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飴村くんと初の旅行に出掛ける為に色々と数ヶ月前から計画を練ってきたが彼とはあまり同意見にならず唯一合ったのが宿の選択だった。海が見える宿と彼に紹介してみせると彼は良いじゃんとやっと賛意を示してくれた。旅行に出掛けないかと私から声を掛けてみたのも正解だったかもしれないと思っていてもそれでももしかしたらつい最近旅館巡りをしたFPメンバー二人を羨ましく思っての賛成意見かもしれないし何とも言えなかった。
当日になると海を近くで見てから旅館にチェックインした。昼はコンビニのおにぎりだけだったので腹を空かせていたらしい飴村くんはオールインクルーシブという旅館のサービスを早速使うのか二人でロビーに行ってから好きなだけ持ちきれない程の酒やアイスやお菓子を籠に入れて部屋に戻ってくる。部屋につくと彼は椅子に座ってアイスを先ず食べ始める。私は飴村くんが詰めてきたお菓子や酒ジュースのボトルを見てその量に呆れてしまう。今ここで平らげてしまおうとしてる飴村くんにも。
「夕飯まで待てませんか」
「うん。待てないね」
肘掛け椅子に座って苺味の棒アイスを食べてる彼はアイスを持ってるもう片方の手にクッキーを持っていて二刀流のようだった。呆れるを通り越してこの後の夕飯が果たしてこの腹の中に収まるのかと思い不安になってくる。
飴村くんの手がクッキーカップの中から一枚を取るとそれを私の口に持っていく。
「はい、あーん」
「今の言葉聞いていましたか」
「うん。でも一杯食べた方が得だろ」
アイスを五口程で食べ終えた彼は酒のつまみのナッツ類に手をかける。これが一番大量にカップに詰め込んで入っていてアーモンドや胡桃等がある。ボリボリと口に詰め込む様を横に彼の手がカップに往復するのを食い止めようとナッツのカップに手で蓋をする。
「そこまで。ストップ」
「やー」
「大体このお酒、一人で飲むつもりですか。私は呑めないんですよ」
「んーまあ、そうだね」
お酒のボトルの蓋を開けるとコップに注ぎ一気飲みし出す。飲み終わったのは見計らって酒のボトルを彼から遠ざける。飴村くんは遊び道具を取られた子供の様にふくれると机に肘をついて空のコップをユラユラと揺らして抗議してくる。
「あれも駄目これも駄目って。何がしたいの?」
「夕飯食べてから少しお菓子を摘んで酒も嗜む程度にしなさい。後は明日」
「寂雷と来ると身体の健康に煩いから全然楽しめないー」
その言葉に今度は機嫌を悪くするのは私の方だ。飴村くんのスマホが鳴りFPメンバーの二人からのようでそれに彼は出ると動画モードに切り替わり此方の様子とあっちの様子がスマホ越しに見えるようになる。有栖川くんの顔が出てきてその隣に夢野さんもいるのか二人と仲良く話してる飴村くんを私は映らない位置で見ている。けれど彼等が私の話をし出した所で横から飴村くんに抱きつき二人に見せつける。有栖川くんが「げ」と声をこぼす。
『ラブラブじゃねーか!つか神宮寺いないかと思ったぜ』
「あはは。あ、もうここらで止めとくね」
『おう。また後でな』
通話が終わると私は飴村くんを抱いてる力を緩める。くるりと体勢を変えて下を向いてる私の前髪に指先で触れてくる。
「私とじゃ楽しめないんでしょう」
「違うって。もー」
いきなり人前で私が抱きついたからかほんのり頬が紅潮している。それを見て彼の身体を抱えて部屋に備え付けてある露天風呂に向かう。飴村くんはいまいち状況が飲み込めてないようで混乱していて「どこ行くの?」と大体は分かっている筈なのに聞いてくる。
予め開けておいた扉から外に出ると飴村くんを降ろして温泉の湯加減を確認する。
「楽しむって…こういう事?」
小さな声で彼に話す彼に挑戦的に目をやる。飴村くんは困った顔をしてから「嗜む程度にして」と言ってくる。私はそれに無理ですねと冗談混じりに答えてやった。
(24.11.08)
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