


すかさずスマホを出して写真アプリを立ち上げようとした所で一郎に制される。冗談だったけど舌を出してわざと残念そうな声を出してスマホを鞄の中に戻す。そうこうしてる内に学校に着くと下駄箱の所でヒソヒソと女子や男子が此方を見て笑ったり噂話したりしてる。多分一郎と未夏くんの事だろなぁって何となく分かって何処からこの噂の発信源が出ているのか気になって上履きを履いて一郎の教室に駆けて行く。そうすれば直ぐに見つかる。


「げ」
「おー。来た来た。微笑ましいカップルの登場だな」


黒板に一郎と未夏くんの名前とそれを囲むハートマークの文字。これは二人を弄ってる?とかでは無いらしくて何だか祝福してるみたい。女子は嬉しそうにしてるし男子は知ってたぜみたいな顔してる。このクラス良いなぁ。普通だったら結構弄ってくるような状況かもしれないのにそういう事はしないようで。優しさで満ちている。
耳まで真っ赤な一郎の肩をポンと後ろから軽く押す男子生徒。一郎はその生徒くんに問い詰める。


「だってさ〜。そのカーディガンが証拠じゃんか。二人で仲良くお揃いで買ってたし」
「見てたのか!」
「まあねぇ。ばっちし撮っております」


スマホの二人が写ってる写真を見せてくる男子生徒。一郎は顔を紅く染めたまま「後で消せよ」と言っている。僕は未夏くんと一郎の恋愛がいきなり公表になって戸惑ってる未夏くんの不安を和らげるように背中を撫でてあげる。


「何かあったら僕もいるからだいじょーび。気にせず学園生活を楽しむのだ!」
「乱数…お前なぁ」


一郎も戸惑っちゃってるけどきっと何とかなるでしょ。愛は勝つっていうからね。勝つも何もきっとこの二人はこの様子だとこのクラス内では安全な恋愛が保証されてるみたいだし。まあ大丈夫かな。





(24.11.20)



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