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全国各地から有名な者から無名の者まで様々なデザイナーが今日の祝祭の為に集まっていた。個々を彩る服が並べられ有名デザイナーはモデルショーまで出る事が出来て何人もの取材人の目に止まり次の日には注目記事を飾るだろう。その中で僕とファッションデザイナー繋がりで知り合いの泰雅の作品もショーを盛り上げている内の一人である。次の人気ドラマの続編に出演する俳優さんが着用する衣装を手掛ける予定もあり忙しい彼は流行の波に乗った現代を代表するデザイナーとなっていた。そんな格の差が浮き彫りになるこの祝祭で僕はショーには出ていないが人の目につく位置に作品を置かせて貰っていた。シブヤで最近知り合ったアパレルショップ店員のオネーさんと自分の服の前で話していれば午前のショーが終わった泰雅が僕の側へと近付いてくる。オネーさんはじゃあねと言っていなくなり泰雅は僕の隣に寄る。
「凄く良かったよ」
「褒めてんのか」
「うん。だって…ボクにはあんなに繊細なデザインの作りは出来ないから」
泰雅は僕の感想に可笑しそうに笑う。何で笑うんだこれは褒めてるんだよと言えば「繊細ねぇ」と言って泰雅は手を腰に当てて目を細める。何か…言ったらいけない事言っちゃったかな。
「あれは本当に俺が作りたかったものじゃないんだ」
「え…」
「本当はもっと…ああ、何て言うか」
首裏に手を置いてどこか悔しそうな何か理由があってでも言葉には出来なさそうな泰雅の横顔を見て僕は有名になればなる程大変なんだなぁと理解する。自分の真に作りたいもの。そういうのはデザイナーを始めた夢に描いてた輝いてた頃とは違って見えない枷のあるリアル。そういう世界にもう先の先に行ってる彼に少し寂しさを覚えてしまった。好きなように自分の個性が完全には生かせない。そんなのとても苦しい筈だ。
「泰雅…」
「ここにいたのか」
靴音が後方で止まって二人で振り返る。さっきショーで自分の服を披露して貰っていたドレスファッションデザイナーの一人の堂円さんがいてファッション界のデザイナーの中では「Merlo」という名前で売ってるようでこの人もデザイナー界で知らない者はいない程に指折りの才覚溢れる人だ。泰雅は堂円さんを見ると何だか会いたくない人に見つかったような目をしていて僕は何が何だか分からず二人を交互に見つめる。堂円さんは僕の作品に目をやる。そして本当に格下に見るような目で何の言葉なく泰雅へと目線を戻す。
「次の君とコラボするドレスの件だけど、事前の打ち合わせがあるから来てくれ」
「…へいへい」
「控室にいるからね」
堂円は僕を見下ろして僕の作った服にも向けた様に卑下た者を見る目付きをまた向けてこの場から去る。
泰雅は長く息を吐くと眉を思い切り顰めて「嫌だね」と本音を口にしてしまっている。僕はそれに何となくさっき言ってた言葉と結び付いて分かって何かやる気をつけてあげようとすると泰雅は僕の頭を撫でてくれる。
「あいつ、マジで表デザイン界にどっぷり浸かっちまってるな」
「…でも実際有名な人なんだから、そんな言い方」
「自分の作品あんな目で見られて悔しくないのかよ」
「……それは」
泰雅は僕のことを心配してくれてるようで僕は言葉が出てこなくて唯ごめんとだけ掠れた声で言う。そしたら泰雅はもっと不機嫌そうになって「あのな?」と口を開く。
「俺はお前の作品もお前も好きなんだよ。なのにあの態度はねぇだろってキレてんだよ。分かるよな?」
「………」
やっぱり言葉が出てこない。堂円の肩を持てばいいのか泰雅を持てばいいのか。もう完全に明白なのに。泰雅は自分を落ち着かせようとしているのか長く深呼吸すると僕の肩に手を置いて笑む。
「今度一緒にコラボ作品作るか」
「え」
「誰にも文句言わせない平等な所で。…ずっとやってみたかったし」
「で、でも…ボク」
泰雅と一緒に作ったら何かと周囲が煩く言いそうだった。特に堂円のようなタイプは認めないだろう。でも、考えてみればそんなの言わせておけばいいんだ。だって元はデザインする事事態は自由だ。それを作る環境にも問題はあるけど、きっと泰雅は…原点に戻りたいのかもしれない。それのお手伝いが出来るなら僕なんかも使って貰えると嬉しかった。
少し戸惑ったけど頷く。そうすれば泰雅は溢れるような笑顔を向けてポンポンと僕の肩を撫でて「楽しみにしてる」と言葉を残して控室へと行った。
(24.09.03)
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