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一郎達のBBのクラブのフロアは今日もファン達で充たされていてこの空間が他のクラブと違って同志の集まりって感じがして安心出来た。この大人も子供も楽しめる空間がいいんだよね。ここは大人は勿論若い子達でもパス持ってれば入れるから気軽に来れる。一郎達がまだ未成年だからそれに合わせてここもルールに強く縛られない。フリースタイルってのがしっくりくる。けれど今日は例外の日だった。

フロア内にかかる曲が人気曲に変わり、カウンター席でレッドグレープジュースを飲みながら三人の歌を聴いていると隣に男性が座ってくる。それを横に見て客のハイテンション度が増していく人と人の間から何とか三人を見る。隣の男がノンアルじゃない何かを頼んでそれを受け取ってる動作の合間私にさり気なくを装ってか「お姉さん一人?」と聞いてくる。この人は見る限り私よりずっと年上の様な感じがした。私より上の歳で男性一人というのもここのクラブには珍しいような気がする。余程BBを好きなのだろうか。


「一人だけど一人じゃないっていうか」
「あ、そ。じゃあ俺と踊らない?」


ここじゃないクラブで。と大音量の流れてる音楽の中でも男がそう言ったのが分かった。私は直ぐに危険と察して席を立とうとする。でも腕を掴まれてままならない。そうか、唯のナンパかこの人。


「離して!」
「なーんで?つか…イイ身体してんじゃん」


手元にある半分くらい残ってるグレープジュースの入ったグラスを掴んで男にかける。男は濡れた髪と頭を揺らして「何すんだアマ!」と取り乱したように叫び掛ける。何だろちょっと嫌な予感しかしない。怒らせるのはよくなかったかなでもそうしないと大変な目に合いそうだったし。今も言える事なんだけど。
するとステージで歌ってた一郎がラップを止めてマイク高音音割れがキンと響く。この場にいる皆が耳を押さえたりして静かになり、ステージの一郎がマイクの先を男に向けている。


「テメェが何してんだ」
「あ?」
「テメェに言ってんだよ。俺の女に手ぇ出すな」


ファンが横に避けて男と一郎の視界を作る。男はそこで一郎が自分に対して言っているのに気付く。男は居心地が悪くなったのかキョロキョロと自分を睨むひいている周囲を見て縺れる脚でクラブから一目散に出て行く。男がいなくなったのは良かったけど注目の視線は今度は私の方に向いてしまっている。一郎達がすかさず「皆盛り上がってこーぜ!」と場を明るく戻してくれる。はしゃぎ始めるファンの娘達に私は内心ホッとして駄目にしてしまった中身の無くなったグラスを見てカウンターで唖然としているバーテンダーに頭を下げる。


「すみません。ジュース台無しにしちゃって」 
「いいんですよ気にしないで下さい。あ、一郎さんから俺の女呼び良かったッスね」


さっきの一郎達の言葉を思い出すと頰が熱くなる。バーテンダーさんはその私の表情を見て笑むと新しくレッドグレープジュースを作り直してくれた。




(24.08.23)


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