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夜の二十時くらいを回った所で長々と買う物を選んでいたのをやっと決めて店外へと出ると俺の今いるコンビニ傍の塾では丁度講習が終わったのか子供達が集っていた。それを少し離れたコンビニの駐車場で見ていれば塾の建物の中から見知った人物が出てくるのを見つける。寂雷だ。最近は塾の講師を臨時で引き受けてやっていると聞いた。確か数学だっただろうか。何でもいいけど寂雷の周囲を囲んで集まってくる生徒の数が多い。と言うより懐かれてる。手なづけている。


「カミナリせんせーまたねー!」
「寂雷ですよ。気を付けてお帰り」
「先生!今日の授業分かりやすかったよ!」
「そうですか。それは良かったです」
「先生」


大体はちっこい小学年に懐かれているようでちょこまかと寂雷の周囲を周って囲んではフレンドリーに話し掛けたり白衣を引っ張ったりと賑やか過ぎるなと笑いを堪えて見ていれば今度は中高年に変わったのか話し掛けてくる内容も大人びてくる。その中で一人目を引くような綺麗な顔立ちや落ち着いた上品な雰囲気を纏った女生徒が寂雷に近付く。何かを話しているようだが騒いだりするチビっ子と違って静かなのでここからは聞き取れない。
暫くして二人のやり取りを見ていて女生徒は手を振って帰って行く。生徒の数も徐々に少なくなり塾の入口の前には寂雷一人だけになると建物の中に戻ろうとする寂雷と一瞬目が合って振り向く長身。俺はコンビニの駐車場から出て寂雷の方へと足早に行く。


「すごーい。人気者」
「ここの塾の生徒の平均偏差値は高めなので教える方も日々精進ですよ」
「へぇーそうなんだ」
「飴村くん」
「何」


寂雷の指先が電灯の下で俺の飲んでるジュースに向けられる。何の事を言いたいのかと手にあるジュースを見て「これ?」と透明なカップを浮かせて残り少ない中身を見せる。


「 レモネードだけど?」
「お茶を飲みなさい」
「はあ?お前に一々俺の飲食するものまで支配されたくないんだけど。俺がレモネード飲もうが炭酸飲もうが勝手だろ」
「君、家はどちらですか」


ぼんやりと照らし出す灯りの下で寂雷の真っ直ぐな視線が俺を捉える。それに笑みで返してやる。


「来んのかよショタ好き講師」
「医師が本業ですよ。送って行きます。車があるので少し待っていて貰えれば」
「なぁ寂雷」
「何ですか」
「…やっぱ何でもない」
「聞いておいて何でもないはやめなさい。何ですか」
「何でもないっての!」



ムキになって叫び返せば他の塾の講師が建物の上からチラと俺を不審そうに見てくる。こんな見た目ガキの俺が不審がられるの笑える。
寂雷が車の鍵らしき物を俺に渡してくる。先に行ってなさいと言ってくる寂雷から鍵を受け取り塾の駐車場へと行こうとして振り返る。


「家にあがるだろ?」


口元をつり上げて笑むと、寂雷は呆れた冷静な様子で「もう遅いのでね」と返してくる。それにつまらなさそうに膨れて見せて鍵を手の中で転がしながら寂雷との夜のシンジュク街中ドライブを狙っている自分がいてこのまま家に帰るのが惜しいのかもしれないなんて考えてしまっていた。



(塾って何人くらいいるんだろな)
(興味があるのですか?)
(別に。俺、絵の塾通ってるし)
(…成る程)
(わざわざここまで来る理由なんて寂雷だけだし)
(人気者ですね)
(だから…自分で言うなってば)




(24.09.13)



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